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新婚生活
しおりを挟むside セドリック
■□▪▫■□▫▪
「ん…」
カーテンの隙間から零れる細い光が僅かに顔に当たり目を覚ました。
顔全体に感じる温かな重み…
混乱してしまったのもつかの間、すぐにその正体がわかって頬が緩む。
「可愛いなぁ…ミレイユは」
そっとふわふわな毛並みに手を添えて、優しく体を撫でる。
耳元で規則的な寝息を立てる彼女は、人間の姿でも、猫の姿でも破壊的な可愛さを誇っていた。
僕の顔を覆うように大の字になっているミレイユは、きっと目が覚めたら恥ずかしさで卒倒してしまうのではないか。
猫だから、平気だが。
ミレイユからしたら、裸で僕の顔に寝そべっているのと同じことではないのか。
「サービスいいなぁ…」
クスクスと漏れる笑いに、ミレイユの体がビクリと揺れる。
「んっ、セドリック、さまぁ?」
「おはよう、ミレイユ」
「くすぐった、え、セドリック様?」
寝起きで舌っ足らずなミレイユが可愛すぎて食べてしまいたい程だ。
僕が口を開く度に体に触れる吐息に顔の上のミレイユがじたばたと暴れているようだ。
仕方なくそっと体を抱えて、僕の隣に下ろしてやる。
人間二人が使うのにさえ大きすぎるベッドは、ミレイユが猫になってしまっている分、より広く感じる。
「また、僕の胸にもぐりこんでたの?」
「そ、そんなことしてませんわっ」
ミレイユはいつも、僕が眠るまでは人間の姿でいるのに、朝起きたら猫の姿で胸の中にもぐりこんでくる。
正直、嬉しくないわけが無いが、
「き、気がついたら猫になっていただけです」
顔を真っ赤にして言い訳にもなってない言い訳を零すミレイユはすごく可愛いからついついいじめてしまう。
「やっぱり、猫化の後遺症が出ているのかもしれないよ?一度ちゃんと魔道士に見てもらった方がいいんじゃ…」
「大丈夫ですからっ、心配しなくても、平気ですわ!」
「…僕はミレイユが心配なんだよ」
眉を垂らして不安げにそう言うと、ミレイユは罰が悪そうに俯いて、口を開いた。
「…セドリックの胸が、暖かくて…っ、心地よいから…じ、自分で潜り込みましたのっ」
「ふふっ、やっぱりミレイユは可愛いね」
「そういうセドリック様は意地悪ですわっ」
ぷいっと顔を逸らしたミレイユを抱き寄せ、そっと口付けを落とすと、本来の人間の姿に戻る。
いつまでたってもキスに慣れないらしい。
「人間の姿のままでも、僕の胸にもぐりこんでくれて構わないのに」
「前はあんなに恥ずかしがって目も合わせてくれませんでしたのに…!」
いつの話をしているんだろうね?
「僕達もう結婚したんだよ?ミレイユもそろそろ慣れないとね」
「っ、私には一生無理ですわ」
今度こそはと、人間の姿のミレイユに、もう一度優しいキスを送る。
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