67 / 72
第63話 近況
しおりを挟む
ユナが石化状態から回復して、さらに半年が過ぎた。
この間、まず全員で王都セントラル・バナンに戻り、ユナとソフィア王女は、感動の再会を果たした。
これでようやく、『呪い』関連の問題全てが解決したことになる。
しかし、ここに至るまでに新たな問題がいくつも発生していた。
まず、一番大きな課題は、ウィンの恋人であるクラーラを見つけ出さないといけない事だ。
これは俺とウィンだけの契約であるため、他のメンバーは関係無いのだが、ユナと、さらにはミリアまでもが同行してくれることになった。
これは魔導師ジフラールの勧めがあったため。
彼は、俺達がいわゆる『異世界』への旅に出ることになるかもしれない、という話を聞いて非常に興味を持ち、ミリアならその場合でも自分達と連絡を取り合えるはずだ、と、送り出すことに賛同したのだ。
彼女が、実はジフラールに旅の様子を詳細に伝えていたことを知らなかったので、まあ少し引っかかったところはあるが、もし異世界に行けたとして、そこで元の世界の人間と連絡が取れるのであればこれほど心強いことはない。
それに、彼女の強力な爆炎攻撃魔法と広範囲の探知魔法も、非常に助けになる。
難点は、ミリアが熱暴走を起こしたときにどうやって冷却するかということだったのだが、そこはジフラールが専用の魔道具である『氷水晶の護符』を作成してくれており、ウィンやユナのように強い魔力を持つ者であれば使いこなせるということだった。
ミウとユアンの二人は、アイフォースの領地へ帰り、結婚の準備を進めることになった。
『王女を助けたメンバー』という名誉は、二人の名声を飛躍的に高め、国家としても若手貴族の注目株として将来を有望視されている。
俺達との友情も変わる事無く、
「困った事があれば最優先で協力する」
と、握手をして誓い合った。
もっと注目を浴びているのが、アクト、本名アクテリオスだ。
彼こそが、伝説の英雄ラルクと、ファナ王女の忘れ形見であるとの情報は、既に多くの者に知れ渡っていた。
アクトの王位継承権は曖昧になったままなのだが、彼はそんなことに興味を示さず、それよりも俺達を襲撃し、ユナに猛毒を与えたテロリスト集団討伐のために奮闘している毎日だ。
育ての親が上級騎士ということもあり、彼も騎士の称号を与えられ、活躍している。
また、どこが発端か分からないのだが、彼とソフィア王女が近い将来結婚するという噂もまことしやかに流れており、そうなると次期国王となるわけだから、貴族達にとっては、ある意味大騒ぎとなっている。
ウィンは、自分を訪ねてきたメンバーがこれほどの実力者だとは知らなかったようで、相当驚いていた。
そうは言っても、ユナは昔はともかく、今は貴族の家を出た身だし、俺に至ってはただの平民だ。
ジル先生も、医師ではあるが、そんなに権力を持っているわけではない。
そんな彼は、サウスバブルの街に戻って、喪が明けたアイシスさんと結婚し、開業医として忙しい毎日を送っている。
俺とユナも、一旦サウスバブルに帰ることにした。
本来ならば契約に従い、クラーラ探索の旅を優先させないといけないのだが、ウィンの準備が整っていなかった。
なにしろ今度の旅の目的地は、『異世界』だ。帰って来られない可能性だって十分にある。
いままでの気ままな放浪の旅とは訳が違い、聖地『アイゼンシュタート大寺院』の創始者、アイゼンハイムとして、後継者への完全権限委譲をはじめ、領主としての雑務など、かなり準備に時間がかかるということだった。
どうせ時間がかかるならば、再度『究極完全回復魔法(アルティメイト・ヒーリング)』が使えるように半年待った方がいいということで、期限を定め、一旦解散となったのだ。
俺とユナは、また『タクヤ結婚相談所』を再開させた。
正式には、ユナは助手で、隣の『ユナ上級ハンター依頼受付所』の経営者でもあるのだが。
なお、ミリアも俺達と一緒にサウスバブルにやってきて、現在、ユナと一緒に寝泊まりしている。
つまり、俺とユナは一緒に生活している訳ではないのであって……要するに、恋人同士としては、それほど進展していない。
ミリアは俺とユナに懐いていて、本当の娘みたいだ。
年齢でいえば十三歳ぐらいだが、もう少し幼く見える。
それでも、娘として考えるならば大きいのだが、徐々に感情を取り戻しつつある彼女、ほんの少し笑みを浮かべただけで、俺達はほっこりした気分になれる。
ユナはまだ十七歳、少なくとも結婚は考えていないようだ。
俺もまだ十九歳、彼女と同じく、結婚はまだ早いと思っている。
しかし、もう少しユナとは進展があっても良いんじゃないか、とは考えているが……意外と彼女のガードは固い。
結婚相談所の方の経営は順調で、連日数組のカップルを誕生させているのだが、ここ最近はもう相談を受け尽くしたのか、遠方からの客がメインとなっていた。
そして、その日は訪れた。
荷物を沢山載せた豪華な馬車が、『タクヤ結婚相談所』の前に止ったのだ。
「……やあ、タクヤ、久しぶり。待たせたけど、やっと準備が整ったよ」
満面の笑みで降りてきたのは、ウィン、本名・アイゼンハイムだった。
この間、まず全員で王都セントラル・バナンに戻り、ユナとソフィア王女は、感動の再会を果たした。
これでようやく、『呪い』関連の問題全てが解決したことになる。
しかし、ここに至るまでに新たな問題がいくつも発生していた。
まず、一番大きな課題は、ウィンの恋人であるクラーラを見つけ出さないといけない事だ。
これは俺とウィンだけの契約であるため、他のメンバーは関係無いのだが、ユナと、さらにはミリアまでもが同行してくれることになった。
これは魔導師ジフラールの勧めがあったため。
彼は、俺達がいわゆる『異世界』への旅に出ることになるかもしれない、という話を聞いて非常に興味を持ち、ミリアならその場合でも自分達と連絡を取り合えるはずだ、と、送り出すことに賛同したのだ。
彼女が、実はジフラールに旅の様子を詳細に伝えていたことを知らなかったので、まあ少し引っかかったところはあるが、もし異世界に行けたとして、そこで元の世界の人間と連絡が取れるのであればこれほど心強いことはない。
それに、彼女の強力な爆炎攻撃魔法と広範囲の探知魔法も、非常に助けになる。
難点は、ミリアが熱暴走を起こしたときにどうやって冷却するかということだったのだが、そこはジフラールが専用の魔道具である『氷水晶の護符』を作成してくれており、ウィンやユナのように強い魔力を持つ者であれば使いこなせるということだった。
ミウとユアンの二人は、アイフォースの領地へ帰り、結婚の準備を進めることになった。
『王女を助けたメンバー』という名誉は、二人の名声を飛躍的に高め、国家としても若手貴族の注目株として将来を有望視されている。
俺達との友情も変わる事無く、
「困った事があれば最優先で協力する」
と、握手をして誓い合った。
もっと注目を浴びているのが、アクト、本名アクテリオスだ。
彼こそが、伝説の英雄ラルクと、ファナ王女の忘れ形見であるとの情報は、既に多くの者に知れ渡っていた。
アクトの王位継承権は曖昧になったままなのだが、彼はそんなことに興味を示さず、それよりも俺達を襲撃し、ユナに猛毒を与えたテロリスト集団討伐のために奮闘している毎日だ。
育ての親が上級騎士ということもあり、彼も騎士の称号を与えられ、活躍している。
また、どこが発端か分からないのだが、彼とソフィア王女が近い将来結婚するという噂もまことしやかに流れており、そうなると次期国王となるわけだから、貴族達にとっては、ある意味大騒ぎとなっている。
ウィンは、自分を訪ねてきたメンバーがこれほどの実力者だとは知らなかったようで、相当驚いていた。
そうは言っても、ユナは昔はともかく、今は貴族の家を出た身だし、俺に至ってはただの平民だ。
ジル先生も、医師ではあるが、そんなに権力を持っているわけではない。
そんな彼は、サウスバブルの街に戻って、喪が明けたアイシスさんと結婚し、開業医として忙しい毎日を送っている。
俺とユナも、一旦サウスバブルに帰ることにした。
本来ならば契約に従い、クラーラ探索の旅を優先させないといけないのだが、ウィンの準備が整っていなかった。
なにしろ今度の旅の目的地は、『異世界』だ。帰って来られない可能性だって十分にある。
いままでの気ままな放浪の旅とは訳が違い、聖地『アイゼンシュタート大寺院』の創始者、アイゼンハイムとして、後継者への完全権限委譲をはじめ、領主としての雑務など、かなり準備に時間がかかるということだった。
どうせ時間がかかるならば、再度『究極完全回復魔法(アルティメイト・ヒーリング)』が使えるように半年待った方がいいということで、期限を定め、一旦解散となったのだ。
俺とユナは、また『タクヤ結婚相談所』を再開させた。
正式には、ユナは助手で、隣の『ユナ上級ハンター依頼受付所』の経営者でもあるのだが。
なお、ミリアも俺達と一緒にサウスバブルにやってきて、現在、ユナと一緒に寝泊まりしている。
つまり、俺とユナは一緒に生活している訳ではないのであって……要するに、恋人同士としては、それほど進展していない。
ミリアは俺とユナに懐いていて、本当の娘みたいだ。
年齢でいえば十三歳ぐらいだが、もう少し幼く見える。
それでも、娘として考えるならば大きいのだが、徐々に感情を取り戻しつつある彼女、ほんの少し笑みを浮かべただけで、俺達はほっこりした気分になれる。
ユナはまだ十七歳、少なくとも結婚は考えていないようだ。
俺もまだ十九歳、彼女と同じく、結婚はまだ早いと思っている。
しかし、もう少しユナとは進展があっても良いんじゃないか、とは考えているが……意外と彼女のガードは固い。
結婚相談所の方の経営は順調で、連日数組のカップルを誕生させているのだが、ここ最近はもう相談を受け尽くしたのか、遠方からの客がメインとなっていた。
そして、その日は訪れた。
荷物を沢山載せた豪華な馬車が、『タクヤ結婚相談所』の前に止ったのだ。
「……やあ、タクヤ、久しぶり。待たせたけど、やっと準備が整ったよ」
満面の笑みで降りてきたのは、ウィン、本名・アイゼンハイムだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる