異世界結婚相談所 ~最高に幸せになれる結婚相手、ご紹介しますっ!~

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(閑話)結婚相談所、再開!(前編)

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※今回は番外編で、本編より少し前、タクヤとユナがいくつかの冒険を終え、一旦サウスバブルの町に戻った頃のお話です。

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 この日、朝一番で『タクヤ結婚相談所』にやってきたのは、二十代前半ぐらいの、全体としては素朴な雰囲気ながら、整った顔立ちの美人さんだった。

 服装も、決して派手ではないが、かといって地味ではなく、垢抜けた雰囲気だ。

 俺としては、結構好感が持てるタイプなのだが、この日もユナが『助手』と称して恋愛相談に参加してきたので、うかつに来客に見とれたりできない。

 ちなみに、ユナは星四つ、超級のハンターで、魔導剣士。
 縁あって、いくつもの大冒険を共にした仲であり、一応、恋人同士? と言えるのかな……。

 ちなみに、俺は制約により、自分の理想の結婚相手は見えない。
 そしてなぜか、ユナの理想の結婚相手も見えない。

 これは、彼女が誰と結婚しても幸せになれないか、あるいは相手が俺だから、制約に引っかかって見えないのかのどちらかなのだが……。

 さて、ほとんどのお客さんの目当ては、もちろん『最高に幸せになれる結婚相手がどんな人なのか』を占ってもらいに来るのだが、この日の客である彼女の場合、『今付き合っている彼氏が、本当に幸せになれる人なのか』を見てもらいに来たようだった。

 ほんの少しだけ、テンションが下がる。

 これは、別に『美人さんに彼氏がいたから落ち込んだ』と言うわけではなく、占い結果がその彼氏でなかった場合、ガッカリさせてしまうのが気の毒だからだ。

 その彼氏に対しても申し訳ない気持ちになる。
 まあ、大抵の場合はそのときの彼氏が最も幸せになれる相手なのだが……。

 なので一応、

「彼氏がいるのなら、占い結果がご期待に添えないことがありますよ」

 と警告したのだが、

「もちろん、それでもかまいません。でも、これで彼が最高のお相手と証明されれば、一生幸せが約束されるのでしょう?」

 と、すでに幸せそうな顔をみせた。
 うん、心の底から相手のことが大好きな、恋する乙女なんだろうな、と、うらやましくすら思った。

 と、背後でコホン、とわざとらしい咳払いが聞こえた。
 ユナが、何か言いたげな表情をしている……いや、誤解だから。
 彼女によると、どうも俺は、綺麗な女性がお客だとデレデレしているように見えるらしい。

 俺はちょっと冷静になって、きちんと占いに戻る。

 名前はカリーナ、年齢は二十二歳。
 現在、交際を始めて一ヶ月の彼氏がいるという。
 一ヶ月でもう結婚を考えているのか……やっぱりちょっとうらやましい。

 事前に占いのシステムを説明する。
 今から、彼女がこの世で一番幸せになれる結婚相手を占うこと。
 見えたイメージを言葉として伝えること。
 もし、イメージだけで誰のことだか分からないようであれば、別料金が必要になるが、その相手の元まで同行することも可能であること。

 そしてもっとも特徴的な事は、もし占いが外れた場合、料金は全額返金すること。

 この最後の言葉には、彼女はかなりビックリしていたが、今まで二百人以上占って返金された事はない……つまり、外れたことはないというと、なおのこと驚いていた。 

 そして俺は、占いを開始した。

「……素朴な感じの青年が見える……歳は二十歳ぐらいだろうか。皮製のカバンや財布なんかを作る仕事をしている。真面目な仕事ぶりだ……彼の師匠……おそらく父親からも褒められて、工房を引き継ぐ話しも出てるみたいだ……」

