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2.貧乳は婚約破棄の要件に含まれますか?!
しおりを挟む私の不躾なお願いにも関わらず、アメリ様は快く引き受けてくださいました。
「私に任せてください!」
そう言って私の手を握ったアメリ様は自信に満ち溢れていて、とても心強く感じました。
そして今ーーー
学校の空き部屋で、アメリ様が作られた魔具を見せていただいております。
「……ッッ!!!……こッ、これですか…?」
見た瞬間、悲鳴を上げなかった自分を褒めてあげたいです。
でも体の震えは残念ながら止めることができません。
アメリ様の手の上に置かれたソレを見て、私の体は小刻みに震え出しました。
「学校の書庫で胸を大きくする方法を調べましたら、どうやら女性ホルモンにより乳腺を発達させることと、大胸筋を鍛えることの二つが必要なんだそうです!」
………ああ、アメリ様は私なんかのために一生懸命調べてくださったのに。
それなのに私ときたら、魔具の見た目に気を取られてしまい申し訳なく思います。
でも…
この見た目は…
「なのでこの『ゲジゲジちゃん』を体に入れると、『ゲジゲジちゃん』の体から女性ホルモンが分泌されて、更に体の内側で振動して大胸筋を鍛えてくれる仕様にしました!」
「げ、げじげじ…」
……どうしましょう。ソレの見た目が衝撃的すぎて、アメリ様の説明がちっとも頭に入ってきません。
しかも今、うにょって動いたような?!?!
私は震えながら、その『ゲジゲジちゃん』を指差しました。
「あ、あの…『ゲジゲジちゃん』を体に入れるとは?つまり…?」
「乳首から体の中に入れるようにしたので、そこから…「ごめんなさい!無理ですッ!!!」」
アメリ様の説明を遮って、勢い良く頭を下げました。
私の我が儘で本当に、本っっ当に申し訳ないのですが、このムカデみたいなヤツを体に入れることは出来ませんっっっ!!!
結局、アメリ様には何度も頭を下げて今回の相談は無かったことにしてもらいました。
残念そうな顔をしたアメリ様には申し訳ないことをしてしまいました。
今度お詫びを兼ねてお茶会にご招待しようかしら…
私が先日のことを考えていると、アスラン様が紅茶のカップを置いて不思議そうな顔をされました。
「リリア?さっきから難しい顔をしているが、何かあったのか?」
今日は月に一度のアスラン様にお会いする日。
一緒にお茶を飲んだり外で観劇を見たり、婚約が決まってから毎月欠かすことなくお会いしています。
忙しい中時間を作ってくださっているのに、私としたことが意識を飛ばしておりました。
「すみません、ぼんやりしてしまって。…もうすぐ友人が結婚するので、贈り物は何がいいか考えておりましたの。」
さすがに『ゲジゲジちゃん』について考えていたとは言えなくて、咄嗟に嘘をつく。
「ああ、ザイール家の長女か。彼女とは同じクラスだったな。」
「ええ。突然結婚することが決まったのでまだ何も考えていなくて。」
友人のセレスティーナは家の都合で卒業を待たずして結婚が決まったため、今は結婚準備で忙しいのだそうです。
「そうか。」
会話をしながら、クッキーを摘んだアスラン様の手をぼんやり見つめました。
クッキーが小さく見えるくらい大きな手。
……こんな大きい手で触れられたら、私のささやかな胸は余ってしまうわ…。
自分の胸元に視線を落として、溜息を付きそうになってしまい慌てて顔を上げました。
いけないいけない!私ったら!
今日はアスラン様に会える貴重な日なのに!
気を取り直してアスラン様の顔を見ると、彼の黒い瞳がじっと私を見ていることに気付きました。
「リリアは結婚式で何かしたいことはあるのか?」
「えっ?」
「細かいことは分からないが、女性はドレスや装飾品など色々夢見るものなのだろう?まだ先のことだが、前々から準備しておくものがあれば教えてほしい。」
えっ!?
それは、つまり…私たちの結婚式のことですか?!
「わっ、私は特に、これといった希望は…」
「そうか。無理に考えることではないが、もしリリアが望むなら出来る限り叶えてあげたい。その時は遠慮せずに言ってくれ。」
真面目な顔でそう言ったアスラン様。
誠実なそのお姿は彼が志す本物の騎士様のようで、格好良すぎて悶えてしまいます…!
「はい…。ありがとうございます。」
思わず顔が赤くなってしまって、下を向いて小さくなりながらお礼を言いました。
こんな素敵な人が婚約者だなんて、私は本当に幸せ者です。
ーーーでも、だからこそ彼の望むものを自分が持っていないことに罪悪感を覚えてしまうのです。
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