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第一章 始まり
第十二話 義務
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僕たちは風魔法で空を飛んで、いや正確には緩やかに降下していた。 降下している最中僕たちの間には言葉はなかった 僕の耳にはアンナ様の嗚咽だけが静かに響く。
やがて僕たちは城外へと降り立った。 アンナ様が無事に城の外へと出れた事にひとまず安堵し辺りを見渡す、どうやらまだ騒ぎのことは外までは漏れていないようだ。 だがそれも時間の問題だ、時期に追手がくるだろう 今のうちに帝都から出る門まで急がないと。
僕はアンナ様の手を握り走ろうとするがアンナ様は動かず静かに口を開いた。
「…ダメ、ダメよ 私のために誰かが犠牲になるなんて…今からでも遅くないわ、ダリスを助けに行きましょう」
アンナ様は僕の手を振り解こうと必死に手を振るが、僕はより一層力強く手を握る。 アンナ様は驚いた顔を僕に向ける。
「ナナキ…何してるの? まさかダリスを見捨てる気じゃ…」
「今は、逃げることが先決です 城には引き返せません」
そう言うとアンナ様は軽蔑とも嫌悪ともいった眼差しを僕に対して向ける、彼女にそんな目をされるのは初めてのことだった。
心が、痛む。 アンナ様の御気持ちが分からない訳ではない、僕も辛い。 だけど今は 今だけは喪に服している場合ではない。 なによりダリスさんの行動を無駄にするわけにはいかないのだ。
「私一人でも、引き返します 早く手を離して」
そう僕に言うと踵を返し城へと戻ろうとするアンナ様に僕は気持ちを押し殺し、抑揚のない声でアンナ様に対して言葉を口にする。
「戻ったところでどうなるというんです? アンナ様もすぐ捕まるのがオチですよ」
「っ……! でも…」
アンナ様が言葉に詰まる、僕は続けてアンナ様に冷たく言い放つ。
「アンナ様は生き延びる義務があるんですよ、僕もダリスさんも覚悟を持ってあなたを助けにきました その決意をあなたは無駄にするおつもりですか!?」
「僕のことを冷たい人間だと思ってくれても構わない、だけどダリスさんの想いを、覚悟を僕は無駄にはしたくない あなたは生きないといけない」
僕はそこまでいうと頬に冷たいものが落ちるのを感じた、アンナ様に顔を見られないでよかった。 こんな情けない顔をアンナ様に見せたくはなかったから。
やがてアンナ様は僕の手を強く握り返してくれた、アンナ様を掴む僕の手は震えていたがやがてその震えも止まる。
「……ナナキ、生きましょう もう少しで私はあなたたちの想いを無下にするところでした…」
そう言うと僕が向いている方へと向き直すアンナ様。 だけど僕はなにか強烈な違和感を感じていた。
違和感…とも違う、この感じ。 例えるなら僕はこの場面を…知っている? 既視感だ、僕の頭は何のことかわからず混乱していた。 僕は頭を切り替える。
いや、今は余計なことを考えている場合ではない 悩み考える事は後回しだ。僕はアンナ様の手を再度握り締める。
「行きましょう…生きるために」
僕は心になにかの引っ掛かりを感じつつ、闇をを切り開くように走り始めた。
•
•
•
僕たちは、奔る。 暗闇で覆われた街を奔っていた。 門までもうすぐ 夜のおかげで人通りは少ない。
「このまま 門まで…!」
だが、そう上手くは行かなかった、追手がきたのだ。 追手は木の棒に灯した篝火を手に僕たちに迫っていた。
「いたぞ! 捕らえろ!」
「っ…こっちです!」
僕はアンナ様の手を引っ張り民家と民家の間に空いている小道へと走り込んだ、追手もそれに追随する。
このまま走り抜けて別の経路を探すことを考えていたが、その思いも目に入る高い壁に阻まれた。
「行き止まり…!」
僕たちは慌てて引き返そうと踵を返すも既に何人もの兵士が僕たちの目に飛び込んできた。
「苦労させやがって…これで終わりだな」
兵士の一人が、侮蔑を込めて言う、ジリジリと詰め寄ってくる兵士達。
「ナナキ…」
アンナ様が震えながら言葉を発する、僕は静かに両手を上げようとする。
