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47.貴方のせいじゃないの?(2)

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 アメリが箱を開けた途端、隙間からこちらに向かって勢いよく何かが放たれる。

「わっ!」
「何ッ⁉」

 身を守るため反射的に顔の前に出した腕に、にゅるりとした何かが触れた。
 そして次の瞬間、腕に絡み付き、グンッと体が持ち上げられる。

「ひ……っ!」

 私が状況を把握した時には、紫色のツタによって宙吊りにされていた。

「なによコレええええ!」

 理不尽な状況に声を張り上げる。腕を揺さぶって外そうとしたものの、拘束しているツタはビクともしない。

「アメリッ! これは一体なんなの?」
「わ、私にも分かりません~~!」

 見ると、アメリも同じようにツタが腕に絡まり捕らえられている。
 今までの経験上、これもアメリの仕業かと思ったけれど、どうもそうではないらしい。
 下を見ると、先程アメリが開けた箱の中から、うじょうじょとたくさんのツタが伸びているのが見えた。

「いやあああ! 気持ち悪いっ!」

 背筋がぞわぞわ震える。両手は空いているため、魔法で全て燃やしてしまおうと手のひらに魔力を込める。

「……?」

 確かに火炎を放つ魔法を行使したはずなのに、何も変化がない。もう一度行ってみても変わらず、魔力だけが消費していく。

「おかしいわ。魔法が使えない」
「あれれ? 本当ですね。それに魔法を使おうとすると、なんだか魔力が吸い取られるような気がします」

 アメリも不思議そうに首を傾げる。
 魔法が使えないのなら、と体を捩じってツタから抜け出そうとするものの、うにょうにょ動くツタに、より一層巻き付かれてしまった。抵抗することは諦めて、再び箱に視線を落とす。
 高さがある箱に隠れていて植物の全てを見ることはできないけれど、特徴は見て取れる。教科書や図鑑で見たことはないかと魔法植物の知識を思い返した。

「……これ、アブソーブじゃない?」

 紫色のツタを絡ませて捕らえたものの魔力を吸収する、魔法植物。
 個体数が極めて少ないため、滅多に捕まえることの出来ない希少種のはずだ。学校の授業でお目にかかれるようなものではない。

「それがどうしてこんなところに……」

 思案する私に対し、アメリは顔を輝かせると「それなら吸収されないくらいたくさん魔力を注いでみますね!」と明るく言った。

「いきますっ! ……うむうううう~~!」

 ぎゅっと目をつぶり唸り声を上げたアメリから、魔力が膨れ上がるのを感じる。アブソーブでも吸収できていないのか、少しずつ魔力が漏れ出る量が増えていく。
 人一倍魔力の多いアメリならいけるかもしれない。そう思ったのも束の間、アブソーブが入っていた箱から何かが飛び出してくるのが見えた。

「アメリ、待って! 箱から何か出てきたわ!」

 にょきにょきと箱から出てきたのは、先端が大きな赤いつぼみの形をした植物だった。

「これは……確か、魔力を浴びて成長する植物だったわ。成長すると、つぼみが開いて……」

 ハッ! と気付いた私は、アメリに向かって声を張り上げた。

「睡眠効果のある煙を吹きだすのよ! ――アメリ! 口を閉じて!」

 魔力を込めるアメリの目の前で赤いつぼみは小刻みに震えると、ぱかっと口を開くように開花し、白い煙を吐き出した。


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