16 / 28
日間ブースト
しおりを挟む
翌日は始業式だった。
今日から高校二年生。
俺が通う帝大付属高校は一応進学校なので、今年から本格的に志望校を絞り込んで受験勉強が始まることになる。
とはいっても、今日は一時間ほどの式の後に二時間ぐらいHRがあって、それで終わりだった。
クラスのメンバーもあまり入れ替えはなく、去年と同じ仲間でつるんでいた。
しかし、彼等からは
「この春休み、ずっと用事があるとか言ってたけど、絶対毎日デートだっただろう? 例の女の子と一緒にいるところ、見たぞ!」
と言われ、適当にはぐらかしたのだが、追求は止むことがない。
実は、この日の午後も瞳と図書館で待ち合わせをしていたので、彼等を撒くのが大変だった。
図書館に着くと、瞳は制服姿のままだった。
始業式が終わってすぐ、彼女は友達とサンドイッチの美味しい店で軽く昼食を摂り、そのまま図書館に来たのだという。
「彼氏ができたって疑われて、ごまかすの大変だったのよ」
と照れながら話してくれた。
制服姿を見るのは彼女の祖母の通夜以来二度目だが、ずっと私服姿を見ていたので、新鮮で可愛らしく見えて、幸せな気分になる。
「……明日からは授業が本格的に始まるから、毎日は会えなくなるね……」
残念そうにそう言ってくれるのが、ちょっと嬉しい。
「放課後会うっていうのは無理かな?」
「うん……ウチは門限が厳しいから、今までみたいに何時間も話し込むっていうのは難しそう。小説書く時間も減りそうだし……」
さすがに、今までみたいには自由な時間は取れない。
「まあ、仕方無いな……でも、土日にはまた会えるんだろう?」
「うん、それは大丈夫。それに、メールとかなら毎日送れるしね」
笑顔でそう言ってくれる美少女の存在に、心が躍るのを感じた。
瞳が本当に恋人になってくれたなら、どれだけ幸せなことか……。
しかし、やはり彼女の第一優先事項は、共同執筆している小説のようだ。
すぐにスマホを取り出して、昨夜投稿した話に感想が付いていないか、確認を始めた。
「……あれ? うそ……総合ポイントが400超えてる……」
戸惑ったような瞳の声に、俺も慌てて確認してみた。
「……本当だ、昨日の夜まで350足らずだったのにな……」
詳細を見てみると、ブクマ数は10ほどしか増えていないが、評価ポイントが40ポイント近く入っていた。
感想欄も、
「全く想像していなかった展開で、驚いた!」
とか、
「今後の展開が読めず、目が離せません!」
など、やはり意外な展開が受けたようだ。
「なるほど、あの違和感はこの話の為の伏線だったのですね……完全にやられました!」
と、絶賛してくれたものもある……あ、これヒカルだ。
「昨日の話、ちょっと心配だったけど概ね評判良さそうだな」
「うん、良かった。主人公達の娘を悪役にするの、ちょっと不安だったんだけどね……」
娘と言っても、この時代ではまだ生まれて来ていない存在だ。
そこに時空を絡めた物語の宿命とも言える『タイムパラドックス』の問題が発生しているのだが、実はそれが今後の話のキーとなってくる。
その後の展開を夢中になって話しているうちに、夕方になってしまった。
これまで毎日投稿していたが、今日は瞳の下書きの分量も少なく、俺も修正する時間が取れないため、翌日に持ち越しとなった。
授業が始まれば、平日少しずつ書き貯めて、週末に二話~三話分更新、というペースになりそうだ。
この日はとりあえず、瞳から受け取った、いつもの半分ほどの下書きを俺が推敲して、彼女に返信してそれで終わるつもりだった。
ところが……。
夜寝ようとしていたときに、スマホの着信音が鳴り響いた。
相手は瞳だ。
何事か、と思って出てみると、
「和也君、何か変なの!」
と、妙なテンションの声が聞こえてきた。
「どうした、何かあったのか?」
いつもと違う様子に、俺も身構えてしまう。
「総合ポイントが、550ポイント超えてるの!」
……なんだ、そんなことか、とほっとしたのだが……次の瞬間、ざわっと鳥肌が立つのを感じた。
前日まで、二週間近くかかって350ポイントだったものが、たった一日で550ポイントを超えている。
慌てて俺も確認してみると、PV(アクセス数)が異常な伸びを示していた。
「……日間ブーストがかかっている!」
俺は声を上げた。
「……にっかん……ぶーすと? 何、それ、何なの?」
瞳が、不安そうに、それでいて興奮したように質問してきた――。
今日から高校二年生。
