19 / 87
19.授業で発情って何?(1)
しおりを挟むこの世界には魔法があるだけでなく、前世にはない特殊な動物や植物が存在する。
魔法効果のある植物について学ぶ魔法植物の授業は特別教室に移動して行われるのだが、そこではいつもと違う席順になっており、何の因果か私とアメリの席は隣同士だった。
そのせいか、魔法植物の授業のときは特に、破廉恥極まりない現象が起こりやすい気がする。
「貴方は何もしなくて良いわ」
授業が始まる前に、アメリにはあらかじめ釘を刺しておく。
「いいこと? 貴方の魔法の素晴らしさは私が! 一番! よく分かっているから。こんなところで披露しなくてよろしくてよ」
「わ、分かりました」
アメリがコクコクと頷いたのを確認して、私は前を向いた。
皆の前に立って話をしている魔法植物の先生は、もじゃもじゃの青い髪に丸い眼鏡をかけた若い男の先生で、いつも白衣を羽織っている。
「今日は水に魔力を注いで、植物の成長液を作りましょう」
先生は二人組になった生徒の間に、小さな芽が出た植木鉢と青いじょうろを置いていきながら説明を続ける。
「植物に直接魔力を注ぐ方法もありますが、そうすると魔力を入れすぎて植物が暴走する恐れがありますからね。植物の特性を頭に描きながら魔力を放出するといいでしょう」
では、始めて下さい。そう言われて、私はじょうろを自分の前に置くと両手をかざす。
魔法は手のひらから魔力を放出して構築していく。口頭魔術という特別な方法もあるものの、並外れたセンスと魔力量が必要で、ごく限られた者しか使用できないとされている。
私の魔力が水に触れると、透明の水は金色に光り、とろとろと中に溶け込んでいくのが見えた。
「ふぇーー。ジェシカ様の魔力は気持ちいいですねぇ」
そう言ってアメリが顔を蕩けさせる。
……なんでだろうか。褒められているはずなのに、辱められているような気がする。
「……不敬よ」
「えっ、す、すみません?」
アメリが首を傾げると、ピンクブロンドの髪がふわふわ揺れる。それを横目に見ながら、じょうろを持って土に水を注ごうとしたときだった。
「あれ? なんで『ミドリちゃん』がここにいるの?」
ぴょんと机の上に飛び乗った『ミドリちゃん』という名の触手が視界に入り、私は声にならない悲鳴をあげた。
「!」
「今日は連れて来てなかったはずなのに、おかしいなぁ。『ミドリちゃん』おいで」
アメリは手のひらを上にして、乗るのを促すように『ミドリちゃん』に声を掛ける。けれどソレは主の言うことを聞こうとせず、嫌がるようにうにょうにょと体を横に動かした。
「……人の言うことを聞かないところが貴方にそっくりね」
「子は親に似るって言いますからねぇ」
照れたように笑われても反応に困る。それにこの触手、まさかアメリが作ったってこと……? 完全に才能の使い方を間違っている。
『ミドリちゃん』を見ると、じょうろに入っている成長液が気になるようで、小さくなっていた触手を伸ばそうとするところだった。
「それはダメ!」
気付いたアメリが慌ててじょうろを持ち上げる。
「この成長液は『ミドリちゃん』のものじゃないんだよ」
めっ! と子供に言い聞かせるようなアメリの態度に引いてしまった。作ったアメリには可愛く見えるのかもしれないけれど、傍から見れば得体のしれないグロテスクな物体でしかない。
そんなアメリの注意を無視して『ミドリちゃん』はアメリの手首に巻き付く。余程成長液が魅力的なのか、『ミドリちゃん』は一歩も引く様子がなかった。
「あっ! ちょっと、だめだよっ!」
青いじょうろを守ろうとするアメリと、じょうろの中身を狙う『ミドリちゃん』。そのやり取りになんだか嫌な予感がする。
いつでもシールドを張れるよう、両手のひらを胸の前に出して準備していたところ、後ろから声がした。
「キミたち、大丈夫ですか?」
「えっ?」
先生の存在に気を取られた私は、動きが一歩遅れてしまった。
「あ」
「「あ……」」
『ミドリちゃん』から成長液を守ろうと腕を上にあげたアメリが、じょうろを傾ける。斜めにしすぎたじょうろの先から、私の頭めがけて水が飛び出してきた。
13
あなたにおすすめの小説
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?
桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。
だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。
「もう!どうしてなのよ!!」
クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!?
天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
【完結】溺愛?執着?転生悪役令嬢は皇太子から逃げ出したい~絶世の美女の悪役令嬢はオカメを被るが、独占しやすくて皇太子にとって好都合な模様~
うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
平安のお姫様が悪役令嬢イザベルへと転生した。平安の記憶を思い出したとき、彼女は絶望することになる。
絶世の美女と言われた切れ長の細い目、ふっくらとした頬、豊かな黒髪……いわゆるオカメ顔ではなくなり、目鼻立ちがハッキリとし、ふくよかな頬はなくなり、金の髪がうねるというオニのような見た目(西洋美女)になっていたからだ。
今世での絶世の美女でも、美意識は平安。どうにか、この顔を見られない方法をイザベルは考え……、それは『オカメ』を装備することだった。
オカメ狂の悪役令嬢イザベルと、
婚約解消をしたくない溺愛・執着・イザベル至上主義の皇太子ルイスのオカメラブコメディー。
※執着溺愛皇太子と平安乙女のオカメな悪役令嬢とのラブコメです。
※主人公のイザベルの思考と話す言葉の口調が違います。分かりにくかったら、すみません。
※途中からダブルヒロインになります。
イラストはMasquer様に描いて頂きました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる