46 / 87
46.貴方のせいじゃないの?(1)
しおりを挟む最近、生徒たちの間で『アメリ・バーナードとクランベル公爵家の執事が密会している』との噂が流れていると知り、私はアメリに一言言わなければと放課後彼女を探した。
結婚前の男女が二人でいたと噂されるのは醜聞であり、今後の二人の付き合いにも影響が出るかもしれない。
クロードと二人きりになるのをやめるよう注意するのは、貴族の常識に疎いアメリに教えてあげなければという使命感からであって、決して嫉妬からではない、はずだ。
廊下を歩いていると、正面からアメリが走ってくるのが見える。
「ジェシカ様~~!」
ブンブンと手を振ってこちらに向かって走ってくるアメリを見ると、探していたはずなのについ逃げ出したくなってしまう。
本能的に身の危険を感じるのだろう。出会ってからわずか数ヵ月でここまで刷り込みされるなんて、乙女ゲームのヒロインは恐ろしい。
「廊下は走らない!」
「はい! すみません!」
叱責すると、アメリはピッと止まった。
優雅さを意識しながらしゃなりしゃなりと歩いてきたアメリは、こちらを見てにこっと笑う。
まるで「褒めて褒めて」と言っているかのよう。人懐こい犬のようなその態度に、絆されてしまいそうになるのを何とか耐える。
本当にそういうところはずるいと思う。嫌いになれたら楽になるのに、どういうわけか嫌いになれない。
ニコニコしながら背景に花を飛ばすアメリに、私は溜息をついて話を促した。
「ハァ……貴方、わたくしに何か用事があるのではなくて?」
「あっ! そうでした。ジェシカ様~~お願いですっ! 一緒に魔法植物の植え替えをしてください!」
「はあ?」
突然のお願いに眉をひそめる。アメリは手を合わせて必死に頼み込んだ。
「お願いしますっ! すぐに終わりますので!」
「嫌よ。なんでわたくしがそんなことしなければならないの?」
「今日中に終わらせないと、魔法植物の成績がピンチなんです~~!」
「それならますます自力で何とかなさい」
「そこをなんとか!」
そう言って笑顔で誤魔化しながら、アメリは私の手を取り廊下を歩き出す。
「ちょっと! 不敬よ!」
まさか手を繋がれるとは思わなくてギョッとする。
貴族令嬢としてあるまじき行為に文句を言おうとしたけれど、いくら言ってもきかなそうだ。もう一度溜息をつくと、手だけは離させてアメリについていった。
アメリが向かった先は魔法植物の準備室だった。
この前私がアメリを連れ込んで説教をした部屋に、今度はアメリに連れられて中に入る。部屋の中には誰もいないようで、アメリはきょろきょろと部屋を見回すと目的の物を見つけて明るい声を出した。
「あっ、ありました! あれです!」
正面の机に置かれた、大きな箱。
アメリは箱を指差して側に駆け寄る。私はその後を追いながら不満げに腕を組んだ。
「まったく……すぐに終わるというのなら、貴方一人でやればいいじゃない」
植え替えくらいで大げさだと呆れた顔になる。
大きい箱といっても、腕で抱えて持てる程度の大きさ。それくらいの量であれば、一人で終わらせられたのではないか。
もしくは、魔法植物の先生が顧問をしている美化委員にでもお願いすればよかったのに。
「うーん、そうですよねぇ。私も先生にそう言ったんですけど、でも絶対にジェシカ様を連れてきてくれーってお願いされてしまったんです」
「……え?」
――それは、どういう……
不審に思った私が尋ねるよりも早く、アメリは箱に手をかけた。
23
あなたにおすすめの小説
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?
桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。
だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。
「もう!どうしてなのよ!!」
クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!?
天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
【完結】溺愛?執着?転生悪役令嬢は皇太子から逃げ出したい~絶世の美女の悪役令嬢はオカメを被るが、独占しやすくて皇太子にとって好都合な模様~
うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
平安のお姫様が悪役令嬢イザベルへと転生した。平安の記憶を思い出したとき、彼女は絶望することになる。
絶世の美女と言われた切れ長の細い目、ふっくらとした頬、豊かな黒髪……いわゆるオカメ顔ではなくなり、目鼻立ちがハッキリとし、ふくよかな頬はなくなり、金の髪がうねるというオニのような見た目(西洋美女)になっていたからだ。
今世での絶世の美女でも、美意識は平安。どうにか、この顔を見られない方法をイザベルは考え……、それは『オカメ』を装備することだった。
オカメ狂の悪役令嬢イザベルと、
婚約解消をしたくない溺愛・執着・イザベル至上主義の皇太子ルイスのオカメラブコメディー。
※執着溺愛皇太子と平安乙女のオカメな悪役令嬢とのラブコメです。
※主人公のイザベルの思考と話す言葉の口調が違います。分かりにくかったら、すみません。
※途中からダブルヒロインになります。
イラストはMasquer様に描いて頂きました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる