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最終目標
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「君と僕の……二人で?」
予想外のミクの申し出に、ライナスは混乱した。
「そう。実は私も、ハンターとして冒険の旅に出てみたかったの。自分で作った魔道具の性能も試してみたかったしね。でも、『一人じゃ危険だから絶対にダメ』って姉さんに反対されてて……」
少し頬を赤く染めながら、彼女がライナスに事情を話す。
その可愛らしさに、彼は鼓動が高まるのを感じつつも、困惑の方が大きかった。
「いや……でも、だったらメルさんと一緒に行けば良かったのに……あんなに強いんだから」
「ううん、残念ながら姉さんは、長時間の旅には耐えられない体質なの。日の光も浴びられないし……特に鎧を纏っては、ほんの数分しか戦えないの」
やや眉をひそめながら、ミクはそう話した。
体内に魔石を宿す人間……それは、「不死族妖魔」であることを意味する。
そうであれば、「日の光も浴びられない」という理由も分かる。
しかし……だとするならば、通常、それは人間にとって「敵」の、モンスターだ。
一部、高位のヴァンパイアなどは、人知れず人間に紛れて生活しているという噂を聞いたことはあるが……。
「……ミク、今日はもう、お店閉めましょう。彼に、いろいろと事情を話す必要がありそうだから」
メルも言葉に、ミクもうなずいて「本日閉店」の看板を出し、「魔法堂 白銀の翼」の扉を固く閉じた。
メルは、ライナスの了承の元、「秘密保持契約」の魔法を発動し、これから話す内容を誰にも語らないように彼に告げた。
「……前に話したように、私たちは魔導具専門ブランド、『クリューガー』伯爵家の出身。世間では名家と言われているけど、実際には割と古いしきたりに捕らわれない自由な家風で、それが功を奏して、ミクが好きなように魔道具を開発して売り出したりもできていた。それ以前の、ずっと前から魔道具は売り出してきていたわけだけど……それにはちょっとした秘密があったの」
メルが結構重要そうな秘密を話そうとしていることを察して、ライナスは、なぜ自分に、と思いながらも彼女の言葉に耳を傾け続けた。
「私たちの祖先は、古代の大戦で強大な最上級悪魔、『ディモース』を倒していた。魔法が使える、いわゆる『神の子孫』の中でも特に貴重な、『純白の聖魔法』を使える一族だったことがその一因。この魔法は、現在の技術でも魔道具だけでは再現できていないわ。まあ、それはいいとして……実は、その最上級悪魔『ディモース』の魔石が、ずっと我が家系に伝えられ、厳重に保管されていたの」
まるでおとぎ話のような内容だったが、メルが真剣に語るので、ライナスもじっとそれを聞いていた。
「でも、2年前の夜……両親をはじめとする、我が家系の主要な重鎮達が国の会合の為に泊まりがけで出ていたところを、『ヴァンパイアロード』と呼ばれる妖魔の王、『ヴェルサーガ』の急襲を受けた……その圧倒的な魔力に、武装した守衛達は簡単に打ち負かされ……私はまだ十四歳だったミクを部屋に隠して、最後の盾として、最上位の武装で立ちはだかったんだけど、あっけなく負けちゃって……私は致命的な傷を受け、そしてヴェルサーガに『ディモース』の魔石を奪われた……彼は、それを自分の体内に取り込み、『不死族妖魔』として、より強大な存在になるつもりだった」
ヴァンパイアロード……伝説でしか聞いたことのない存在が現実の話として登場したことに、ライナスは息を飲む。
「……でも、『ヴァンパイアロード』になった時点で彼自身にも魔石ができていたので、一つの体内に二つの魔石は共存できなかった。その事実を知って、腹いせなのか、単純に気まぐれなのかは分からないけど……彼は、死にかけの私に強力な呪いをかけた……それは、私を不死族妖魔に変えてしまう魔法。しかも、自分の部下として操る『強制』の呪いまで付与して」
少し唇を震わせるようにしてそう語る彼女の様子に、ライナスはただ聞き入るしかなかった。
「ヴェルサーガは、『その呪いを受けて、生き延びたなら俺の部下に加えてやろう』とだけ言い残して去って行った……その時点で、私は呪いに負けて彼の下僕である妖魔へと変化してしまうか、あるいは死ぬかのどちらかでしかなかったし、選択権はなかった……それを助けてくれたのが、ミクだった」
メルはそこまで話すと、視線をミクに移した。
ミクはそれを受けて、一つ大きく頷き、その続きを語り始めた。
「……私は、無我夢中だった……血まみれで、ヴェルサーガの呪怨に苦しむ姉さんの姿を見て、咄嗟に……本当に、自分の勘を信じるような気持ちで、できることをやった……その一つが、まだ姉さんの体内に生まれきっていない『魔石』の代わりに、ヴェルサーガが興味を失って捨てていった『ディモース』の魔石をその体に埋め込んだこと。すると、その強力な魔力、再生能力で、姉さんの体の傷は塞がり始めた。でも、それだけじゃあ、ヴェルサーガか『ディモース』に意識を乗っ取られてしまう……そこで、我が家でも最上級である充魔石『カイザーレックス』と、国宝級とも言われる、意識支配への絶対抵抗魔水晶『王者の金剛石』も埋め込んだ……でも、それはクリューガー家としても、流石にやっちゃいけないことだったんだけどね」
