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最推しの食事情

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「無理」

そのまま原作のリーシェンの食事シーンに想いを馳せる。あの時も少し値段を気にしていたのかと思うと涙がこみ上げてきた。その時だ。

「おい、どうした?」

わざわざ顔を上げなくてもわかる。この声は、リーシェンだ。

「具合が悪いなら保健室に行くべきだ。ここでは通行人の邪魔になる」

先ほどまでの決意は何だったのか。体がフリーズして動かない。いやだって向こうから話しかけるとは思わないじゃん!?正論だけど言い方キツい。可愛い。そんな私を見て、彼はどうやら、何も答えられないほど体調が悪いのだと判断したらしい。

「もし動けないなら誰か人を呼ぼう。それか俺が連れて行くが」

ああもう!リーシェンこういうとこだよ?デレが早い……好き……いやでも、そろそろ動かなきゃ怪しまれる。それはわかってる。けれど今この状況で立ち上がれるはずもない。そんな風に悶々としていると、救いの手が差し伸べられた。

「おい、ヴィー、そんなところでどうした?っと、わりぃ。取り込み中だったか?」
「いや、問題ない。こいつの知り合いか。」
「ああ、そうなんだけど、こいつどうしたんだ?」

こんなにもアンジエに感謝したくなったのは初めてだ。感激している私の横で、どうやら状況説明が終わったらしい。その間に私も少し心の整理が済んだ気がする。今なら多分いける。

「そっか、サンキュな!なあ、ヴィー。お前顔めちゃくちゃ赤いし、やっぱ立ち上がるのはきつそうか?肩かすから保健室いくぞ。」

本当に心配してくれているアンジエには申し訳なさを覚えるが、実際動けなかったし、なんて理由をつけて、ゆっくり立ち上がる。

「ありがとうアンジエ。けどもう大丈夫そう。ただの立ち眩みよ。」

あの俺よりも頑丈なお前が?とでも言うような視線を投げかけられるが、知らないふり。

「それに、あなたにも迷惑かけてごめんなさい。あなたもきっと受験者よね?私はヴィヴェルーナで、こっちはアンジエ。あなたの名前を聞いても?」

いわゆる悪役顔でありながらも、必死に感じの良い笑顔を浮かべる。

「ああ、そうだ。あんたらも受験者か。俺はリーシェンだ」
「リーシェンね、覚えたわ。本当にありがとう。あなたと4月に会えることを願ってるわ。じゃっ、アンジエ、そろそろ帰る?」
「ああ、じゃあまたな、リーシェン!」

会話を無理やり最小限に抑えるため、他二人に余計なことを喋る隙を与えず、足早にその場を立ち去る。ファーストコンタクトは最高とまではいかなくとも、変な印象は持たれなかったのではないか。ただ今の私の頭は成否なんかよりも、リーシェンと関われた喜びでいっぱいだった。さっきまでのリーシェンとの会話を思い出してはにやけてしまう。私のテンションは最高潮に達していた。
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