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fin
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五月下旬の日曜日。
あかさは彫刻前でちかやとしおんが来るのを待っていた。
暑い日差しに夏を感じ少しうんざりして、空を見上げるあかさは、視線を目の前の彫刻に移した。
虹色のそれはきらめいたり光ったりせず、ただあかさに捉えがたい印象をもたらしていた。
でも、今日はそれで良い。
むしろありがたいと思っていた。
「歩くの早い」
「もう足が疲れたぁ」
対照的な二人の表情にあかさは自然と笑顔になった。
「あー、戻しそう」
「大丈夫?あれくらいで参ってるから小さいんだぞ、いろいろと」
青い顔で怒るしおんも、それを見て引きつった顔のちかやも、やはりすぐに笑顔に戻る。
久しぶりのトリップにはふさわしいすがすがしい昼下がり。
「じゃぁ集まろう」
彫刻の前に集まる三人。
しおんが言う。
「またケーキとか想像してるんじゃない?」
「虹色ケーキか。どんな味かなぁ」
「…、もう食べられない。見たくもない」
「良いじゃんか、私の誕生パーティーなんだから」
二人のやり取りを見てふふっと笑うあかさは、
「それでは」
と、声を掛け、頷く二人は手をつないで三人輪になった。
軽く息を吸って、あかさが言う。
「行くよ、フジ」
間の抜けた猫の鳴き声が一つ、聞こえた気がした。
あかさは彫刻前でちかやとしおんが来るのを待っていた。
暑い日差しに夏を感じ少しうんざりして、空を見上げるあかさは、視線を目の前の彫刻に移した。
虹色のそれはきらめいたり光ったりせず、ただあかさに捉えがたい印象をもたらしていた。
でも、今日はそれで良い。
むしろありがたいと思っていた。
「歩くの早い」
「もう足が疲れたぁ」
対照的な二人の表情にあかさは自然と笑顔になった。
「あー、戻しそう」
「大丈夫?あれくらいで参ってるから小さいんだぞ、いろいろと」
青い顔で怒るしおんも、それを見て引きつった顔のちかやも、やはりすぐに笑顔に戻る。
久しぶりのトリップにはふさわしいすがすがしい昼下がり。
「じゃぁ集まろう」
彫刻の前に集まる三人。
しおんが言う。
「またケーキとか想像してるんじゃない?」
「虹色ケーキか。どんな味かなぁ」
「…、もう食べられない。見たくもない」
「良いじゃんか、私の誕生パーティーなんだから」
二人のやり取りを見てふふっと笑うあかさは、
「それでは」
と、声を掛け、頷く二人は手をつないで三人輪になった。
軽く息を吸って、あかさが言う。
「行くよ、フジ」
間の抜けた猫の鳴き声が一つ、聞こえた気がした。
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