本気の宇宙戦記を書きたいが巨乳も好きなのだ 〜The saga of ΛΛ〜 巨乳戦記

砂嶋真三

文字の大きさ
123 / 230
起転[承]乱結Λ

34話 夢の始まり。

しおりを挟む
 レギオン旗艦のは、建物の老朽化が進んでおり路面状態も良いとは言えない。

 スキピオの暮らすアパートメントも似たようなもので、氏族の一員が住むとは思えないような外観だった。

「ボロいな」

 フリッツが思ったままの感想を呟く。

 他方のスラム育ちなテルミナには、不思議と落ち着ける雰囲気だった。

「船団国の限界って事さ」

 肩を竦めてスキピオが応える。

 首船プレゼピオは例外として、他のレギオン旗艦も似たような状況なのだ。

「そもそも、俺達がここ──旗艦で過ごすのは年に数日も無い」

 略奪、輸送、密貿易、採掘、工業──彼等の経済活動は艦艇で飛び回る事により成立する。

「ルキウスについて回ってるあんたも――って事だな」

 ああ、とフリッツの問いに頷いた。

「俺も、ここに戻るのは半年ぶりだ」

 玄関ロビーを抜けた先の昇降機に乗ると聞いた事もないような異音を立てて上昇をし始める。

 七階についたところで扉が開くと居室に直接繋がっており、空腹に響く香りが周囲を満たしていた。

 テルミナは周囲の様子を窺いながら懐に潜ませたバヨネットの手応えを確認する。元海賊フリッツも同様に警戒心を露わにした。

 だが――、

「いやぁ、良い匂いですね」

 殺人鬼トーマスは気にする様子もなく、他人の居室へ我先にと足を進めていった。

「私はもう腹ペコで誰かを――いやいや――まずは腹ごしらえをしないと――ぐはあ」

 打突音の後、前方でトーマスが悲鳴を上げ倒れる。

 と、同時に彼の頭を打ち付けたフライパンらしきものが床に転がった。

「お、おい、トーマス」

 駆け寄ろうとしたフリッツの肩を、スキピオが掴んだ。

「待て――」
「帰って来たか」

 物陰からエプロン姿の大男が現れる。

「糞坊主」
「チッ」

 スキピオが舌を打つ。

「随分と手荒な歓迎だな。――親父」
 
 ◇

「ま、食ってくれ」
「頂きます」

 額から流れる血はそのままに、トーマスは幸せそうな表情で頬張り始めている。

「気配からして屑だと分かってな」

 それだけでフライパンを使い殴打されては堪ったものではないが、今回に限っては正しい行いだったかもしれない。
 何しろ、殺人鬼なのである。

「――客人ならば仕方あるまい」

 そう言って、トーマスも含めて各人のグラスにワインを注いだ。

 つまりは、レギオン総督コルネリウス ・スカエウォラの手酌という事になる。

 船団国の国民であれば名誉に感じたかもしれないが、生憎とテーブルを囲んでいるのは、帝国臣民の中でも札付きの礼儀知らずな連中だった。

 ――どうせ、帝国から奪ったもんだろうしな。

 と、似たような商売をしてきたフリッツは一切の遠慮を感じていない。

「旗艦にいたのか」
「皆いるぞ。お前とルキウスのせいで、ミネルヴァは暇なんだよ」
「――そうか」

 ルキウスの後援者であるミネルヴァ・レギオンは、使節団訪問以降は帝国からの略奪行為を停止していたのだ。

「苦労を掛けるが今暫くの辛抱だ」
「小僧の分際で一丁前の心配をするんじゃねぇ」

 そう言ってグラスを一気に煽る。
 
 本当ならもっと強い酒を飲みたかったのかもしれない。

「なあ、少しばかり気になる事があるんだが」

 と、既に食事の手を休めていたテルミナは親子の会話に口を挟んだ。

「何だ?」 
「──そこの二人は奴隷船に乗っていたんだ」

 フリッツとトーマスを顎で指した。
 
「で、聞いたんだが、ルキウスの娘が見張り番をしていたらしい」

 奴隷制度廃止を訴える男の娘が奴隷船で働いているという点に、テルミナは違和感を抱いていた。

「――どうにも変じゃねぇか?」

 皿を舐めるように食するフリッツも、油断のならない視線をスカエウォラ親子に送っている。

 ルキウス達を完全に信用するのは危険だ――と、テルミナに忠告していたのはフリッツなのだ。

「それが普通なんだ」

 コルネリウスが、空いた自身のグラスにワインを注ぎながら言った。

「船団国は異端から奪う権利がある。なぜなら、選ばれし民として約束の地アフターワールドへ至るまでは、食って糞をして子孫を残す必要があるからだ」

 グノーシス船団国の教義によれば、彼等に与えられる約束の地がアフターワールドなのである。

 約束の地を求める旅路を続ける為には全ての非道が女神により免罪されるのだ。

「ルキウスこそが異常ってことだ。いや――」

 少しの躊躇いを見せた後にコルネリウスは再び口を開いた。

「俺達こそが異常なんだろう」
「テメェも含むって意味か?」

 そうだ──と、コルネリウスは頷いた。
 
「ただ、アドリアにあんたが感じた違和感は、彼女がカッシウス家の娘だからかもしれん」

 船団国では名家とされる氏族の出自という意味になる。

「ルキウスの父親を自由奴隷としたのも、俺とカッシウスの絆による」
「ふむん」
「だが、政争に敗れたカッシウス家は取り潰しとなり、その多くは処刑──あるいは奴隷に堕とされてしまった」
「アドリアは救われたのか?」
「ああ」

 恩返し、あるいはルキウスの信条かは分からないが、アドリアを自らの養女として保護下に置いたのだ。

「ともあれ、彼女には色々と不幸が重なった。何らかの歪みを抱えている可能性はある」

 神官職以外の道もあったはずだが、彼女は船付神官を選んでいた。

「学生時代の苦労も多かったと聞く」
「色々と属性が乗っかってるからな。分かるぜ」

 幼少期のフリッツにもそれなりの苦労はあったのだろう。

「解放奴隷の養女にしてカッシウス家の娘。集団から排除する材料は豊富だったろうな」

 この場では口にしたくない事件の幾つかを、コルネリウスは耳にしている。

「なるほど、な」

 修道院では肉人形にされかけたテルミナも、実のところ学生時代には良い思い出が無かった。

 ――つっても、逃げるか――殴るかはしてきたぜ。
 
 今が幸せかと問われても確たる答えを持ち合わせていないのだが、昔に戻りたいかといえば明確に否定するだろう。

「で、カッシウス家の連中は何をやらかしたんだ?」

 国家反逆罪相当の案件なのだろうとは想像が出来た。

「夢を見たのさ」

 だが、コルネリウスの返す言葉は謎めいたものとなった。

「そこからルキウスの夢も始まった」
 
 ◇

 同じ頃──、

 梵我ぼんが党のアドリアに対する蛮行を伝える円筒デバイスを受け取り、ルキウスは激烈な怒りに肩を震わせていた。

「いいでしょう」

 民会へはかる前に、相手は実力行使に出たのである。

「もはや、どちらに転んでも私に敗北はありません」

 ルキウス・クィンクティの瞳に昏い炎が灯った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

大東亜戦争を有利に

ゆみすけ
歴史・時代
 日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

処理中です...