青年は救国に立ち向かうようです -帝国崩壊の時、種は一つになる-

まう

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第一章 始まり

第四話 酒場での一コマ

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アンナ様を公爵邸へと送り届けた後、僕は真っ直ぐ家には帰らず家とは正反対の方向へと歩を進めていた。 
帝都ベアトリスは昼はさることながら夜もまた別の意味で賑わいを見せる。 そういった目的で出歩いている人々とすれ違いながら僕は帝都から出る門の付近にある店へと入る。

酒場「モンド」の扉を開くと店はまだ開いたばかりなのか、客も三・四人がまばらに飲んでいるぐらいだった。
モンドの店主マスターは僕の姿を見るとニカっと笑うとカウンターへと通された。

「おう、ナナキじゃねえか 二週間も顔見せなかったからおっ死んじまったかと思ったぜ」
「失礼だなマスター、それに僕が死んだら誰がマスターの話相手になんだよ」

マスターはその大きな手で棚にある瓶を取り出すとグラスに注ぎ僕に差し出した。

「ハハ、違ぇねえ おめぇがいなくなったら悲しくて朝しか眠れねぇよ  で、今日はどうしたってんだ?」
「いや、今日は飲んで忘れようと思ってね」

そう言いながら僕はグラスに注がれた飲み物をグイッと飲み干す、久しぶりの酒の味につい口が緩んでしまう。

「なんだぁ!?女にでもフラれたか?」

その言葉にズシリと頭を垂れる、マスターは図星か と豪快に笑ってみせる。
酒場の扉が開く、どうやら客が入ってきたようでマスターはカウンター席へと案内する。 その客は僕の隣に座ると頭を机に突っ伏している僕に声をかけてきた。

「おや、ナナキ君じゃないか? めずらしいねぇ」

そう言われて顔を上げる、僕の目には青い髪をした女性の姿。
マリー•ルーデル様  僕とマリー様はこの酒場で知り合った いわば飲み仲間だ
アンナ様と同じく平民である僕と対等な立場でいてくれる、大切な親友とも言える人である。

「マリー様…子爵令嬢がこんな夜に酒場にいていいんですか? ルーデル卿が聞いたらぶっ倒れますよ」

マリー様は小さく笑みを浮かべるとグラスに注がれた酒を一口飲む。

「いいんだよ、夜遊びもまた貴族令嬢の嗜みに一つさ」
「嗜みのひとつって……」
「それよりなんだい?浮かない顔をしてるけどアンナ様にフラれたのかな?」

彼女もまた、僕の心の中を見透かしたかの如くに核心をついた、読心術でも使えるのかこの人達は。

「そうなんだよマリー嬢、コイツを慰めてやってくんねぇか」
とマスター

「本当にキミは分かりやすいねぇ、ボクで良ければいつでも胸を貸してあげよう」

そう言って手を広げるマリー様、相変わらずのマリー様に少しの安心感を覚えつつ僕は無視して新たに注いだ酒を飲む。

「はいはい、そういうのは間に合ってるんでいらないです」
「おや、フラれてしまったようだ ボクは悲しいよ」

なぜ僕の周りにいる貴族令嬢はこう、オープンなんだろうか そう思っていたらマリー様が口を開く。

「おおよその話はボクもお父様から聞いているから知ってはいるよ めでたい事じゃないか」
「分かってますよ、めでたい事ぐらい…」

そう、めでたいのだ アンナ様が皇太子妃となる  これほど喜ばしいことはないはずなのに…心のどこかでは祝福しきれていない自身に嫌気が差す。

「まあ良いじゃねぇか、飲め飲め 飲んで新しい恋でも見つけろ」

とマスターなりの慰めなのか、僕に酒を飲めと勧めてくる、その言葉に飲む速度が速くなる。

「しかし最近は女性の活躍が素晴らしいねぇ、同性として誇らしいよ」
「活躍…?」

僕は少しほろ酔いながらも聞き返す、女性の活躍なんてあったかな?

「知らないのかい? 我が帝国の騎士団に新しく就いた団長サマの事」
「いや、最近は仕事が忙しくて…」

と最もらしい理由を述べる 実際知らないから仕方ないが。

「第一帝国騎士団の団長に就いたのがなんと十八歳の女の子らしくてね、貴族の間でもその話で持ちきりなのさ
なんでもサラマンダー様の加護を受けた娘らしくてね」
「サラマンダー様の…加護…?」

なんだ、なにを言っているのかまったくわからない…

「もう酔いが回っているのかい? かの四大精霊で火を司る精霊のことだよ 君も習った事あるだろう?」

そうマリー様に言われるとなんだか聞いた事があるような気がする…ええとなんだったかな…?

「火の精霊サラマンダー様、水の精霊ウンディーネ様、風の精霊シルフィー様、土の精霊ノーム様のことだよ
その火の精霊サラマンダー様の加護を受けたって事さ 加護を受けたと言うことは守護獣も扱えるってことだからね 影響力も考えたら団長に据えるのも頷けるよ」

マリー様は少し興奮した感じで喋っていたが僕はそれを聞きながら酒を一気飲みする。

「マスター、今日は朝まで飲むぞ」
「おぉ!!いいぞナナキ、仕方ねぇから付き合ってやるよ」
「まったく仕方ないねぇ、ボクとキミの仲だからね 気が済むまで付き合ってあげよう」







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