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傷 sideミレイユ
しおりを挟むSide ミレイユ
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二年前、両親を賊に襲われて亡くした。
それはあまりにも突然で、善良に生きてきた彼らがどうしてと、運命を呪わずにはいられなかった。
祖父母は既に他界しており、両親の葬儀を執り行ってくれたのは父の遠縁であったが、あまり付き合いもなかったためその後は一度も会っていない。
「久しぶりね、ミレイユ。まさかレイナがこんなことになるなんて、信じられないわ。辛いでしょうけど、元気を出して…あなたは一人じゃないわ」
葬儀が終わり、そう声をかけてきたのは母の姉のリイサ伯母様だった。
彼女は母に会いに我が家にやってくることも多く、よく知っている。
だけど、伯母家族との縁は非常に薄かった。
どうしてか母は伯母以外のフォージャー侯爵家との繋がりを絶っていたのだ。
理由なんて最早聞くことも叶わない。
「やあミレイユ、私は君のお母さんや伯母さんとは幼馴染なんだよ。グレッグ・フォージャーだ、よろしく」
伯母様もフォージャー侯爵も優しい笑みを浮かべて口々に私を励ましてくれる。
そして、彼らはあろうことか、私を家族として侯爵家に引き取ってくれると言うのだ。
家族をいっぺんに失い絶望の縁にいた私が、彼らの優しさにどれだけ救われたかなんて計り知れない。
侯爵家には、二人の子ども達がいた。
一人は、侯爵家長男である二つ上のサイラス様。
そしてもう一人は私と同い歳であるセイラ様だ。
侯爵家に引き取られて、初めて彼らと顔を合わせた時…私の中に、とある醜い感情が生まれたのだった。
羨ましい。
私は彼らに嫉妬した。
優しい両親に、互いを思いやる兄妹。
私がどれだけ渇望しても、もう二度と手に入れることのできない理想的な家族の形がそこにあった。
初めのうちは、優しい二人にどうにかそんな醜い感情を押し殺し、友好的に接していたと思う。
だけどある日、セイラ様が私に放った言葉に、私の中の何かが壊れてしまった。
「私も母を失ったから、ミレイユのつらさはよくわかるわ。大丈夫、傷は時期に癒えるものよ」
きっと善意で告げられた言葉であることは理解している。
だけど、私にはセイラ様の言葉があまりにも無神経に思えて仕方なかったのだ。
母を失った…?
確かに、セイラ様は実の母を病気で亡くしている。
だけど、あんなにも優しい伯母様が新しいお母様になってくれて、あんなにも優しいお父様だっているではないか。
それに、兄妹まで。
私のつらさがよくわかる?
笑わせないで欲しい。
セイラ様と私ではあまりにも違いすぎている。
この深い傷がどうやったら癒えると言うのだ。
返事も返さず唇を噛み締める私を、セイラ様は不思議そうな顔で見つめていた。
嫌いだ、この人が心の底から大嫌いだ。
「ふふっ、ありがとうございます。私の気持ちを、理解してくれるのですね」
言葉通り、わからせてやろうと思った。
家族を失う苦しみを。
■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫
ミレイユ視点続きます。
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