魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~

エール

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生きる道

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「……やっぱり、そんな話聞いても、すぐに協力するなんて言えるわけないよね……」

 ライナスが困惑する様子に、ミクが悲しそうにそう言葉にした。

「……いや、協力する。ちょっと話が壮大すぎて、驚いただけだよ。なぜだか分からないけど、僕をそこまで持ち上げてくれるなら、そうしないわけにはいかない」

「えっ……ちょ、ちょっと待って!? 未踏破、最難関の遺跡に挑むことになるのよ?」

「ああ、それは聞いた。でも、それでメルさんが普通の体に戻れるんだったら……」

 ライナスがあまりに簡単に答える様を見て、ミクは、彼が状況を正確に把握できておらず、かつ、なにか意地になっているようにも感じてしまった。
 困り顔で姉の顔を確認する。
 メルは、そんな二人の関係を、微笑ましく見つめているようだった。

「ミク、良かったね。ライナス君、協力してくれるって。……でも、私のためにって言うのは本音じゃないでしょう? 半分は、ミクに気に入られたいから、じゃないかしら?」

「い、いえ、そういうわけじゃ……」

 ライナスが慌てて手を交差させる……しかし、その顔は真っ赤になっている。

「そうなの? でも、女の子から一緒に二人で旅に出たいって言われて、即、協力するっていうことは……ミクのこと、気に入ってくれているってことよね?」

「ちょ、ちょっと……からかわないでください……それより、お二人こそ……どうして、そんな重要な話を僕なんかにしてくれたんですか? まだ出会ってそんなに日が経っているわけでもないのに……」

 ライナスからすれば、そちらの方がよほど不自然だった。

「……それもそうね。どうしてかしら? ……強いて言えば、『タイミング』と『能力』、『人柄』……そんなところかしら?」

「……いや、それだけ聞いても……」

 ライナスには理解不能だ。

「じゃあ、まず『タイミング』から話すわね……前から行っているように、ミクは天才的な魔道具作成のセンスを持っている。加えて、資材もある程度揃えられる恵まれた環境にあったの。それで、ミク自身の防御力・戦闘能力を大幅に向上させる、専用の装備……ううん、兵器と呼べるものを開発した。それで実戦に出れば、三つ星ハンターぐらいにならすぐになれるほど。そのテスト・実戦も兼ねて、ハンターとして冒険に出たがっていた。でも、さすがに一人旅は危険だから、私も止めたし、本人も躊躇した。誰か、信頼の置けるパートナーになってくれないかなって、ずっと言っていたの。そこにライナス君が来た……ミクが居ないときだったけど、一目でミクが気に入りそうな感じだと思った。それに、前も言ったように、特別な何かを貴方に感じた……瞳を覗くと、その奥に驚くほどの魔力を秘めていることが分かった。でも、それを生かし切れるのか、実力はまだ未知数……だから、まず私があなたのことを確かめたかった」

「僕に、魔力……それは前も聞いたような気がします。でも、確かめるって、どうやって……」

「ただ、単純に『アミュレット・オブ・ザ・シルバーデーヴィー』を渡しただけ。体内に魔力を宿す貴方なら、使えるのは分かっていたから。それを、どんなときに、どう使うか確かめたかった……その機会は、すぐに訪れた。貴方は、自分だけなら脱出できるはずの迷宮で、毒に犯された仲間を助けるために、百万ウェンの借金を負う覚悟で私を呼び出した」

「……それは、まあ……無我夢中でしたから……」

 ライナスが、少し戸惑ったように話した……メルの気まぐれ、とも思える行動に、そんな意味があったと知らなかったからだ。

「そして、やはり仲間を助けるために、あのスケルトン軍団の中に、私と一緒に飛び込んだ……その剣技もなかなかのものだった。装備が貧弱であることを考慮すれば、星二つあってもおかしくない戦いぶりだったと思うわ。まあ、ここまでで、人柄と能力も、ある程度把握できたのよ」

「……そんな、僕なんかまだまだ……」

「そうやって謙遜するところも……って、三つ星のグリントさん達の戦いぶりを見た後だったら、確かにそう思うかもしれないけどね。それでその後、正直にお金がないことを打ち明けに店まで来た。そのとき店番していたミクは、案の定、貴方のことを気に入ってしまった」

「なっ……ちょ、ちょっと、それは……その……いい人そうだな、って思ったっていうことで……」

 今度はミクが赤くなる番だった。

「でも、それだけではまだちょっとミクを任せられないかな、と思ったの。まだハンターとしての実績もほとんど無かったしね。それで、ちょうどミクがグリントさん達のパーティーにライナス君を紹介したっていう話を聞いて、どんな結果を得てくるのか楽しみにしていた。まあ、彼らにも手に余るガーディアンが居たせいで、また私が出向くことになったけど……それを差し引いても、新人のハンターとは思えないほどの報酬を得ることができた。戦いぶりも、グリントさん達が認めるほどだった……貴方より先にこの店に来て、ミクに貴方の活躍を報告していたのよ……それを聞いて、ミクがどれだけ嬉しそうにしていたことか。まあ、別の女性をスライムの酸からかばって鎧をダメにしたって聞いたときは、ちょっと妬いていたみたいだけど」

「……も、もう、止めてって!」

 ミクはずっと真っ赤だ。

「まあ、その行動もあって、人柄もミクを任せられそうって思ったの。しかも自力で新人ハンターとしては十分な収入も得たし、実力も三つ星ハンターのお墨付きで……しかも、いざというときに私を召喚できる。これに関してはミクもできるんだけど、例えばどちらかが気を失ったりして私を呼び出せない状況に陥る可能性もあるわけだから、二人ともっていうところが大きいの」

 メルのその言葉を聞いて、ライナスはようやく理解した。

「……なるほど、僕かミクのどちらかがメルさんを呼び出せられれば、どんな強敵相手でも遅れを取らない……そしてメルさんを呼び出せる人は他にほとんどいない。それならば、僕が選ばれた理由も納得ができます」

 自分の実力が過大評価されたわけではない。
 単に、わずかに流れる貴族の血のおかげで体内に魔力を持っており、それが理由……つまり、運の要素が強いのだ……ライナスはそう考えた。

「まあ、あとはミクのお気に入りだから、っていうのも大きいけどね」

「……もう、ほんとに知らないから!」

 少し拗ねたようなミクに、ライナスは苦笑した。

「……でも、ライナス君の気持ちも大事なの。さっき、協力するって即答してくれたけど……少なくとも、私は今まで言ったようにちゃんと時間をかけて考えた上で、ライナス君を誘ったのよ……貴方は、それでいいの?」

 その言葉を投げかけたときのメルの表情は、それまでとは打って変わって、真剣そのものだった。

「はい、それでいいと思っています……まず第一に、僕は貴方に、仲間の命を救ってもらった。それだけで大きな恩です。そして第二に、祖父や父から、『騎士道に恥じぬように』、とずっと言われていました……仕えるべき主君はおらず、しがないハンターとして暮らしていくことになるのかと思っていましたが……ひょっとしたら、これが僕が生まれてきた使命だったのかもしれません」

 家を出たとは言っているが、元々はクリューガー伯爵家の姉妹だ。
 恩もある。
 しかも、メルはその身に大きな試練を課せられ、さらには、七大神器の一つを入手しようとまで考えているのだ。

 自分の生きる道を見つけたと、彼は本気で考えていた。
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