明けぬ夜には翡翠色の灯火を~愛を知らないヴァンパイアが愛を知ったら溺愛されるようになりました~

あんみつ~白玉をそえて~

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最期

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それからは、早かった。いや、それからも。幸福な時間は瞬く間に過ぎ去って行く。時の流れは残酷だ。私の何一つ変わらない見た目とは裏腹に、リエルは少しずつ、歳を重ねていく。
余命宣告から1ヶ月。リエルは今まさに、最期の時を迎えようとしていた。

「ルイさ、げほっ、」
「もういい、無理に喋るな……!」

ヴァンパイアは病にかからない。故に、その苦しみを味わえない。体感してなんだと言えど、それが滅法悔しかった。
私の必死の制止に静かに首を振って、リエルは話し始めた。辛いだろうに、苦しいだろうに。それでも彼は、弱々しくも話し出した。

「ルイさん、僕を受け入れてくれて、僕を愛してくれて、ありがとうございます。あなたは僕が思っていた以上に美しくて、優しくて、素敵な人でした。そんなあなたに愛してもらえたことが、最初は本当に信じられなくて。でも、それを信じさせてくれたのもあなたでした。大好きです、愛してます……そんな言葉じゃ足りないくらい、深く、深く。ルイさん、ありがとうございました」

まるで最後の力を振り絞るように、リエルがそっと腕をあげて、私の頬に触れた。どんな時も変わらなかった、あの笑顔で、笑った。

「僕は、幸せでした」

ぽとりと、腕が落ちる。力が、抜ける。彼の命が、消えた。
次に私に触れたのは、涙。己が何百年と零さなかった、涙。それが今では、どうだろう。堰を切ったように、ぼろぼろと溢れ出て、止まらない。止められない。

「そうか、これが……悲しみか」

一度自覚してしまえば、もう後は、為すがままだった。

「リエルっ、リエルっ……!!!」

何度呼ぼうと、言葉は返ってこない。笑顔は返ってこない。でも、それでも。呼ばずにはいられなかった。縋りつかずには、いられなかった。

「……リエル、っ」

私はお前との約束を果たそう。お前に、お前の人生の棺を作ろう。

それからは、ただひたすらに、作業に打ち込んだ。何枚ものデザインを書きなぐってはああでもないいこうでもないと破っては捨て、破っては捨て。

「お前が愛したもの……好きだったもの……」

植物、料理、猫。
一生涯を共にすごしたというのに、思い出すのは取り留めのない会話ばかり。
必死に記憶を手繰る中、ひとつ、気がつく。

「……くっ、ふふっ!ははっ!!!」

そうだ、そうだ、お前が一番愛したもの。それは他でもない

「私自身ではないか……!」

通りでどの案もしっくり来なかったのだと合点がいく。久々に、声が出た。お前がいた頃のように、自然と笑いが漏れた。

「お前とともに眠るのも、悪くない」

それからは、早かった。
遺体の防腐魔法を強化して、己の死期を待つ日々。葬儀は、棺を作るうちに知り合った葬儀屋に話を通す。

「リエル……愛しているよ」

もう何度目か分からない口付けを、酷く愛おしく思った。
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