こんな破廉恥な悪役令嬢が出てくるゲームって何?!

高瀬ゆみ

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46.貴方のせいじゃないの?(1)

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 最近、生徒たちの間で『アメリ・バーナードとクランベル公爵家の執事が密会している』との噂が流れていると知り、私はアメリに一言言わなければと放課後彼女を探した。
 結婚前の男女が二人でいたと噂されるのは醜聞であり、今後の二人の付き合いにも影響が出るかもしれない。
 クロードと二人きりになるのをやめるよう注意するのは、貴族の常識に疎いアメリに教えてあげなければという使命感からであって、決して嫉妬からではない、はずだ。
 廊下を歩いていると、正面からアメリが走ってくるのが見える。

「ジェシカ様~~!」

 ブンブンと手を振ってこちらに向かって走ってくるアメリを見ると、探していたはずなのについ逃げ出したくなってしまう。
 本能的に身の危険を感じるのだろう。出会ってからわずか数ヵ月でここまで刷り込みされるなんて、乙女ゲームのヒロインは恐ろしい。

「廊下は走らない!」
「はい! すみません!」

 叱責すると、アメリはピッと止まった。
 優雅さを意識しながらしゃなりしゃなりと歩いてきたアメリは、こちらを見てにこっと笑う。
 まるで「褒めて褒めて」と言っているかのよう。人懐こい犬のようなその態度に、絆されてしまいそうになるのを何とか耐える。
 本当にそういうところはずるいと思う。嫌いになれたら楽になるのに、どういうわけか嫌いになれない。
 ニコニコしながら背景に花を飛ばすアメリに、私は溜息をついて話を促した。

「ハァ……貴方、わたくしに何か用事があるのではなくて?」
「あっ! そうでした。ジェシカ様~~お願いですっ! 一緒に魔法植物の植え替えをしてください!」
「はあ?」

 突然のお願いに眉をひそめる。アメリは手を合わせて必死に頼み込んだ。

「お願いしますっ! すぐに終わりますので!」
「嫌よ。なんでわたくしがそんなことしなければならないの?」
「今日中に終わらせないと、魔法植物の成績がピンチなんです~~!」
「それならますます自力で何とかなさい」
「そこをなんとか!」

 そう言って笑顔で誤魔化しながら、アメリは私の手を取り廊下を歩き出す。

「ちょっと! 不敬よ!」

 まさか手を繋がれるとは思わなくてギョッとする。
 貴族令嬢としてあるまじき行為に文句を言おうとしたけれど、いくら言ってもきかなそうだ。もう一度溜息をつくと、手だけは離させてアメリについていった。

 アメリが向かった先は魔法植物の準備室だった。
 この前私がアメリを連れ込んで説教をした部屋に、今度はアメリに連れられて中に入る。部屋の中には誰もいないようで、アメリはきょろきょろと部屋を見回すと目的の物を見つけて明るい声を出した。

「あっ、ありました! あれです!」

 正面の机に置かれた、大きな箱。
 アメリは箱を指差して側に駆け寄る。私はその後を追いながら不満げに腕を組んだ。

「まったく……すぐに終わるというのなら、貴方一人でやればいいじゃない」

 植え替えくらいで大げさだと呆れた顔になる。
 大きい箱といっても、腕で抱えて持てる程度の大きさ。それくらいの量であれば、一人で終わらせられたのではないか。
 もしくは、魔法植物の先生が顧問をしている美化委員にでもお願いすればよかったのに。

「うーん、そうですよねぇ。私も先生にそう言ったんですけど、でも絶対にジェシカ様を連れてきてくれーってお願いされてしまったんです」
「……え?」

 ――それは、どういう……

 不審に思った私が尋ねるよりも早く、アメリは箱に手をかけた。


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