僕は骨が好きだ。大好きだ!

まいまい@”

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4章 僕は骨折り損で儲けもの

20.僕は骨のために戦います、と、その青年は言った。

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 僕は骨が好きだ。
 たとえ魔王が本格的に人間たちと戦いを始めたとしても、僕には関係がないと思いたかった。骨たちと、優雅で平和な生活を送りたかった。
 その平凡な日常のため、僕の平穏のために早くその戦が終わってほしいものだと、そう強く思った――


 赤い絨毯の終着点には豪華な椅子、それに座った迫力ある幼女やみがいた。それが魔王だ。

「ほう、主がツトムか」
 紅玉のような赤い目が、僕をとらえている。闇のような不気味な魔力は、領主様の比ではない。さすが魔王といったところだろうか、そのあふれんばかりの存在感が半端ない。見た目が幼女、ということもあり、そのギャップも半端ない。
 しかし、幼い外見に騙されたらダメだと、僕の勘が警告を告げる。

「はい、魔王様。お会いできて光栄です」
 僕は無難に挨拶をする。

「人間の男は若い女の姿だと油断すると聞いていたが、しかし、主にはあまり効果がないようだな」
 幼女の姿をした魔王はけらけらと笑う。これは魔王の単なる戯れなのだろうと、僕は思った。

「見た目がどうであろうと、あふれんばかりの闇をまとう以上、只者ではないと感じています」
「くくく、主は人間にしては、惑わされぬのだな。そんなに固くならずとも良いぞ」

「あ……はい」
 実は僕はさほど緊張はしていなかった。確かに威圧はすごいが、それ以上に魔王が姿を変える時に起こるであろう骨の変化について、非常に興味が沸いており、そのうずうずを我慢するので精いっぱいだったのだ。

「ツトムよ。今後も我々のために戦ってくれるな」
 魔王はそう確認を取るが、僕は彼らのために戦うつもりは最初からなかった。

「魔の者というよりも……正直に言うと、骨は魔の者に属しているので、その延長線で人間の敵になっただけです。僕は骨のために戦ってきました。そして、それは今後も変わらないと思います」
 僕はそう断言する。

「我らよりも骨か」
 魔王という者は、器がでかい。というよりも、珍しいモノを見るようなそんな笑みで僕を見ていた。

「申し訳ないですが、僕は魔王様よりも骨を優先します」
 この魔王になら、僕の気持ちを正直に言っても大丈夫だという確信があった。


「魔に寝返った人間が、偉そうに」
「魔王様より、骨とは。何を言うか」
 ひそひそと声が聞こえる。僕の宣言が気に食わないらしい。
 彼らから見れば僕は普通の人間。ただそれだけで一部の魔の者から、あまりよく思われていない。そのうえ、彼らの崇める魔王のためには働かないと言うのだ。彼らの心中は穏やかではないだろう。

 しかし、彼らは人間を裏切ったと言うが、そもそもの話、僕にはそういった意識はない。この世界の人間とは姿が似ているだけで、それ以外には本当に何の縁もないと思っている。
 何か友好的な出会いがひとつでもあれば、違っていたのかもしれないが、そのような事はなかったのだ。

 この世界に来て最初に出会った人間は、骨人を襲っていた。その後も、出会う人間すべて、僕が骨人を連れているのを見るや否や襲ってくる。姿が似ているだけの種族から、そういう仕打ちを受け、それでも同じ人間だと思えるほど僕は聖人ではない。
 さらに言えば、これが地球で日本であったのなら、僕が骨人を連れて歩いていても、問答無用で襲ってくる者はないと言える自信はある。それどころか、つぶやくネットワークなどで、動く骨に出会えた感動を拡散される可能性が高い。骨のすばらしさを共有できるかもしれないのだ。
 奇異と好奇のまなざしで見られるのは、それはそれで迷惑だが、殺伐とした敵対関係になるよりは、はるかに良い関係だと言えよう。
 姿こそ地球の人間とよく似ているが、こういった意味でも、地球人とこの世界の人間は、やはり別のもの。到底、仲よくできるはずもなかった。


「僕は骨のために生きています。骨を敵とみなすこの世界の人間たちは、仲間ではありません。そう思ったこともありません。僕の敵です。それだけは誓えます」
 僕は強い意思を持ってそう宣言する。

「くくく、それは何よりだ。これからも、骨のために戦うが良い。活躍を期待しているぞ」
 魔王はそういうと、退出した。


 魔王との謁見後、僕は魔王軍の一角を任されることになった。僕の意向で骨のみで構成された部隊だ。僕を妬む者からは、最弱と言われていたが、僕はそれでも良かった。
 骨ではないものの言うことなどいちいち気にしていたら、きりがないからだ。

 これからは、骨以外の種族と合同で人間たちと戦うことになる。現場には無論、僕以外の部隊もあり、骨も雑兵として多くいた。

「がんばろうね」
 たまたま見かけた別部隊の骨人に語りかけるが、返事はない。彼らには生気がない。
 骨は単なる道具でしかない、彼もそのひとつなのである。
 それが僕には少しだけ悲しかった。
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