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眩暈のころ
12. 中学三年のころ(二学期) 10
しおりを挟む確か二学期だったと記憶しているが、私は英語の時間に意識を失い、救急車で病院に運ばれて、随分長いこと学校を休んだ。
体の具合は悪くなかったし、そんなに鬱屈を溜め込んでいたつもりもない。少なくとも自覚はなかったから、もっともらしい病名をつけられたのに驚き、お医者が意固地になって病気に仕立てただけではないかと訝った。
私の両親は共通して私を過保護気味に育てていたので、娘の状態を切実に捉えていたのかいないのか。兎に角、甘やかし放題で、私も遠慮なく甘ったれるまま、退院してからもズル休みをつづけた。
家で臥せっていてもすることはないし、いいかげん退屈したので、勉強は嫌だけれど、寝すぎの弱った脚でふらふら登校してみたら、近海がひどく心配してくれていた様子で、偽の病気だったと白状するのも憚られ、私はすっかり狼狽してしまった。
「夜中に本を読んでいると」近海は私を見下ろしながら、真顔で云った。「背後に誰だか立っているような気配がしてね。青木がお別れの挨拶に来たんじゃないかって、僕はじっとしていられなかったよ。電話をしようか、家を訪ねようか迷ったけれど、本当になったら困るから、部屋で我慢していたんだ」
私は益々たじろぎ、
「それはどうも、痛み入ります。お陰様で回復いたしまして……」と、ありきたりな文句で言葉を濁した。
「じゃあ、今日から大丈夫かな」
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