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転生令嬢、聖女召喚阻止を目指す
しおりを挟む前世の記憶を思い出した私は、色々と考えた結果、なんとかして聖女召喚を阻止することに決めた。
前世では『救国の聖女』の大ファンだったから、ミキちゃんとエドワード様の恋の行方をこの目で見たいという思いはある。
でも、ミキちゃんがこの世界に来てエドワード様と恋仲になったら、エドワード様から婚約破棄を言い渡されるのは私。
そして、婚約破棄されたせいで爵位を継げなくなったルシフェル様から恨まれるのも、私。
色々とリスクが高すぎる。
フィーネに対してだけ扱いが酷過ぎないかと作者に問いただしたいくらいだ。
ミキちゃんがこの国に舞い降りた理由は、魔王復活により国が滅亡の危機に陥ったからだと書かれていた。
聖女召喚は、言ってみれば国を守るためのオート機能。
それなら、魔王が復活する前に、封印されている『魔王の核』を壊してしまえばいい。
幸運なことに、魔王が復活するシーンも、旅の目的地であるその場所もマンガに描かれていた。
そして、義弟となったルシフェル様は最強の魔術師。
七歳の今はまだ無理だろうけど、成長した彼なら復活前の魔王くらいサクッと始末してくれそうな気がする。
魔王がいなくなれば世界は平和のまま。
ミキちゃんが召喚されることはなくなって、私の将来は安泰のはず。
私は自室で一人決意を固めると、引き出しから手鏡を取り出して自分の顔を見た。
この国では一般的な茶色の髪に、緑の瞳。
見慣れたフィーネの顔がそこに映っている。
『救国の聖女』では、フィーネの顔は最後まで読者に教えられなかった。
回想などでフィーネが出る時は、顔全体が黒く塗りつぶされて、どんな顔をしているか分からないようになっている。
いわば推理マンガの犯人と同じような扱いだった。
「フィーネ、可愛いと思うんだけどなぁ」
さすがマンガの世界の住人だけあって、フィーネ(私)も整った顔をしている。
少し下がり気味の眉に目元の泣きぼくろが特徴的な、可愛い女の子。
このまま成長すれば、見目麗しいエドワード様の隣に立っても違和感はない……はず。
(ただ、少女漫画の王道ヒロインのミキちゃんとは系統が違うかな)
ミキちゃんの天真爛漫な笑顔を意識して、ニコッと笑ってみる。
手鏡の中には、困り顔で無理して笑っているフィーネが映っていた。
もしかしたら、私はエドワード様の好みのタイプではないのかもしれない。
私が聖女召喚を阻止することで、エドワード様はミキちゃんと巡り会う機会を失うことになる。
ミキちゃんの隣で幸せそうに笑っていたエドワード様のことを思うと、少し胸が痛む。
でも、未来を知っていながら幽閉や一人寂しい生活を選ぶなんて耐えられない。
せめてもの償いとして、エドワード様のお役に立つ立派な第二王子妃になることを胸に誓った。
「私とエドワード様は今八歳。魔王復活が十八歳の時だから……ルシフェル様と姉弟仲を深めて、十七歳までには魔王を倒してもらわないと!」
全ては幸せな未来のために!
頑張るぞ、と拳を強く握った。
~~『救国の聖女』第XX話~~~~~~~~
『エドワード様の婚約者って、ルシフェル様のお姉様なんだよね?』
魔王討伐の旅に出た聖女と仲間たち。
強くて勇敢なエドワードに心惹かれながらも、彼には婚約者がいるのだからと自分を戒めるミキ。
でも、どうしても気になってしまって、二人きりになったタイミングでミキはルシフェルに尋ねた。
『ええ。ただ、私は養子なので姉といっても義理ですがね』
『えっ、そうだったの? ……ごめんなさい。踏み込んだことを聞いちゃって。エドワード様の婚約者がどんな方か、つい気になって……』
『構いませんよ。義姉は確かに殿下の婚約者ですが、貴族としての責務を果たしているだけ。彼らの関係は所詮それだけです。ミキと一緒にいる時の殿下は、生き生きとしてまるで別人ですよ』
『そ、そうかな』
ルシフェルの言葉に、ミキは照れたように顔を赤らめる。
『あ、そういえばエドワード様から聞いたの。お義姉様が、ルシフェル様のことをよく自慢してるって! 優秀な義弟で、大切な家族だってエドワード様に言っているみたい。お二人は仲が良いんですね!』
何気ないミキの言葉に、ルシフェルの動きが止まる。
普段は感情を露わにしないルシフェルが、顔を歪めて吐き捨てるように言った。
『大切な家族、ね……私は彼女を姉と思ったことなどありませんよ。ただの、一度もね』
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