「動くな!」
兵士の怒声が響く。 僕は感情のない声で兵士達に言葉を返す。
「抵抗のないことを示すだけですからそんなビビらなくても大丈夫ですよ」
「なんだとっ…! 貴様ら自分たちの立場を分かっているのか!」
兵士の一人が僕の挑発とも取れる言葉に声を荒げる。 怒りは冷静さを失わせる、平民風情に挑発されたら怒るのも無理はないだろう。
両手を上げ切った瞬間、僕は手に隠し持っていた黒い小玉から手を離した。 辺りは篝火で明るいとはいえ小玉から手を離したことに彼らは気づきもしなかった。
「アンナ様、目を瞑って下さい!」
小玉が地面に着いた瞬間、辺りを眩い光が包んだ。 この日のために作っていた特別な武器だ、殺傷能力はないがこの闇の中では存分に威力を発揮する。
「うわああ!」
「目が、目が見えないっ…!」
闇の中から突如現れた強い光に兵士達は目をやられ次々に両手で目を抑える、僕たちはそれを尻目に兵士達の横を駆け抜けた。
通りは、誰もいない。
「よし、このまま一気に…」
そう言うと門まで走ろうとする、だが横から伸びた手が僕たちを引っ張った。
「えっ!?」
僕は情けない声をあげてしまう、まだ残党がいたのか…僕はアンナ様の手を離そうとした。 アンナ様だけでも逃す、これが今僕にできる事だった。 が次に飛び込んできた言葉に僕は離すのをやめた。
「随分と面白い鬼ごっこをしているじゃあないか、ボクも混ぜてほしいな」
顔を見上げると僕の友が、そこにはいた。 ショートカットの青い髪をなびかせ、彼女は不敵に笑う。
「マ、マリー様!?」
何故、彼女がここにいるのか 頭の整理が追いつかないでいるとマリー様は僕たちを一瞥しとある民家へと誘導する。
「騎士と姫を助けにきたよ、ここで歓談といきたいところだが生憎時間がない 一先ずここに身を隠し給え」
そう言われるまま民家へと入ろうとする。 アンナ様がマリー様の顔を見ると感謝の言葉を口にした。
「あの…ありがとうございます」
マリー様はアンナ様を見ると優しく微笑み返す。
「どういたしまして、アナタの事はナナキ君からよく聞いているよ、アンナ嬢 詳しい話は後にしよう」
僕たちは灯りの灯っていない、民家へと入った。
やがて僕たちは城外へと降り立った。 アンナ様が無事に城の外へと出れた事にひとまず安堵し辺りを見渡す、どうやらまだ騒ぎのことは外までは漏れていないようだ。 だがそれも時間の問題だ、時期に追手がくるだろう 今のうちに帝都から出る門まで急がないと。
僕はアンナ様の手を握り走ろうとするがアンナ様は動かず静かに口を開いた。
「…ダメ、ダメよ 私のために誰かが犠牲になるなんて…今からでも遅くないわ、ダリスを助けに行きましょう」
アンナ様は僕の手を振り解こうと必死に手を振るが、僕はより一層力強く手を握る。 アンナ様は驚いた顔を僕に向ける。
「ナナキ…何してるの? まさかダリスを見捨てる気じゃ…」
「今は、逃げることが先決です 城には引き返せません」
そう言うとアンナ様は軽蔑とも嫌悪ともいった眼差しを僕に対して向ける、彼女にそんな目をされるのは初めてのことだった。
心が、痛む。 アンナ様の御気持ちが分からない訳ではない、僕も辛い。 だけど今は 今だけは喪に服している場合ではない。 なによりダリスさんの行動を無駄にするわけにはいかないのだ。
「私一人でも、引き返します 早く手を離して」
そう僕に言うと踵を返し城へと戻ろうとするアンナ様に僕は気持ちを押し殺し、抑揚のない声でアンナ様に対して言葉を口にする。
「戻ったところでどうなるというんです? アンナ様もすぐ捕まるのがオチですよ」
「っ……! でも…」
アンナ様が言葉に詰まる、僕は続けてアンナ様に冷たく言い放つ。
「アンナ様は生き延びる義務があるんですよ、僕もダリスさんも覚悟を持ってあなたを助けにきました その決意をあなたは無駄にするおつもりですか!?」
「僕のことを冷たい人間だと思ってくれても構わない、だけどダリスさんの想いを、覚悟を僕は無駄にはしたくない あなたは生きないといけない」
僕はそこまでいうと頬に冷たいものが落ちるのを感じた、アンナ様に顔を見られないでよかった。 こんな情けない顔をアンナ様に見せたくはなかったから。
