明けぬ夜には翡翠色の灯火を~愛を知らないヴァンパイアが愛を知ったら溺愛されるようになりました~

あんみつ~白玉をそえて~

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久々の食事

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それから1週間、リエルは働き続けた。まずはこの屋敷を綺麗にするといって掃除を始め、同時に俺に生活リズムを合わせ始めた。合間合間、彼のいれる茶を飲みながら、彼自身のことを聞いた。両親を早くに亡くしている事。妹がいるが、一年前に嫁いだこと。そんなそもそもの生い立ちから、料理が好きだという些細な一面まで。自分から話しかけてばかりいるのに、ずっと幸せそうに笑っているところが印象的だった。

すっかり日常となった真夜中のある日のティータイム、彼にしては珍しく歯切れの悪い調子で、彼は私に話しかけてきた。

「あの、ルイさん」

なんだと短く返事をするも、なかなか話出さない。初対面の俺相手に一緒に暮らそうなどと言ったのに、なんて思いもするが、大人しく待つ。相手のリズムに合わせる、なんて、彼と暮らし始めてから、久しぶりに思い出した、他人と関わる時の感覚のひとつだ。

「前、人間の料理を食べはすると言ったじゃないですか」
「そうだな」
「だったら、その、これ……よかったら食べてほしいなって」

おずおずと差し出されたのは皿に盛られたクッキー。そういえば人間は茶とともに菓子を食すという、なるほど、そういう事か。

「もらおう」

サクサクと小気味良い音を立てるクッキー。舌の上でほろりと溶ける感触。程よく甘酸っぱい、表面に塗られた木苺のジャムは、この屋敷の庭でとったものだろうか。
数百年ぶりの人間の料理は、想像以上に美味だった。生きる上で必要でないからと切り捨てていたのが、少し勿体なく思うほどだ。しかし数百年前に既にあらゆる料理を食し、美味を堪能したはずだったのだが。まあ、時の流れと共に食事の質も上がるものか。考え、結果妙に納得しているうちにあっという間にクッキーが皿から消える。
リエルが驚いたような顔を私に向ける。

「とても美味だった。よければ食事も作ってくれないか」

頭に共同生活にあたってのルール3が浮かんだのは否定できない。だが、食べてみたいと思ったのも事実だった。

「……!はい、もちろんです!今日からお出ししますね!」

いつも笑顔のリエルが少し照れくさそうに、けれどやっぱり口元は緩んだ顔で、頷いた。
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