16 / 25
4章 僕は骨折り損で儲けもの
16.その能力は凶と出るか吉と出るか。と、その領主は言った。
しおりを挟む
私は思考する。
人間と魔の者の間で繰り返される大規模な攻防の歴史。今なお続く果てのない争い。
その戦乱のさなか突如現れる神がかった者たち。……歴史が大きく動く時、彼らが現れる。いや、彼らが歴史を動かすのかもしれない。時に魔を滅する勇者として、時に人を滅ぼす魔王として。彼らは表裏一体のように現れて、争い、そして、どちらかが散る。
人を救うか魔を導くか、違いはあれど彼らがもたらすのは一時の平和、一時の破滅。百年もすれば、また再び繰り返される不毛の戦い。
(今は、人間との戦いも膠着状態が続いているが、果ての大地に魔王が生まれたと聞く……)
魔王という種族は定期的に世界に生まれてくる力ある魔の者だ。彼らはその力を振るい、戦うのだ。魔王は戦うために生まれ、戦うことを好む。例外は存在しない。戦うからこそ魔王なのであり、力あるからこそ王なのだ。
魔王と同等以上の力があろうと戦いを望まぬ魔の者は、町で静かに暮らす。表舞台から身を引いた私も、その部類に入るだろう。
一方、勇者は大きく分けて2種類いる。魔王を倒したため勇者の称号を得た無名の者と、魔王と同じく人間の中に時折生まれる力ある者だ。前者は魔を倒すことを目標とし、自分を磨き、そのために命をかけることができる努力の者。後者は前者のような志を持つ者もいるが、力あるがゆえに求められ、望まぬ戦いを強いられる悲運な者も多いと聞く。
(やはり人間は愚かだ。戦いを望まぬ者に命を賭させるとは……)
力ある人間という言葉に、私はふと弟子を思う。
彼は力ある人間だろう。扱える魔法はとにかく、思想が思想なら、魔王と対するに値する「勇者」としての素質がある。
しかし彼は今や魔の者とともに生きている。そんな彼が勇者として魔王を討つ存在になることは、……いや、あれは骨以外に興味がない。骨ではない人間や魔の者は、すべて等しく関心がない。彼は、人間だろうと魔の者だろうと関係なく、敵と思えば排除するだろう。彼は差別的であり、非常に平等だ。
(ツトムは何者なのだろうか)
今やツトムは、ほとんどの骨に命を吹き込めるほどに成長した。しかし、骨が関わらない魔法は、からきしと言わないまでも、いまいち成長が芳しくない。ここまで、特化するのもめずらしいことである。
彼は「これは僕の骨への愛の結晶ですよ」と言って、不得意な魔法が多いにもかかわらず、まったく落胆しない。
他人との差異や見聞を気にしてしまう人間であれば、皆が使えるはずの基本的な魔法が不得意だと知れば、落ちこぼれの役立たずだと落胆しそうなものであるが。
その現実を受け止め、自身の得意な魔法を磨き、ただひたすらに骨を愛する。
人間というには魔に染まりすぎているが、どんな人間よりも人間らしく欲に忠実だ。骨の事となると情熱的に語り、ほしい骨があれば冷血に生物を屠る。死体を操る魔術の詠唱の破棄は三日で身につけ、生み出す骨の練度も高い。骨に関して言えば比類なき才能だ。
しかも、彼は骨を魅了する能力でも持っているのだろうか、私の配下の骨たちの中に、ツトムのために尽くそうとする者たちがいるのだ。彼は主ではないのに、だ。
私はそのような命令をしたわけではない。ただ弟子であり、友人であると紹介したにすぎない。だのに骨たちは自発的に彼のために珍しい生物の屍骸を贈ったり、その身を一晩預けたりしているのだ。
近いうちに、世界は動く。
長い時を生きた私の勘がそう告げる。
今はまだ私の元で、ひっそりと修業しているが、この地に身をおいている限り、いずれ巻き込まれるだろう。魔と人の宿命に。
その時、ツトムは、どう動くだろうか。
彼は異質だ。彼という存在はこの世界にどんな影響をもたらすのだろうか。
その能力は凶と出るか吉と出るか。
人間と魔の者の間で繰り返される大規模な攻防の歴史。今なお続く果てのない争い。
その戦乱のさなか突如現れる神がかった者たち。……歴史が大きく動く時、彼らが現れる。いや、彼らが歴史を動かすのかもしれない。時に魔を滅する勇者として、時に人を滅ぼす魔王として。彼らは表裏一体のように現れて、争い、そして、どちらかが散る。
