こんな破廉恥な悪役令嬢が出てくるゲームって何?!

高瀬ゆみ

文字の大きさ
48 / 87

48.貴方のせいじゃないの?(3)

しおりを挟む
※ストーリーの展開上、うるさくてヤバい奴が出てきます。登場話は明日更新分までで終わる予定です。





「わっ!」
「……ッ!」

 アメリの顔に勢いよく煙が吹き付けられる。煙がこちらにまで漂ってくるのが見えて、口を閉じてきつく目をつぶった。
 この煙の睡眠効果はどれほど強いものだっただろうか。記憶を呼び起こそうとしたけれど、呼吸が出来ないなか上手く頭が働かない。息を止めて、ただひたすら時が経つのを待つのは辛かった。

 ……不意に、ツタの一つが私の足に触れた。

「ッ!」

 ビクッと体が震える。
 驚きのあまり、声を上げそうになるのを必死で耐える。
 そのツタはふくらはぎを通り過ぎると、太ももを這い上がり、どんどん上にのぼってくる。足を振っても落ちる気配がない。
 ソレは私の体を好き勝手に這い回り、制服で隠れていない首元に……素肌に直接触れる。にゅるっとしたものが顔に触れ、次の瞬間、口の中に入ってきた。

「んぐっ!」

 口の中を動き回るツタによって呼吸を止めていることができず、不快感に眉を寄せる。

「んんっ……んう……!」

 ガブッと歯を立てて噛み付くとツタは口から離れていった。
 恐る恐る目を開ける。煙はもう晴れたようで、息を吸っても違和感はない。
 視線を横に向けると、ツタに拘束されたまま、ぐったりとしたアメリの姿があった。

「アメリッ!」

 鋭い悲鳴を上げてツタに取られた腕を動かしてもがく。

「アメリ! アメリ! 大丈夫なの⁉」

 声を張り上げると、反応するようにアメリから声が漏れた。

「ぐう……」
「ね、寝てるだけ……?」

 寝息を立てて眠るアメリを見て、はあっと息をつく。ただ寝ているだけのようでよかった。
 直接煙を吹き掛けられたアメリと違い、私は睡眠効果のある煙を吸わずにすんだため意識を保ったままでいられている。

「でも、どうしてこんなことに」

 魔法植物の植え替えをするためにやって来たはずなのに、どうしてこんなことになってしまったのだろう。部屋の中を見回してみても、アメリが開けた箱以外に植え替えに関するようなものは見当たらない。
 そして、箱の中には魔力を吸収する希少種と、魔力を浴びると成長し睡眠効果のある煙を吐き出す魔法植物が入っていた。植え替え分と間違えて入れてしまったとは到底思えない。
 つまり、私たちが来ると知っていて、あえて用意したのだろう。
 アメリが言っていた、『絶対に私を連れてくるように』という言葉……
 もじゃもじゃの青い髪に大きな丸い眼鏡をかけた魔法植物の先生の姿を思い浮かべた。



 ガラッと扉が開く。
 機嫌良さそうに鼻歌を歌いながら部屋の中に入ってきた男は、私の顔を見てにっこりと笑った。

「こんにちは。クランベルさん」

 私に話し掛ける先生は、いつも身に纏っている白衣を着て、いつもと変わらない笑顔を見せている。
 今はそれが余計に怖く感じる。女子生徒二人が魔法植物に拘束されているという異様な光景を、先生は疑問に感じていないようだった。

「あ、貴方の仕業なの?」

 怯えていると悟られないように、強気な態度を崩さず声を張り上げる。
 目の前の男を睨み付けると、先生はうっとりと口元を綻ばせた。

「ああ、ジェシカたんだぁ……」
「――……は?」

 ――ジェシカ、たん……?

 固まった私に気付いているのかいないのか、先生は口に手を当てて身悶えていた。

「あああああ、触手に捕らえられてるジェシカたん可愛いいい! スチルのまんまじゃん! いや、現物の方が何万倍もいいわ! それにジェシカたんの強気な顔、たまらんんん!」

 「尊いぃ」と言って、拳を握り胸の前でガッツポーズを決める男。
 前世で聞いたことのある単語を口にする男を、私は呆然と見つめた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

魚人族のバーに行ってワンナイトラブしたら番いにされて種付けされました

ノルジャン
恋愛
人族のスーシャは人魚のルシュールカを助けたことで仲良くなり、魚人の集うバーへ連れて行ってもらう。そこでルシュールカの幼馴染で鮫魚人のアグーラと出会い、一夜を共にすることになって…。ちょっとオラついたサメ魚人に激しく求められちゃうお話。ムーンライトノベルズにも投稿中。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

処理中です...