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戦死

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「お前は、戦死したと……!!!」
「正確には死にかけた、だよ。死んでいない。でもその治療で寝込んでて連絡がつかなかったみたいでね。それで僕は死んだことになっていた、というわけさ」

彼はまだ、私に話しかけていた。旦那様じゃなく、私に言葉を投げかけていた。

「し、しかしそんな連絡どこからも……!」
「噂の「リサちゃん」とやらと一緒にいて、仕事サボってたからじゃない?僕はきちんと職場に人を送ったさ。お前以外の家族にももう会った」
「そ、そんな、旦那様、仕事に行っていたのではなかったのですか……?」

思わず漏れ出た声に、旦那様は罰が悪そうな顔をするでもなく、鼻を鳴らした。

「当たり前だろう。彼女が優先だ」
「そんなこといけません!!!あなたの仕事のおかげで苦しむ民が1人でも多く救えるかもしれないのに……!」
「うるさい。お前に口答えする権利を許した覚えはない」

ぱんと、お兄様が手を叩いた。

「はい、言い争いはここまで」
「!すみません、お兄様がいる前でこんな……」

顔が赤くなる。はしたない。せっかく美しいと言ってくれたのに。これでは言葉を取り消されてもおかしくない。

「いいや、君……サシャって言ったよね、の言い分は正しい。民の税金で暮らしている君がその職務を放棄すること、これは大きな問題だよ。この件について、僕は王に提言するつもりだ」
「は!?」
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