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この世界のシステム

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入学式も無事終わって数分。自分の寮へと向かう時間がやってきた。今日は入学式に加えて寮部屋の確認など、学園生活を送るために必要なことを一通りチェックする日となっている。
さて、私はというと、入学式が終わった今からは、フィリちゃんと出会うため動くことになる。ちなみに原作でもここが2人のファーストコンタクトとなるのだが、今回、私はレフラルともこの機会に会うつもりでいる。そうでもしなければ、前も言った通り、最悪の出会い方になるからだ。

だが、ずっと前から懸念が1つ、私にはあった。本来起こるはずのイベントの内容を無理やり曲げたのなら、それによっても、新しいルートが構築されるのではないか、という点だ。これから先は、ゲームで描かれていないこれまでと違う。本来、私がレフラルをいじめる、というのは共通ルートでの出来事で、回避しようがないイベントの1つだ。それを今、私は覆そうとしている。私は彼らほど心が強くない。いじめたら、必然的に私はフィリちゃんからも、彼らからも嫌われる。それはどうしても耐えられない。自分が幸せでなければ、他人の幸せも喜べない。
このゲームはシステム上、ある時点で一番好感度が高く、さらに入るための必須イベントをこなしているキャラクターのルートに入る。たとえば、アンジエルートに入りたいなら、アンジエからの好感度を一番高くしておくことと、”ヴィーにいじめられているのをアンジエに発見してもらう”というイベントを起こすことの二つが必要。だから極論、この二つさえ満たしていればルートに入れる。まあ、それだとつまらない上に、逆によほどの運がなければ出来ないので、たいていはその他にも、人柄が知れるイベントだったりとか、生い立ちが知れるイベントが発生するようになっている。
さて、ここで重要なのが、”その2つさえこなしておけば、そのルートに入れる”ということだ。好感度の上げ方は自由。さらに、リーシェンルートに入るためのキーイベントは、”フィリちゃんが養女と知らされる”なのだ。このイベントに、アンジエの時とは違い、ヴィーは一切関与しておらず、その後も、ヴィーがこのルートでストーリーの中枢に関わることはない。リーシェンルートが安全といったのは、こういうことでもある。そして、効率のよい好感度の上げ方から好みのプレゼントまで私は熟知している。要するに、リーシェンルートに入りさえすれば、この学校生活は成功したも同然で、ルートに入るまでのイベントは、キーイベ以外、システム上、どうなったっていいはずなのだ。
しかしもちろん、前世の記憶がある、という時点で、この世界はどこか狂ってしまっていて、既に新しいルートを私達は歩んでしまっている、という可能性は否定しきれない。それに、今から私が起こそうとする行動によって、新しいイベントやルートが出来てしまうことは、十分ありうる。けれどそれならなおさら、全員と仲良くしておくべきだと私は思う。何かあったときに、疑われたりしない様に。

とにかく、そんな理由からも私は2人まとめて会ってしまいたいのだ。
談笑後、本来の指示のもと、それぞれ男子寮と女子寮へ向かうのだが、フィリちゃんが別れた後、道に迷ってしまう。そしてそこでヴィーと遭遇するのだ。これが本来の道筋。だが今回私が狙うは、前も言った通り、そのおしゃべりしている最中である。そこに道に迷った風に乱入し、フィリちゃんと一緒に寮に向かう。ちなみにマップは全把握しているので、同時にフィリちゃんの迷子イベントも防げるというわけだ。そのためにも急がなければならないのだが、残念ながら出入口が私と彼らでは別らしい。大丈夫だとは思いつつも、私は走った。
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