異世界召喚された占い師は、預言者として魔王にさらわれちゃいました!!

なつき

文字の大きさ
3 / 5
第一章

占い師は現実主義

しおりを挟む
「あの、ご主人様」

若干戸惑いながら問いかけたワルプルギスに、ミツキは上機嫌で答えた。

「あらやだプルちゃんたら。私の事はミツキでいいって言ったでしょ~」

「ではミツキ様。その、そろそろあきませんか?」

「あきませんよ~。プルちゃんのお耳、ほんとにモフモフで気持ちいいんだもの~」

ミツキの答えに、ワルプルギスは嘆息した。
こうしてミツキに耳をモフモフされ始めて、かれこれ十分は経過しただろうか。
この女主人は、一向にあきる気配がない。
ちなみに、プルちゃんというのは、ミツキが言い出したワルプルギスの愛称だ。
彼女の見た目は実に愛らしい。
真っ黒なモフモフのたれ耳もさることながら、彼女自身がとても愛らしいのだ。
まず髪。
ロングへアの黒髪は、まっすぐ艶やかで美しく、腰の辺りできっちりと切り揃えられている。
前髪がおでこ全開ぱっつんなのも実に愛らしく、よく似合っている。
顔は小さく、その肌は陶磁器のように白く滑らかだ。
つぶらな瞳は紅く、まるで上等な紅玉石のようだ。
整った鼻筋は彫像のようで、その小さな唇は紅く艶めいていて、彼女の愛らしさに妖艶な美しさを加えている。
勿論首筋は細く、手足もまた負けずに細い。
背は低く、華奢な身体は抱き締めたら折れてしまいそうだ。
ミツキに大人しく耳をモフられているその姿は、一見すると、まるで姉に猫可愛がられている妹のよう。
実に微笑ましい光景である。

「はー、満足!プルちゃん、ありがとうね!」

さすがに撫ですぎだと自省しながら、ミツキは残念そうにその手をワルプルギスの耳から離した。
ワルプルギスはようやくひと心地ついたとばかりに、ふぅとため息を吐いた。
まったくもっておかしな主人に仕える事になってしまったものだと心の中で思う。

「それなしても長いなあ、この夢。全然覚めないんだもん」

「夢、ですか?」

「うん。だって、プルちゃんみたいな子が現実にいるわけないし。魔王とか大予言者とか、夢としか思えないじゃない」

カラカラと明るく笑うミツキに、ワルプルギスは無表情のまま言った。

「ミツキ様。まさか本当にこれが夢だと思っていらっしゃるのですか?」

「え?」

ミツキの笑顔が固まる。
一瞬の沈黙の後、ミツキはおそるおそる口を開いた。

「夢、だよね?」

ミツキの問いに、ワルプルギスは無表情のまま静かに答えた。

「いいえ。夢ではございません」

まったくの無表情なワルプルギスを前に、ミツキは苦笑いを浮かべた。

「まったまたぁ。冗談ばっかり」

「冗談など申しません。ミツキ様は魔王様がお連れになった異世界から召喚されし大予言者と、わたくしは伺っております」

そこまで聞いて、ふとミツキは思った。
夢だからといって、これは夢ですよーと教えてもらえる訳ではないかもしれないと。

「あー、うん。分かった」

とりあえずこれ以上の抗議はしても無駄だろうと悟ったミツキは、早々と諦める事にした。
これが夢じゃなくてなんだというのだ。
占いなんてちょっと現実離れした事を生業にしていたミツキだが、基本的には現実主義である。
占いを行う関係上、神秘的な超自然的存在、神や精霊がいる事は信じている。
ミツキの占いは、そういう神や精霊の力を借りるまじないを使ったものだから。
とはいえ、さすがに魔王とか、あまつさえウサギ耳の生えた美少女メイドなんて、現実にいるわけがない。
ミツキの思考は、そこまで現実離れしていないのである。
そういうのはファンタジーでしか存在しない。
自分が今置かれているこのおかしな状況は、まず間違いなく夢だろう。
そう思う程度には現実主義なのである。

(さて、どうしようかな)

これが夢だというのは多分間違いない。
だからといって、何が出来るか。
答えはごく簡単。
何も出来ない。
夢ならば、目が覚めるまで待つしかない。
それがミツキの出した結論だった。

「プルちゃん」

「はい、なんでございましょう?」

相変わらず無表情のワルプルギスに、ニッコリと笑いかける。

「プルちゃんは私のお世話を命じられてるのよね?」

「さようでございます」

ワルプルギスの返答に、ミツキは少しだけ考え、言った。

「じゃあプルちゃん、良かったら私の友達になってくれない?」

「は?友達、でございますか?」

「そ。だってほら、私、ここから当分出られないんでしょ。だったら、どうせだからプルちゃんと仲良くなりたいなーって。ダメ?」

「ダメ、と申しますか、その、わたくしはあくまでメイドですので。ミツキ様のご意志に反する事は出来ません」

やっぱり無表情のままそう答えたワルプルギスに、ミツキはニッコリと笑いかけた。

「ん、そんな強制的なものじゃないの。ただね、私はプルちゃんと出来るだけ仲良くしたいだけ。そんで、プルとゃんにも私と一緒にいて楽しんでもらえたらいいなって。そう思ってるの」

「楽しむ、でございますか?」

「そう。あのね、この夢がいつ覚めるのか分からないけど、どうせ夢なら楽しく過ごしたい。だから、プルちゃんとも仲良くなりたいなーって。ただそれだけなんだ」

ニコニコと語りかけられ、ワルプルギスは無表情のまま、しばし沈黙し、やがて小さくため息を吐き、言った。

「わかりました。善処致します」

「ん、ありがと。それじゃ、あらためて。これからよろしくね。プルちゃん」

差し出された手を、ワルプルギスはおそるおそる握り返した。
本当に変わったご主人だ。
そう思いながら。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

処理中です...