ミクが、苦笑いを浮かべながらそう話した。
「……でも、そのおかげで私は助かった……それどころか、日の光が当たらない箇所限定だけど、人間離れした強靱な肉体で戦い、そして『ディモース』専用の装備である、あの白銀の鎧を召喚して身に纏うことができるようになったわ……『カイザーレックス』がフル充魔の状態でも、数分しか戦えないけど」
メルのその話を聞いて、ライナスはようやく理解した……彼女の体内で赤く強烈に輝いていた魔石は、古代の最上級悪魔『ディモース』のものだったのだ。
「じゃあ、君たちがクリューガー家を出た理由というのは……」
その問いに、メルが答える。
「まず一つが、私が不死族妖魔になってしまったこと。さすがに、そんな私を家に置くわけにはいかないから」
そう語る彼女の表情は、寂しそうではあるが、それを隠すように笑顔だった。
「あと、私は勝手に国宝級の魔石をいくつも姉さんの体に埋め込んじゃったこと。まあ、これは両親は理解してくれているんだけど、やっぱり対外的に、ね……」
ミクが、ばつが悪そうにそう付け加えた。そしてさらに言葉を続ける。
「でも、まだ希望は残っている。姉さんを、人間に……普通の体に戻す方法があるの」
「え、そうなのか? だったら、それを目指そう! 僕も協力するよ!」
前のめりにそう切り出すライナスの姿勢に、メルとミクは顔を見合わせて苦笑いした。
「……やっぱりライナス君、相当なお人好しね……それって、相当……ううん、不可能に近いぐらい困難なことなのよ」
「そんなこと、やってみなければ分かりません。何をすれば良いか教えてください……その、『ヴェルサーガ』とかいうやつを倒せばいいんですか?」
「いいえ……うん、まあ、ヴェルサーガももちろん、倒すべき悪であることは変わりないし、目標の一つではあるけれど……それだけじゃあ呪いは解けない……ううん、むしろ強まるかもしれない」
メルが首を横に振って否定する。
「じゃあ、どうすれば……」
彼の疑問に、ミクが答える。
「私たち、もっともっと強くなって……イフカ遺跡群でも、未踏破最難関遺跡のどこかにあると伝承されている、伝説上最強の七大神器の一つ……どんな強力な呪いでも解くことができるという『パナケイアの白杖』を入手すること……それが私たちの最終目標です……ライ君、それを聞いても、協力してくれる?」
ミクから、神話でしか聞いたことのない単語が発せられたことに、ライナスはしばし、絶句した。
予想外のミクの申し出に、ライナスは混乱した。
「そう。実は私も、ハンターとして冒険の旅に出てみたかったの。自分で作った魔道具の性能も試してみたかったしね。でも、『一人じゃ危険だから絶対にダメ』って姉さんに反対されてて……」
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その可愛らしさに、彼は鼓動が高まるのを感じつつも、困惑の方が大きかった。
「いや……でも、だったらメルさんと一緒に行けば良かったのに……あんなに強いんだから」
「ううん、残念ながら姉さんは、長時間の旅には耐えられない体質なの。日の光も浴びられないし……特に鎧を纏っては、ほんの数分しか戦えないの」
やや眉をひそめながら、ミクはそう話した。
体内に魔石を宿す人間……それは、「不死族妖魔」であることを意味する。
そうであれば、「日の光も浴びられない」という理由も分かる。
しかし……だとするならば、通常、それは人間にとって「敵」の、モンスターだ。
一部、高位のヴァンパイアなどは、人知れず人間に紛れて生活しているという噂を聞いたことはあるが……。
「……ミク、今日はもう、お店閉めましょう。彼に、いろいろと事情を話す必要がありそうだから」
メルも言葉に、ミクもうなずいて「本日閉店」の看板を出し、「魔法堂 白銀の翼」の扉を固く閉じた。
メルは、ライナスの了承の元、「秘密保持契約」の魔法を発動し、これから話す内容を誰にも語らないように彼に告げた。
「……前に話したように、私たちは魔導具専門ブランド、『クリューガー』伯爵家の出身。世間では名家と言われているけど、実際には割と古いしきたりに捕らわれない自由な家風で、それが功を奏して、ミクが好きなように魔道具を開発して売り出したりもできていた。それ以前の、ずっと前から魔道具は売り出してきていたわけだけど……それにはちょっとした秘密があったの」
メルが結構重要そうな秘密を話そうとしていることを察して、ライナスは、なぜ自分に、と思いながらも彼女の言葉に耳を傾け続けた。
「私たちの祖先は、古代の大戦で強大な最上級悪魔、『ディモース』を倒していた。魔法が使える、いわゆる『神の子孫』の中でも特に貴重な、『純白の聖魔法』を使える一族だったことがその一因。この魔法は、現在の技術でも魔道具だけでは再現できていないわ。まあ、それはいいとして……実は、その最上級悪魔『ディモース』の魔石が、ずっと我が家系に伝えられ、厳重に保管されていたの」
まるでおとぎ話のような内容だったが、メルが真剣に語るので、ライナスもじっとそれを聞いていた。
「でも、2年前の夜……両親をはじめとする、我が家系の主要な重鎮達が国の会合の為に泊まりがけで出ていたところを、『ヴァンパイアロード』と呼ばれる妖魔の王、『ヴェルサーガ』の急襲を受けた……その圧倒的な魔力に、武装した守衛達は簡単に打ち負かされ……私はまだ十四歳だったミクを部屋に隠して、最後の盾として、最上位の武装で立ちはだかったんだけど、あっけなく負けちゃって……私は致命的な傷を受け、そしてヴェルサーガに『ディモース』の魔石を奪われた……彼は、それを自分の体内に取り込み、『不死族妖魔』として、より強大な存在になるつもりだった」
ヴァンパイアロード……伝説でしか聞いたことのない存在が現実の話として登場したことに、ライナスは息を飲む。
「……でも、『ヴァンパイアロード』になった時点で彼自身にも魔石ができていたので、一つの体内に二つの魔石は共存できなかった。その事実を知って、腹いせなのか、単純に気まぐれなのかは分からないけど……彼は、死にかけの私に強力な呪いをかけた……それは、私を不死族妖魔に変えてしまう魔法。しかも、自分の部下として操る『強制』の呪いまで付与して」
少し唇を震わせるようにしてそう語る彼女の様子に、ライナスはただ聞き入るしかなかった。
「ヴェルサーガは、『その呪いを受けて、生き延びたなら俺の部下に加えてやろう』とだけ言い残して去って行った……その時点で、私は呪いに負けて彼の下僕である妖魔へと変化してしまうか、あるいは死ぬかのどちらかでしかなかったし、選択権はなかった……それを助けてくれたのが、ミクだった」
メルはそこまで話すと、視線をミクに移した。
ミクはそれを受けて、一つ大きく頷き、その続きを語り始めた。
「……私は、無我夢中だった……血まみれで、ヴェルサーガの呪怨に苦しむ姉さんの姿を見て、咄嗟に……本当に、自分の勘を信じるような気持ちで、できることをやった……その一つが、まだ姉さんの体内に生まれきっていない『魔石』の代わりに、ヴェルサーガが興味を失って捨てていった『ディモース』の魔石をその体に埋め込んだこと。すると、その強力な魔力、再生能力で、姉さんの体の傷は塞がり始めた。でも、それだけじゃあ、ヴェルサーガか『ディモース』に意識を乗っ取られてしまう……そこで、我が家でも最上級である充魔石『カイザーレックス』と、国宝級とも言われる、意識支配への絶対抵抗魔水晶『王者の金剛石』も埋め込んだ……でも、それはクリューガー家としても、流石にやっちゃいけないことだったんだけどね」
ミクが、苦笑いを浮かべながらそう話した。
「……でも、そのおかげで私は助かった……それどころか、日の光が当たらない箇所限定だけど、人間離れした強靱な肉体で戦い、そして『ディモース』専用の装備である、あの白銀の鎧を召喚して身に纏うことができるようになったわ……『カイザーレックス』がフル充魔の状態でも、数分しか戦えないけど」
メルのその話を聞いて、ライナスはようやく理解した……彼女の体内で赤く強烈に輝いていた魔石は、古代の最上級悪魔『ディモース』のものだったのだ。
「じゃあ、君たちがクリューガー家を出た理由というのは……」
その問いに、メルが答える。
「まず一つが、私が不死族妖魔になってしまったこと。さすがに、そんな私を家に置くわけにはいかないから」
そう語る彼女の表情は、寂しそうではあるが、それを隠すように笑顔だった。
「あと、私は勝手に国宝級の魔石をいくつも姉さんの体に埋め込んじゃったこと。まあ、これは両親は理解してくれているんだけど、やっぱり対外的に、ね……」
ミクが、ばつが悪そうにそう付け加えた。そしてさらに言葉を続ける。
「でも、まだ希望は残っている。姉さんを、人間に……普通の体に戻す方法があるの」
「え、そうなのか? だったら、それを目指そう! 僕も協力するよ!」
前のめりにそう切り出すライナスの姿勢に、メルとミクは顔を見合わせて苦笑いした。
「……やっぱりライナス君、相当なお人好しね……それって、相当……ううん、不可能に近いぐらい困難なことなのよ」
「そんなこと、やってみなければ分かりません。何をすれば良いか教えてください……その、『ヴェルサーガ』とかいうやつを倒せばいいんですか?」
「いいえ……うん、まあ、ヴェルサーガももちろん、倒すべき悪であることは変わりないし、目標の一つではあるけれど……それだけじゃあ呪いは解けない……ううん、むしろ強まるかもしれない」
メルが首を横に振って否定する。
「じゃあ、どうすれば……」
彼の疑問に、ミクが答える。
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