 と、俺がそこまで話しをすると、彼女は、えっと驚きの声を上げ、両手で口元を覆った。

「そんな……クルト、まさか……」

 あきらかにうろたえた様子だ。どうも、今の彼氏とは違っているようだ。

「あの……あくまで占いなので、気に入らない結果だったとしても、落ち込まないでくださいね」

 ユナがそうフォローしてくれるが、大したフォローになっていない。
 彼女、相当落胆しているようだったが、律儀にお礼を言って、お金も払ってくれた。

「……ひとつだけ、アドバイスをするなら……今の彼氏と結婚しても、必ずしも幸せになれない、というわけではありません。そもそも、幸せの定義なんて一つじゃないですし……」

 しかし、言えば言うほど、彼女は落ち込んでいく。
 ユナからも、小声で

「フォローになってない!」

 と注意されてしまう始末だ。

「……いえ、ありがとうございます。クルトは私の幼馴染みで、とっても仲の良い男の子ですよ。ただ、年下で、私にとっては弟みたいな存在でしたから、恋愛対象と見ていなかっただけです。確かに、結婚すれば、平穏無事に、幸せになれるのかもしれませんね……」

 と、けなげに笑顔を浮かべてくれた。
 うーん、意中の相手ではなかったけど、怒るような結果ではなかった、ということか。

 ただ、その後ユナが、

「私もちょっとした占い、できるんですよ。あなたは、潜在的に不思議な力をもっているようなので、それを占ってみてもいいですか? もちろん、それは無料です」

 と言い出したので、そんな事できるのかと思ったが、意外にも

「あ、はい、私の周りでは不思議な事がよくおきるので、ぜひ……」

 とカリーナさんが言うので、ユナはある魔法を彼女に使った。

 ……なんの事はない、『魔力検知』の魔法だった。
 しかしその結果に、ユナは目を見開いた。

 そして、

「……貴方には、結構な量の『魔力』が存在します。普段は落ち着いていますが、感情的になると、それが表に出て来ます。めったにそんなことはないのかもしれませんが……ときに人を傷つけるかもしれませんので、気を付けてくださいね」

 と、アドバイスをして、こちらは素直に受け入れられたようだった。
 こうして、彼女は帰っていったのだが……なんとなく、占いの相手が意中の相手ではなかったというのは、後味が悪い。

 ユナも、

「ちょっとショック……今まで、割と大喜びしたり、顔を赤らめたりっていうパターンが多かったのにね……」

 と、気にかけていた。

 さらにユナは、彼女には語らなかった秘密を、俺にだけこっそりと教えてくれた。

「カリーナさん……わずかにだけど、たぶん魔族の血が流れている……」

 この言葉には、俺もちょっと驚いたのだった。

 そしてこの日、夕方にもう一人来客があった。
 素朴な感じの青年。歳は二十歳ぐらい。
 はて、何処かで見たことがあるような……。

「……ひょっとして、クルトさんですか?」

 と尋ねてみると、

「ど、どうして僕の名前を知っているんですか?」

 と、驚かれてしまった。
 だって、朝、占いの中で顔、見えたから……。

 もちろん、そんな事は言葉には出さない。
 相変わらず暇そうなユナもやってきて、占いに参加。

 クルトさんは、もし自分に似合うお相手がいるのならば、占って欲しいと真面目に依頼してきた。

「好きな人はいないのですか?」

 とも聞いてみたのだが、

「……いえ、その人にはもう、お似合いの方がいますから……逆に言うと、だからこそ、本当に僕が幸せに結婚できるならば、その方を紹介していただければ嬉しいです……」

 と言ってきた。
 つまるところ……好きな女性、カリーナさんをあきらめようとしているのだ。

 でも、彼の場合、占うまでもなく、一番幸せな結婚相手、分かっているんだけどな……。

 しかし、カリーナさんが来たなんてことをばらす訳にはいかない。
 俺は真面目に彼のことを占い、そして見えたイメージをそのまま告げた。

 その占い結果、相手がカリーナさんであることに、クルトさんはもちろん、(多分名前を忘れていた)ユナも、大いに驚いたのだった。

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次回に続きます。
ちょっとした事件に巻き込まれることになりそうですが、大冒険、とまではならないようです。
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