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追放された王女様
しおりを挟む____まさか、自分がこのように断罪されてしまうなんて想像もしていなかった。
学園の大広間、ゾッとするような冷たい視線と厳しい声を一身に受けながら、心はどこか凪いでいた。
「君が彼女を虐めていたなんてな。見損なったよ、ルルシア」
吐き捨てるようにそう言った彼は、私の婚約者だった人。
アドルフ・セギュール公爵令息。
つい先日までは、幼馴染兼将来の伴侶として穏やかな関係を築いていたのに、この変わりようには驚きだ。
「アドルフ様、私のためにごめんなさい…お二人の関係が壊れてしまうなんてっ、本当に、そんなこと私は望んでいなかったんです…」
傍らの彼女が大袈裟な程悲嘆めいた口調で言葉を紡ぐ。
涙で潤んだ瞳がひどく儚げで、守ってあげたくなるような可憐さは、まるで物語のお姫様のよう。
お姫様を片腕に添わせたまま、アドルフ様は、苦虫を噛み潰したような表情で口を開いた。
「君が心を痛める必要はないよ、ハンナ。遅かれ早かれ、彼女の人間性は周知されていたはずさ。…側妃様の仰る通りだった。気づかなかった私が愚かだったんだ」
十年間も婚約者として過ごしてきたわりに、ひどく呆気ない終わり。
私の悪評は驚異的な速さで貴族社会に広まり、処分を求める声を抑え切ることは難しかった。
それはきっと一国の王女のゴシップ目当ての野次馬と私を嫌う即妃様の影響が大きかったのだろう。
決まった処分は国外追放。
と言っても、身分はそのままに、留学のような形で隣国の学園に通うという易しいものだけれど。
隣国に追放された王女なんて、御伽噺ですら聞いたことがないと言うのに、そんなことは本当に起こり得ることなのだと正直少しだけ感嘆してしまった。
それは、私が祖国の貴族社会で驚くほど嫌われてしまって、そんな私の立場を慮ってくれた父の寛大な措置であることは私だけが知っていること。
正妃でありながら何年も前に星になってしまった母の代わりに力をもった側妃のあの方は心底私を嫌っているらしい。
私は王女で、彼女の息子である第二王子と共に王位争いに参加することもできない立場なのに不思議だ。
王太子である兄様に表立って強く当たれない分、私で鬱憤を晴らしていたのだろうか。
____そんなことはさて置き、兎にも角にも、私、ルルシア・ルーチェ・ローゼンハイムは、追放された。
理由は、そう。
王女であるにも関わらず、権力を盾に傍若無人な振る舞いで、とある少女を全力で虐げたから、そんなところだ。
なんでも、婚約者であった公爵令息とその少女の仲に嫉妬しての行いらしい。
少女は所謂貴族の私生児で、彼女の母親は大事な娘を由緒正しい男爵家の要らぬ争いに巻き込まないよう必死に守り抜いたのだという。
それが、少女が16になったある日、病にかかり死の淵をさ迷った母親は、ついに彼女の父親に手紙を出し娘の存在を打ち明けた。
手紙をもらった男爵は、愛する女性とその娘の存在を知り、家族の反対を押し切り、すぐさま家に迎え入れ…幸せな家庭を築き上げたというわけだ。
愛する女性のために独り身を貫いていた男爵と女手一つで娘を守り抜いた少女の母親。
そうして、そんな二人に愛されて貴族の仲間入りを果たしたシンデレラのような少女。
そんな背景をもって私の通う学園に中途入学という形でやってきた彼女を、学園中の生徒が温かく迎え入れたのも当然のことで、私だってその一人だったのだ。
それなのに、
まさか自分が、そんな少女と婚約者の関係に巻き込まれて、隣国まで追いやられてしまうなんて。
人生何が起こるかわからないものだ、なんて他人事のように思う。
______さてさて、私のつまらない世界は、これからどのように変わっていくのでしょう。
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