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観光撮影

第2話

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「髪型変えたね」

「う、うん。そうなんだよね。春仕様っていうか、何しろ咲良さんとは久々逢うから、ちょっと張り切っちゃって」

話しながら西君から緊張が伝わる。その中でも身嗜みをして、少しでも格好良く見せようとして来てるんだと感じる。まぁ実際に格好いいんだけどね。だけどその西君がなんだかぎこちない。でもこの姿までなんだか可愛いって思ってしまう所、なんだか懐かしい。

「ありがとう、嬉しい、格好いいよ」

「あ、ありがとう、キュンです」

「ブハァ!なにそれ~(笑)」

緊張している感じからいきなりボケて来たもんだから、思わず拭いてしまった。

「だって本当にキュンとしたんで」

「いゃ急にボケるとかずるいよー」

「ボケてないボケてない、本当にキュンとした素直な気持ちなのに」

「そうだったんだ、だけどあの会話からのキュンはツボだわ(笑)」

久々なのに直ぐに打ち解けて、気付いたら西君も敬語じゃなくて普通にため口になっていた。そして5秒程の沈黙が続くと西君が話し出す。

「直接会うって良いね」

「どうしたの改まって?」

「いゃなんかさ、今までってSNSでのやり取りだけだったじゃん?充分それでも良かったんだけど、こうやって逢うとやっぱりいいなぁって。周りがデートするのわかる気がする。こうやって面と面が合って言葉交わして触れ合って。好きを分かち合うって大事なんだなってふと思った」

西君の言う通り。会うと安心感もするし、改めて好きなんだなと感じていた。

「確かにそうだね。顔見ると落ち着くし」

「うん」

そう言うと茶水駅に着くまで他愛のない会話をしながら、阿吽の呼吸なのか、お互いに何も聞く事もなく手を繋いでいおり、その風景を写真に収めた。
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