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言いようもない怒り

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「お前……!!!」

言いようもない怒りが、僕を襲った。と同時に、深い自己嫌悪が。僕がギルベルトを煽らなければ。もっとこいつが手を上げる可能性について考慮していれば。
ギルベルトはびくりと肩を震わせた。僕の、僕の最愛の人になんて真似を。そもそもお前と結婚していること自体、許し難いことなのに。お前、お前、お前。

「旦那様」

静かに、ずっと側仕えしてくれている執事が囁いた。

「それ以上殺気をお出しになさるな……こんな方、貴方様が直々に手を下すに値しません」

ああ、そうだ。彼女のためにも、ここはこらえなければ。無理やり笑顔を作る。

「彼女はもらってゆくよ」

ふわりと抱き抱える。軽い。軽すぎて、そこにあるか不安になる。もう一度確かめるようにぎゅっと抱え直して。キスを額に落として。どうやら腰が抜けて立てないらしい弟を置いて、僕はその場を去った。
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