やがてアンナ様は僕の手を強く握り返してくれた、アンナ様を掴む僕の手は震えていたがやがてその震えも止まる。
「……ナナキ、生きましょう もう少しで私はあなたたちの想いを無下にするところでした…」
そう言うと僕が向いている方へと向き直すアンナ様。 だけど僕はなにか強烈な違和感を感じていた。
違和感…とも違う、この感じ。 例えるなら僕はこの場面を…知っている? 既視感だ、僕の頭は何のことかわからず混乱していた。 僕は頭を切り替える。
いや、今は余計なことを考えている場合ではない 悩み考える事は後回しだ。僕はアンナ様の手を再度握り締める。
「行きましょう…生きるために」
僕は心になにかの引っ掛かりを感じつつ、闇をを切り開くように走り始めた。
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僕たちは、奔る。 暗闇で覆われた街を奔っていた。 門までもうすぐ 夜のおかげで人通りは少ない。
「このまま 門まで…!」
だが、そう上手くは行かなかった、追手がきたのだ。 追手は木の棒に灯した篝火を手に僕たちに迫っていた。
「いたぞ! 捕らえろ!」
「っ…こっちです!」
僕はアンナ様の手を引っ張り民家と民家の間に空いている小道へと走り込んだ、追手もそれに追随する。
このまま走り抜けて別の経路を探すことを考えていたが、その思いも目に入る高い壁に阻まれた。
「行き止まり…!」
僕たちは慌てて引き返そうと踵を返すも既に何人もの兵士が僕たちの目に飛び込んできた。
「苦労させやがって…これで終わりだな」
兵士の一人が、侮蔑を込めて言う、ジリジリと詰め寄ってくる兵士達。
「ナナキ…」
アンナ様が震えながら言葉を発する、僕は静かに両手を上げようとする。
「動くな!」
兵士の怒声が響く。 僕は感情のない声で兵士達に言葉を返す。
「抵抗のないことを示すだけですからそんなビビらなくても大丈夫ですよ」
「なんだとっ…! 貴様ら自分たちの立場を分かっているのか!」
兵士の一人が僕の挑発とも取れる言葉に声を荒げる。 怒りは冷静さを失わせる、平民風情に挑発されたら怒るのも無理はないだろう。
両手を上げ切った瞬間、僕は手に隠し持っていた黒い小玉から手を離した。 辺りは篝火で明るいとはいえ小玉から手を離したことに彼らは気づきもしなかった。
「アンナ様、目を瞑って下さい!」
小玉が地面に着いた瞬間、辺りを眩い光が包んだ。 この日のために作っていた特別な武器だ、殺傷能力はないがこの闇の中では存分に威力を発揮する。
「うわああ!」
「目が、目が見えないっ…!」
闇の中から突如現れた強い光に兵士達は目をやられ次々に両手で目を抑える、僕たちはそれを尻目に兵士達の横を駆け抜けた。
通りは、誰もいない。
「よし、このまま一気に…」
そう言うと門まで走ろうとする、だが横から伸びた手が僕たちを引っ張った。
「えっ!?」
僕は情けない声をあげてしまう、まだ残党がいたのか…僕はアンナ様の手を離そうとした。 アンナ様だけでも逃す、これが今僕にできる事だった。 が次に飛び込んできた言葉に僕は離すのをやめた。
「随分と面白い鬼ごっこをしているじゃあないか、ボクも混ぜてほしいな」
顔を見上げると僕の友が、そこにはいた。 ショートカットの青い髪をなびかせ、彼女は不敵に笑う。
「マ、マリー様!?」
何故、彼女がここにいるのか 頭の整理が追いつかないでいるとマリー様は僕たちを一瞥しとある民家へと誘導する。
「騎士と姫を助けにきたよ、ここで歓談といきたいところだが生憎時間がない 一先ずここに身を隠し給え」
そう言われるまま民家へと入ろうとする。 アンナ様がマリー様の顔を見ると感謝の言葉を口にした。
「あの…ありがとうございます」
マリー様はアンナ様を見ると優しく微笑み返す。
「どういたしまして、アナタの事はナナキ君からよく聞いているよ、アンナ嬢 詳しい話は後にしよう」
僕たちは灯りの灯っていない、民家へと入った。
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