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第2章

届かなかった手

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「ーー日記!!!羽村美穂音!!!」

目の前の彼女がそう叫んで。触れ合おうとした指から、ばちりと、電気のようなものが全身を駆け巡って。それで、意識を数秒失って。次に聞こえてきたのは、レウザンの声だった。

「ルディー、おい、ルディー!!!」
「あ……ヴィーは!?」

わからん、あの不気味な声とサイレンみたいなものが鳴ってーー後の言葉は、聞こえなかった。彼女に届かなかった。それだけわかった。

王宮に戻って、彼女が泊まっていた部屋の引き出しを片っ端から開ける。みんなが固唾をのんで見守っていることだけ、背後で感じた。

「あった……!!!」

古びた日記を見つける。かなり年季の入った代物だ。恐る恐る、言葉を発す。

「……ハネムラミホネ」

かちゃりと、鍵が開く感覚がした。
1ページ開いて、拡大する。後ろのみんなに見えるように。そこに書かれていたのは、およそ突拍子もないことだった。
彼女の8年が詰まった日記。読み終えたみんなの顔は、信じられない、その一色だった。きっと、オレもそう。

彼女の話を信じるなら、ここはゲームの世界。彼女は、異世界から来たことになる。まず、その前提から意味不明だ。だが、彼女は7歳の時点で、オレ達の大半と出会う前から、オレ達の存在を予測していた。起こった出来事ーー彼女の言葉をかりるなら、イベント、もそう。全く違わないと、皆が口々に言った。

「ヴィーは、全部知ってた……?」
「いや、彼女の日記も後半からは、何かがおかしいと主張している……だが、これだけの情報があれば、あの案もすぐに思いつけるはずだ」
「というより、大筋はその「原作」ってやつと変わらない」

言葉がとびかい、困惑交じりの議論が続く。でもそれも、ぽつりぽつりと小さくなっていって。肉体的な疲労も、精神的な疲労もあって。結局その日、オレ達はなし崩し的に解散することになった。日記は、オレが所有することになった。

「ヴィー、キミは……」

本来なら、オレとは結ばれないはずだったんだね。でも、オレとキミは結ばれた。オレはこの手を離す気なんてない。でもキミ、最初はオレのこと嫌ってたんだ。ハハッ、そんな気はしてた。でも、それでもキミの言葉は暖かかった。それはきっとキミの性格なんだろうね……どんな過去があろうと、キミはキミだ。キミに会いたい。もう一度会いたいよ、ヴィー。
ヴィーのお父さんにも、この日記を見せなきゃーーそう思いつつも、オレは眠気に抗えなかった。
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