人を救うか魔を導くか、違いはあれど彼らがもたらすのは一時の平和、一時の破滅。百年もすれば、また再び繰り返される不毛の戦い。
(今は、人間との戦いも膠着状態が続いているが、果ての大地に魔王が生まれたと聞く……)
魔王という種族は定期的に世界に生まれてくる力ある魔の者だ。彼らはその力を振るい、戦うのだ。魔王は戦うために生まれ、戦うことを好む。例外は存在しない。戦うからこそ魔王なのであり、力あるからこそ王なのだ。
魔王と同等以上の力があろうと戦いを望まぬ魔の者は、町で静かに暮らす。表舞台から身を引いた私も、その部類に入るだろう。
一方、勇者は大きく分けて2種類いる。魔王を倒したため勇者の称号を得た無名の者と、魔王と同じく人間の中に時折生まれる力ある者だ。前者は魔を倒すことを目標とし、自分を磨き、そのために命をかけることができる努力の者。後者は前者のような志を持つ者もいるが、力あるがゆえに求められ、望まぬ戦いを強いられる悲運な者も多いと聞く。
(やはり人間は愚かだ。戦いを望まぬ者に命を賭させるとは……)
力ある人間という言葉に、私はふと弟子を思う。
彼は力ある人間だろう。扱える魔法はとにかく、思想が思想なら、魔王と対するに値する「勇者」としての素質がある。
しかし彼は今や魔の者とともに生きている。そんな彼が勇者として魔王を討つ存在になることは、……いや、あれは骨以外に興味がない。骨ではない人間や魔の者は、すべて等しく関心がない。彼は、人間だろうと魔の者だろうと関係なく、敵と思えば排除するだろう。彼は差別的であり、非常に平等だ。
(ツトムは何者なのだろうか)
今やツトムは、ほとんどの骨に命を吹き込めるほどに成長した。しかし、骨が関わらない魔法は、からきしと言わないまでも、いまいち成長が芳しくない。ここまで、特化するのもめずらしいことである。
彼は「これは僕の骨への愛の結晶ですよ」と言って、不得意な魔法が多いにもかかわらず、まったく落胆しない。
他人との差異や見聞を気にしてしまう人間であれば、皆が使えるはずの基本的な魔法が不得意だと知れば、落ちこぼれの役立たずだと落胆しそうなものであるが。
その現実を受け止め、自身の得意な魔法を磨き、ただひたすらに骨を愛する。
人間というには魔に染まりすぎているが、どんな人間よりも人間らしく欲に忠実だ。骨の事となると情熱的に語り、ほしい骨があれば冷血に生物を屠る。死体を操る魔術の詠唱の破棄は三日で身につけ、生み出す骨の練度も高い。骨に関して言えば比類なき才能だ。
しかも、彼は骨を魅了する能力でも持っているのだろうか、私の配下の骨たちの中に、ツトムのために尽くそうとする者たちがいるのだ。彼は主ではないのに、だ。
私はそのような命令をしたわけではない。ただ弟子であり、友人であると紹介したにすぎない。だのに骨たちは自発的に彼のために珍しい生物の屍骸を贈ったり、その身を一晩預けたりしているのだ。
近いうちに、世界は動く。
長い時を生きた私の勘がそう告げる。
今はまだ私の元で、ひっそりと修業しているが、この地に身をおいている限り、いずれ巻き込まれるだろう。魔と人の宿命に。
その時、ツトムは、どう動くだろうか。
彼は異質だ。彼という存在はこの世界にどんな影響をもたらすのだろうか。
その能力は凶と出るか吉と出るか。
0
あなたにおすすめの小説
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
真実の愛は水晶の中に
立木
恋愛
学園の卒業を祝うパーティーの最中、レイシア・マレーニ侯爵令嬢は第三王子とピンク髪の女、その取り巻きたちによって断罪されようとしていた。
しかし断罪劇は思わぬ方向へ進んでいく。
※AIイラスト使用
※「なろう」にも重複投稿しています。
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
思いを込めてあなたに贈る
あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる