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変化
しおりを挟む猫になって一番驚いたこと、
それは、
《ご主人、セドリックなんか放っておいて俺とデートしようぜ~?》
あんなに可愛いマンチカンのルイス君から、こんな男臭い声が聞こえるようになってしまったことだ。
ちなみにセドリック様には普段通り、にゃあにゃあ、などという可愛い声にしか聞こえないらしい。
やはり魔法で猫に変身している後遺症のようなものだろうか。
《セドリックなんてこの前まで、あ~いや、今も割と俺にメロメロだぜ?浮気男なんて捨てちまえって》
「る、ルイス君…?」
《あーあ、俺がせっかくセドリックがミレイユに構わない様に大サービスで愛嬌を振りまいてやってたのによ~》
ルイス君にそんな打算があったなんて知らなかった…
「ミレイユ、顔色が悪いけど、大丈夫?」
勘違いでも猫化した私を永久に手放しかけたことが相当堪えたのか、あれ以来すっかり昔のような優しいセドリック様に戻ってしまった彼。
些細な変化にもすぐに気づき、こうして優しい言葉をかけてくれる。
「ルイス君が…」
「ルイスがどうかしたの?最近以前より僕に懐いてくれなくなった気がするんだけど…」
悲しそうな表情を浮かべるセドリック様。
《そんな弱っちい男やめちまえよ~。お前にはもっとしっかりした男がお似合いだと思うぜ?例えば、俺みたいな~?》
「可愛らしい顔が今となってはチャラチャラした狼のように思えますわ」
「ルイスは何て言ってるの?」
セドリック様には、猫の言葉が聞こえるようになったとだけ報告していた。
「ええと、マイルドに言えば、セドリック様は少し繊細なところがおありのようだから、俺にした方がいいのではないか…という感じですわ…はい」
「そのまま言うと?」
「セドリック様は弱っちいから俺のようにしっかりした男がお似合いだと、」
素直に言われたままの言葉を口にすると、セドリック様の表情が笑顔のままピキリと固まってしまった。
「へえ~?ルイスがそんなことを、ねえ」
「セドリック様…?」
どうしてでしょう、笑顔なのに、少し怖く思えてしまいますわ。
「ミレイユ、ちょっと」
そんな言葉とともに、ぐいっと腕をひかれセドリック様との距離が大きく近づく。
至近距離にある彼の綺麗な顔にドキドキしてしまう。
数秒見つめあったあと、セドリック様は甘く微笑んで、そのまま私の唇に、彼のそれが触れた。
「っ…!」
「猫にはこんなこと、できないよねえ?」
意地悪に笑った顔は初めて見るような、いたずらっ子のような表情だった。
…か、可愛い。
《けっ、お熱いこって》
ルイス君はそう言うと、踵を返して部屋から出ていってしまった。
「セドリック様、意地悪ですわよ?」
「僕も男だからね、婚約者が他の男にちょっかいを出かけられていたら嫉妬くらいしちゃうよ」
「ルイス君は猫ですわ」
「でも、オスだよねルイスは。四六時中ミレイユといられるんだからこのくらいの意地悪は大目に見て欲しいな」
彼はそう言ってもう一度、そっと私に口付けるのだった。
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