毒の美少女の物語 ~緊急搬送された病院での奇跡の出会い~

エール

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日間ブースト

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 翌日は始業式だった。

 今日から高校二年生。
 俺が通う帝大付属高校は一応進学校なので、今年から本格的に志望校を絞り込んで受験勉強が始まることになる。

 とはいっても、今日は一時間ほどの式の後に二時間ぐらいHRがあって、それで終わりだった。
 クラスのメンバーもあまり入れ替えはなく、去年と同じ仲間でつるんでいた。

 しかし、彼等からは

「この春休み、ずっと用事があるとか言ってたけど、絶対毎日デートだっただろう? 例の女の子と一緒にいるところ、見たぞ!」

 と言われ、適当にはぐらかしたのだが、追求は止むことがない。
 実は、この日の午後も瞳と図書館で待ち合わせをしていたので、彼等を撒くのが大変だった。

 図書館に着くと、瞳は制服姿のままだった。
 始業式が終わってすぐ、彼女は友達とサンドイッチの美味しい店で軽く昼食を摂り、そのまま図書館に来たのだという。

「彼氏ができたって疑われて、ごまかすの大変だったのよ」

 と照れながら話してくれた。

 制服姿を見るのは彼女の祖母の通夜以来二度目だが、ずっと私服姿を見ていたので、新鮮で可愛らしく見えて、幸せな気分になる。

「……明日からは授業が本格的に始まるから、毎日は会えなくなるね……」

 残念そうにそう言ってくれるのが、ちょっと嬉しい。

「放課後会うっていうのは無理かな?」

「うん……ウチは門限が厳しいから、今までみたいに何時間も話し込むっていうのは難しそう。小説書く時間も減りそうだし……」

 さすがに、今までみたいには自由な時間は取れない。

「まあ、仕方無いな……でも、土日にはまた会えるんだろう?」

「うん、それは大丈夫。それに、メールとかなら毎日送れるしね」

 笑顔でそう言ってくれる美少女の存在に、心が躍るのを感じた。
 瞳が本当に恋人になってくれたなら、どれだけ幸せなことか……。

 しかし、やはり彼女の第一優先事項は、共同執筆している小説のようだ。 
 すぐにスマホを取り出して、昨夜投稿した話に感想が付いていないか、確認を始めた。

「……あれ? うそ……総合ポイントが400超えてる……」

 戸惑ったような瞳の声に、俺も慌てて確認してみた。

「……本当だ、昨日の夜まで350足らずだったのにな……」

 詳細を見てみると、ブクマ数は10ほどしか増えていないが、評価ポイントが40ポイント近く入っていた。
 感想欄も、

「全く想像していなかった展開で、驚いた!」

 とか、

「今後の展開が読めず、目が離せません!」

 など、やはり意外な展開が受けたようだ。

「なるほど、あの違和感はこの話の為の伏線だったのですね……完全にやられました!」

 と、絶賛してくれたものもある……あ、これヒカルだ。

「昨日の話、ちょっと心配だったけど概ね評判良さそうだな」

「うん、良かった。主人公達の娘を悪役にするの、ちょっと不安だったんだけどね……」

 娘と言っても、この時代ではまだ生まれて来ていない存在だ。
 そこに時空を絡めた物語の宿命とも言える『タイムパラドックス』の問題が発生しているのだが、実はそれが今後の話のキーとなってくる。

 その後の展開を夢中になって話しているうちに、夕方になってしまった。
 これまで毎日投稿していたが、今日は瞳の下書きの分量も少なく、俺も修正する時間が取れないため、翌日に持ち越しとなった。

 授業が始まれば、平日少しずつ書き貯めて、週末に二話~三話分更新、というペースになりそうだ。
 この日はとりあえず、瞳から受け取った、いつもの半分ほどの下書きを俺が推敲して、彼女に返信してそれで終わるつもりだった。

 ところが……。

 夜寝ようとしていたときに、スマホの着信音が鳴り響いた。

 相手は瞳だ。
 何事か、と思って出てみると、

「和也君、何か変なの!」

 と、妙なテンションの声が聞こえてきた。

「どうした、何かあったのか?」

 いつもと違う様子に、俺も身構えてしまう。

「総合ポイントが、550ポイント超えてるの!」

 ……なんだ、そんなことか、とほっとしたのだが……次の瞬間、ざわっと鳥肌が立つのを感じた。
 前日まで、二週間近くかかって350ポイントだったものが、たった一日で550ポイントを超えている。

 慌てて俺も確認してみると、PV(アクセス数)が異常な伸びを示していた。

「……日間ブーストがかかっている!」

 俺は声を上げた。

「……にっかん……ぶーすと? 何、それ、何なの?」

 瞳が、不安そうに、それでいて興奮したように質問してきた――。
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