俺が通う帝大付属高校は一応進学校なので、今年から本格的に志望校を絞り込んで受験勉強が始まることになる。
とはいっても、今日は一時間ほどの式の後に二時間ぐらいHRがあって、それで終わりだった。
クラスのメンバーもあまり入れ替えはなく、去年と同じ仲間でつるんでいた。
しかし、彼等からは
「この春休み、ずっと用事があるとか言ってたけど、絶対毎日デートだっただろう? 例の女の子と一緒にいるところ、見たぞ!」
と言われ、適当にはぐらかしたのだが、追求は止むことがない。
実は、この日の午後も瞳と図書館で待ち合わせをしていたので、彼等を撒くのが大変だった。
図書館に着くと、瞳は制服姿のままだった。
始業式が終わってすぐ、彼女は友達とサンドイッチの美味しい店で軽く昼食を摂り、そのまま図書館に来たのだという。
「彼氏ができたって疑われて、ごまかすの大変だったのよ」
と照れながら話してくれた。
制服姿を見るのは彼女の祖母の通夜以来二度目だが、ずっと私服姿を見ていたので、新鮮で可愛らしく見えて、幸せな気分になる。
「……明日からは授業が本格的に始まるから、毎日は会えなくなるね……」
残念そうにそう言ってくれるのが、ちょっと嬉しい。
「放課後会うっていうのは無理かな?」
「うん……ウチは門限が厳しいから、今までみたいに何時間も話し込むっていうのは難しそう。小説書く時間も減りそうだし……」
さすがに、今までみたいには自由な時間は取れない。
「まあ、仕方無いな……でも、土日にはまた会えるんだろう?」
「うん、それは大丈夫。それに、メールとかなら毎日送れるしね」
笑顔でそう言ってくれる美少女の存在に、心が躍るのを感じた。
瞳が本当に恋人になってくれたなら、どれだけ幸せなことか……。
しかし、やはり彼女の第一優先事項は、共同執筆している小説のようだ。
すぐにスマホを取り出して、昨夜投稿した話に感想が付いていないか、確認を始めた。
「……あれ? うそ……総合ポイントが400超えてる……」
戸惑ったような瞳の声に、俺も慌てて確認してみた。
「……本当だ、昨日の夜まで350足らずだったのにな……」
詳細を見てみると、ブクマ数は10ほどしか増えていないが、評価ポイントが40ポイント近く入っていた。
感想欄も、
「全く想像していなかった展開で、驚いた!」
とか、
「今後の展開が読めず、目が離せません!」
など、やはり意外な展開が受けたようだ。
「なるほど、あの違和感はこの話の為の伏線だったのですね……完全にやられました!」
と、絶賛してくれたものもある……あ、これヒカルだ。
「昨日の話、ちょっと心配だったけど概ね評判良さそうだな」
「うん、良かった。主人公達の娘を悪役にするの、ちょっと不安だったんだけどね……」
娘と言っても、この時代ではまだ生まれて来ていない存在だ。
そこに時空を絡めた物語の宿命とも言える『タイムパラドックス』の問題が発生しているのだが、実はそれが今後の話のキーとなってくる。
その後の展開を夢中になって話しているうちに、夕方になってしまった。
これまで毎日投稿していたが、今日は瞳の下書きの分量も少なく、俺も修正する時間が取れないため、翌日に持ち越しとなった。
授業が始まれば、平日少しずつ書き貯めて、週末に二話~三話分更新、というペースになりそうだ。
この日はとりあえず、瞳から受け取った、いつもの半分ほどの下書きを俺が推敲して、彼女に返信してそれで終わるつもりだった。
ところが……。
夜寝ようとしていたときに、スマホの着信音が鳴り響いた。
相手は瞳だ。
何事か、と思って出てみると、
「和也君、何か変なの!」
と、妙なテンションの声が聞こえてきた。
「どうした、何かあったのか?」
いつもと違う様子に、俺も身構えてしまう。
「総合ポイントが、550ポイント超えてるの!」
……なんだ、そんなことか、とほっとしたのだが……次の瞬間、ざわっと鳥肌が立つのを感じた。
前日まで、二週間近くかかって350ポイントだったものが、たった一日で550ポイントを超えている。
慌てて俺も確認してみると、PV(アクセス数)が異常な伸びを示していた。
「……日間ブーストがかかっている!」
俺は声を上げた。
「……にっかん……ぶーすと? 何、それ、何なの?」
瞳が、不安そうに、それでいて興奮したように質問してきた――。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる