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挨拶と武装披露
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巫女服のまま走る優奈。
足下は足袋に巫女草履だが、結構駆けるのは早い。
荷物は風呂敷包みが一つだけで、それほど大きくはない。
そしてタクが周囲を眺めて思ったのは、確かに「江戸時代風」の「田舎」の景色だな、ということだ。
建物は、茅葺きや瓦葺きの建物が点在するだけで、後は田んぼが広がっている。
ずっと奥は山々や森林で囲まれており、近代的なコンクリート作りの建物や、電柱などは見当たらない。
道は舗装されておらずむき出しの土だ。
季節は初夏のようで、水田の稲は大きくなってきてはいるが、まだ穂は実っていない。
少し暑いのか、走っている優奈は僅かに額に汗を滲ませていたが、タクは気温や湿気を体感することができなかった。
タクは、優奈と並行して飛んでいる間にいくつか試してみたことがあったのだが、その距離は50メートルほど離れると自動的に彼女に引っ張られていくことが分かった。
また、高さに関しては10メートルほどが限界で、視点だけをそのぐらいの位置に移動させ、自分の姿を俯瞰で見ることもできた。
そのときに彼が感じたのは、やっぱりその姿はぬいぐるみのオオカミで、一応走るように動くことはできるのだが、そもそも空中を飛んでいるのでその行動は単なる気休めでしかない、ということだった。
しばらく走ると、少し開けた場所にたどり着いた。
前世で言うと、野球場ぐらいの広さだろうか。
藁でできた大きな人形や、壊れかけた鎧をかぶせられた杭、赤土が二メール以上の高さに、土手のように盛り上げられた場所、土嚢が積み上げられた箇所、地面を大きくえぐったような窪地など、起伏に富んでいる。
「見えました、あれが巫女の訓練場です!」
優奈が嬉しそうにタクに話しかけた。
彼は、優奈が言う訓練場手前側の、比較的平坦な箇所で、三人の人影が何か話し込んでいるのを見かけた。
その三人は、優奈が走ってきているのを見つけて、最初は気まずそうにしていたが、やがて彼女が近づくにつれて目を見開いて驚いていた。
優奈は息を切らして、三人の元に駆け寄った。そして、一番年上と思われる、神職装束、二十代前半ぐらいの女性に頭を下げた。
「先生、あの……遅刻してしまって申しわけありません。もう資格を失ってしまっていたと思っていたので……」
その言葉に、先生と呼ばれた女性はタクを見て、そして涙を浮かべ、優奈を抱きしめた。
「……遅刻とか、そんなことより……優奈、精霊巫女になれたのね……」
「……はい、本当に期限ギリギリで……精霊、タク様が現れ、契約してくださいました……」
優奈が涙声で呟くと、側にいた二人の少女も涙を浮かべて優奈に抱きついた。
「やったな、優奈!」
「おめでとうございます、優奈さんっ!」
囲むように抱きしめられて、優奈は
「二人とも、ありがとう……これからも、よろしくね……」
と泣きながら話した。
その様子を感慨深げに眺めていると、タクの側に、やはりぬいぐるみのような二体の精霊が近づいてきた。
タクには、優奈が皆に近づく前にその姿が見えていたが、どうしていいか分からないでいたので、向こうから来てくれたのはありがたかった。
「はじめまして、『リン』と申します。『タク』殿、優奈ちゃんと契約していただいたのですね。ありがとうございます。私たちもとても心配していたので、ほっとしました」
「あ、はじめまして……えっと、どうして俺の名前が分かったのですか?」
「名前、ですか? 失礼ながら、ステータスを確認させていただきました。貴方にも私たちのそれが見えるはずですよ?」
リンにそう言われて、タクも相手のステータスを確認してみる。
-----
名前:凛(リン) (モデル:キツネ)
状態:精霊体
契約巫女名:夏美
-----
確かにその体は、まるでキツネのぬいぐるみで、可愛らしさと神秘的な美しさを兼ね備えていた。
「へえ、凜さんは『キツネ』の精霊なんですね」
「はい、そうですよ。その様子だと、あなたは『初霊』なのですね」
「初霊?」
「そうです、転生後、初めて契約精霊になった方をそう呼びます。まあ、俗称ですし、実際には『リセット』してこの世界の記憶を失った直後の精霊も含まれますけどね。あと、私は女性からの転生ですが、その口ぶりですと、貴方は男性の転生者ですね?」
「はい、俺は確かに前世で男でした。それに、『初霊』っていうのもその通りで、戸惑うことが多くて……」
「私も『初霊』のユキアだよ! タク、よろしくねっ!」
リンとの会話に割り込んできたのは、あまり見たことのない、しかし可愛らしい細長形状のぬいぐるみのような精霊だった。
こちらもステータスを確認してみる。
-----
名前:雪愛(ユキア) (モデル:竜)
状態:精霊体
契約巫女名:春花
-----
「えっ……竜?」
「うん、私は竜なの、すごいでしょ!」
「ああ、すごい……実際の動物がモデルじゃない精霊体もいるんだ……君は以前は女の子だったのか?」
「うん、私は女の子だったよ。男の子っぽいしゃべり方だって言われることもあるけど」
ぬいぐるみのような容姿なのに、ニコニコと微笑んでいるのが分かる。
タクは、彼女がこの世界に来た事情までは分からないが、多分前世ではまだ子供だったんだろうな、と、少し複雑な気分になった。
そしてその挨拶をきっかけとして、それぞれの自己紹介が始まった。
「あの、お初にお目にかかります、リン様、ユキア様。ご存じのこととは思いますが、優奈です。今までご心配をおかけしました、今後ともよろしくお願い致します!」
それに対して、二体の精霊も嬉しそうに挨拶を返した。
タクは、以前から会っていたはずなのになぜ今更そんな挨拶をするのか気になったが、リンから
「精霊は、精霊巫女になった少女か、元精霊巫女でなければその姿は見えず、声も聞こえないんですよ」
と教えられ、そういえばそんな話だったな、と思い出した。
そして今度は、二人の精霊巫女がタクに挨拶してきた。
「タク様、お初にお目にかかります、『ナツミ』と申します。得意なことは『弓術』です。私のことは、ステータスを見ていただけましたらある程度わかっていただけると思いますので、よろしくお願い致します」
ボーイッシュで、凜々しい感じがする巫女服姿の少女で、優奈より少し背も高い。
早速、彼女のステータスを確認してみる。
-----
名前:夏美(ナツミ)
年齢:十五歳
職業:精霊巫女
契約精霊:凛
状態:正常
生命力:125/125
呪力:230/230
戦闘力:16
素早さ:30
装備:
巫女服 (ノーマル)
備考:
-----
彼女はまだ十五歳だった。そして契約精霊はキツネ型の「リン」だ。
次に、ナツミや優奈と比べるとやや小柄な少女が挨拶してきた。
「タク様、はじめまして、ハルカです。あの、よろしくおねがいします……」
若干、おとなしそうではあるが、可愛らしい感じの美少女だ。
こちらもステータスを確認してみる。
-----
名前:春花(ハルカ)
年齢:十三歳
職業:精霊巫女
契約精霊:雪愛
状態:正常
生命力:80/80
呪力:350/350
戦闘力:11
素早さ:23
装備:
巫女服 (ノーマル)
備考:
-----
「十三歳っ! しかも、この呪力……」
優奈の呪力は250だったので、この数値がどれだけ高いかが見て取れる。
「ハルカちゃんは精霊巫女としての素質は随一ですわ。でも、実際に妖魔と戦うとなると、本人の性格や相性、戦闘スタイルによって変わってきます。どんな精霊巫女にも長所と弱点がそれぞれありますから、それを補っていくチームワークが必要となります。そういう意味でも、同期の優奈ちゃんが精霊巫女になってもらえたことはとても心強いのですよ。ねえ、茜先生?」
キツネ型の精霊、リンにそう話を振られたのは、神職装束の女性だった。
「はい、その通りです……申し遅れました、私がこの娘達の教官を任せられている『茜(あかね)』です。タク様、優奈と契約していただき、本当にありがとうございます。しかも、オオカミ型の精霊様と言うことは、おそらく近接戦闘が得意とお見受けしました。後の二人が、それが苦手でしたので、本当に頼もしく思っております」
茜と名乗った女性教官は、そう言って頭を下げた。
そう言われても、タクにはそんな自覚は無かった。
ちなみに、茜は既に精霊巫女ではなくなっている為か、そのステータスはタクには見えなかった。
そうして一通り挨拶が済んだところで、ナツミとハルカの希望により、優奈がその武装した姿を見せることになった。
まず、「羅無陀(ラムダ)!」と呪文を唱え、タクにも見せた鎧化を披露した。
先ほどタクが見たときと同じく、白銀を基調にし、美しく輝き、神々しくさえある甲冑を身に纏った姿へと変身を遂げる。
教官の茜を含めた全員から、感嘆の声が上がった。
「では、次は武装です。これは実は、まだ試していなかったのですが……照瑠蛇(デルタ)!」
優奈がそう唱えると、その左手には、彼女の身長より長い長刀(なぎなた)が出現した。
その先端の刃は純白で、まるでオオカミの牙を思わせるような鋭さ、迫力を醸し出していた。
足下は足袋に巫女草履だが、結構駆けるのは早い。
荷物は風呂敷包みが一つだけで、それほど大きくはない。
そしてタクが周囲を眺めて思ったのは、確かに「江戸時代風」の「田舎」の景色だな、ということだ。
建物は、茅葺きや瓦葺きの建物が点在するだけで、後は田んぼが広がっている。
ずっと奥は山々や森林で囲まれており、近代的なコンクリート作りの建物や、電柱などは見当たらない。
道は舗装されておらずむき出しの土だ。
季節は初夏のようで、水田の稲は大きくなってきてはいるが、まだ穂は実っていない。
少し暑いのか、走っている優奈は僅かに額に汗を滲ませていたが、タクは気温や湿気を体感することができなかった。
タクは、優奈と並行して飛んでいる間にいくつか試してみたことがあったのだが、その距離は50メートルほど離れると自動的に彼女に引っ張られていくことが分かった。
また、高さに関しては10メートルほどが限界で、視点だけをそのぐらいの位置に移動させ、自分の姿を俯瞰で見ることもできた。
そのときに彼が感じたのは、やっぱりその姿はぬいぐるみのオオカミで、一応走るように動くことはできるのだが、そもそも空中を飛んでいるのでその行動は単なる気休めでしかない、ということだった。
しばらく走ると、少し開けた場所にたどり着いた。
前世で言うと、野球場ぐらいの広さだろうか。
藁でできた大きな人形や、壊れかけた鎧をかぶせられた杭、赤土が二メール以上の高さに、土手のように盛り上げられた場所、土嚢が積み上げられた箇所、地面を大きくえぐったような窪地など、起伏に富んでいる。
「見えました、あれが巫女の訓練場です!」
優奈が嬉しそうにタクに話しかけた。
彼は、優奈が言う訓練場手前側の、比較的平坦な箇所で、三人の人影が何か話し込んでいるのを見かけた。
その三人は、優奈が走ってきているのを見つけて、最初は気まずそうにしていたが、やがて彼女が近づくにつれて目を見開いて驚いていた。
優奈は息を切らして、三人の元に駆け寄った。そして、一番年上と思われる、神職装束、二十代前半ぐらいの女性に頭を下げた。
「先生、あの……遅刻してしまって申しわけありません。もう資格を失ってしまっていたと思っていたので……」
その言葉に、先生と呼ばれた女性はタクを見て、そして涙を浮かべ、優奈を抱きしめた。
「……遅刻とか、そんなことより……優奈、精霊巫女になれたのね……」
「……はい、本当に期限ギリギリで……精霊、タク様が現れ、契約してくださいました……」
優奈が涙声で呟くと、側にいた二人の少女も涙を浮かべて優奈に抱きついた。
「やったな、優奈!」
「おめでとうございます、優奈さんっ!」
囲むように抱きしめられて、優奈は
「二人とも、ありがとう……これからも、よろしくね……」
と泣きながら話した。
その様子を感慨深げに眺めていると、タクの側に、やはりぬいぐるみのような二体の精霊が近づいてきた。
タクには、優奈が皆に近づく前にその姿が見えていたが、どうしていいか分からないでいたので、向こうから来てくれたのはありがたかった。
「はじめまして、『リン』と申します。『タク』殿、優奈ちゃんと契約していただいたのですね。ありがとうございます。私たちもとても心配していたので、ほっとしました」
「あ、はじめまして……えっと、どうして俺の名前が分かったのですか?」
「名前、ですか? 失礼ながら、ステータスを確認させていただきました。貴方にも私たちのそれが見えるはずですよ?」
リンにそう言われて、タクも相手のステータスを確認してみる。
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名前:凛(リン) (モデル:キツネ)
状態:精霊体
契約巫女名:夏美
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確かにその体は、まるでキツネのぬいぐるみで、可愛らしさと神秘的な美しさを兼ね備えていた。
「へえ、凜さんは『キツネ』の精霊なんですね」
「はい、そうですよ。その様子だと、あなたは『初霊』なのですね」
「初霊?」
「そうです、転生後、初めて契約精霊になった方をそう呼びます。まあ、俗称ですし、実際には『リセット』してこの世界の記憶を失った直後の精霊も含まれますけどね。あと、私は女性からの転生ですが、その口ぶりですと、貴方は男性の転生者ですね?」
「はい、俺は確かに前世で男でした。それに、『初霊』っていうのもその通りで、戸惑うことが多くて……」
「私も『初霊』のユキアだよ! タク、よろしくねっ!」
リンとの会話に割り込んできたのは、あまり見たことのない、しかし可愛らしい細長形状のぬいぐるみのような精霊だった。
こちらもステータスを確認してみる。
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名前:雪愛(ユキア) (モデル:竜)
状態:精霊体
契約巫女名:春花
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「えっ……竜?」
「うん、私は竜なの、すごいでしょ!」
「ああ、すごい……実際の動物がモデルじゃない精霊体もいるんだ……君は以前は女の子だったのか?」
「うん、私は女の子だったよ。男の子っぽいしゃべり方だって言われることもあるけど」
ぬいぐるみのような容姿なのに、ニコニコと微笑んでいるのが分かる。
タクは、彼女がこの世界に来た事情までは分からないが、多分前世ではまだ子供だったんだろうな、と、少し複雑な気分になった。
そしてその挨拶をきっかけとして、それぞれの自己紹介が始まった。
「あの、お初にお目にかかります、リン様、ユキア様。ご存じのこととは思いますが、優奈です。今までご心配をおかけしました、今後ともよろしくお願い致します!」
それに対して、二体の精霊も嬉しそうに挨拶を返した。
タクは、以前から会っていたはずなのになぜ今更そんな挨拶をするのか気になったが、リンから
「精霊は、精霊巫女になった少女か、元精霊巫女でなければその姿は見えず、声も聞こえないんですよ」
と教えられ、そういえばそんな話だったな、と思い出した。
そして今度は、二人の精霊巫女がタクに挨拶してきた。
「タク様、お初にお目にかかります、『ナツミ』と申します。得意なことは『弓術』です。私のことは、ステータスを見ていただけましたらある程度わかっていただけると思いますので、よろしくお願い致します」
ボーイッシュで、凜々しい感じがする巫女服姿の少女で、優奈より少し背も高い。
早速、彼女のステータスを確認してみる。
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名前:夏美(ナツミ)
年齢:十五歳
職業:精霊巫女
契約精霊:凛
状態:正常
生命力:125/125
呪力:230/230
戦闘力:16
素早さ:30
装備:
巫女服 (ノーマル)
備考:
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彼女はまだ十五歳だった。そして契約精霊はキツネ型の「リン」だ。
次に、ナツミや優奈と比べるとやや小柄な少女が挨拶してきた。
「タク様、はじめまして、ハルカです。あの、よろしくおねがいします……」
若干、おとなしそうではあるが、可愛らしい感じの美少女だ。
こちらもステータスを確認してみる。
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名前:春花(ハルカ)
年齢:十三歳
職業:精霊巫女
契約精霊:雪愛
状態:正常
生命力:80/80
呪力:350/350
戦闘力:11
素早さ:23
装備:
巫女服 (ノーマル)
備考:
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「十三歳っ! しかも、この呪力……」
優奈の呪力は250だったので、この数値がどれだけ高いかが見て取れる。
「ハルカちゃんは精霊巫女としての素質は随一ですわ。でも、実際に妖魔と戦うとなると、本人の性格や相性、戦闘スタイルによって変わってきます。どんな精霊巫女にも長所と弱点がそれぞれありますから、それを補っていくチームワークが必要となります。そういう意味でも、同期の優奈ちゃんが精霊巫女になってもらえたことはとても心強いのですよ。ねえ、茜先生?」
キツネ型の精霊、リンにそう話を振られたのは、神職装束の女性だった。
「はい、その通りです……申し遅れました、私がこの娘達の教官を任せられている『茜(あかね)』です。タク様、優奈と契約していただき、本当にありがとうございます。しかも、オオカミ型の精霊様と言うことは、おそらく近接戦闘が得意とお見受けしました。後の二人が、それが苦手でしたので、本当に頼もしく思っております」
茜と名乗った女性教官は、そう言って頭を下げた。
そう言われても、タクにはそんな自覚は無かった。
ちなみに、茜は既に精霊巫女ではなくなっている為か、そのステータスはタクには見えなかった。
そうして一通り挨拶が済んだところで、ナツミとハルカの希望により、優奈がその武装した姿を見せることになった。
まず、「羅無陀(ラムダ)!」と呪文を唱え、タクにも見せた鎧化を披露した。
先ほどタクが見たときと同じく、白銀を基調にし、美しく輝き、神々しくさえある甲冑を身に纏った姿へと変身を遂げる。
教官の茜を含めた全員から、感嘆の声が上がった。
「では、次は武装です。これは実は、まだ試していなかったのですが……照瑠蛇(デルタ)!」
優奈がそう唱えると、その左手には、彼女の身長より長い長刀(なぎなた)が出現した。
その先端の刃は純白で、まるでオオカミの牙を思わせるような鋭さ、迫力を醸し出していた。
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