前世が魔王のようですが、よく分からないので自由気ままに暮らしたいと思います

リヒト

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一章 記憶と魔力の目覚め

魔王の力

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 翌日、ソフィアはエレナと公園で遊んでいた。

「ねえ、また魔法教えてよ」
 昨日はあんなことを言っていたのに、今日はまた魔法が使いたいらしい。

「いいよ」

 ソフィアは快く引き受けた。彼女は今とても気分が良かった。

「じゃあ、まずはお水から」

 そう言ってソフィアは手の中に小さな水球を作り出す。エレナもそれに続いて同じものを作る。

 しかし、エレナのそれはソフィアのものより少し小さめだった。

「う~ん。まだ魔力が上手く制御できないのかな?」

「ソフィアちゃん。もっと他の魔法教えて~」

 そう言ってエレナはソフィアにもっと魔法を教えてもらいたがる。

「うーん」

 ソフィアはどの魔法が良いかと考える。

「えーと。あっ、あれはダメだ」

 ソフィアの頭に浮かんだのは、攻撃魔法。そんなものはここで使っては行けない。
 ソフィアは頭をブンブンと振るとその考えを消す。

「あ、あれならいいかも」
 それは今や忘れ去られた古の魔法で、光の粒子を空に花のように飛ばすというもの。花火バースという魔法だ。

「いい?エレナちゃん。これはお母さんにもお父さんにも言っちゃダメだよ」
 ソフィアはエレナにそう釘を刺すと、彼女から少し離れ。魔力を練り始める。
「それは、大空に咲く灯の花・バラ」

 彼女の掌に巨大な六連結の魔法陣が出現すると、手に光が集まり、光の塊が形を成そうとするが……

「あれ?」

 その光は途中で弾けて消えてしまう。

「う~ん、なんでだろ?」

「え?何それ?」

「ごめん。失敗しちゃった」

「えー」

 エレナは不満そうだ。

「じゃあ、もう一回!」

 ソフィアはもう一度挑戦する。

 再び魔法陣が展開されるが、やはり途中で消えてしまう。

「なんでだろう?」

 ソフィアは再び考える。しかし、答えは出ない。彼女は魔王の膨大な魔力をその身に宿してはいるが、まだ制御しきれてはいないのだ。

「う~ん」

「ねぇ、ソフィアちゃん。私に使える魔法教えてー」

 エレナは諦めず聞いてくる。

 ソフィアの答えは簡単だった。

「どんな魔法がいい?」

「う~ん。何が出来るかわからないから、ソフィアちゃんが良いと思ったやつ!」
「わかったー」

 そう言ってエレナは元気を取り戻したようだった。

「それじゃあ」

 そう言ってソフィアは手を前に出すと魔力を掌に集中させる。

 体外に放出された魔力が空気と混ざり、火花をバチバチと鳴らす。それを頭の中で制御する。

「行くよー!!」

 ソフィアの手から空中へと放出された魔力はやがて一つの大きな火の塊となった。

 辺りが明るくなるほどのその光にエレナは目を奪われる。そして、それは上へと打ち上がるとその姿をさらに大きくする。

「綺麗」
 エレナからはそんなつぶやきが漏れるのだった。

 そんな時だった。
 突然少女の悲鳴が上がる。その悲鳴は公園から少し離れた所から聞こえたのだ。

「危なそうだから帰ろ」

 ソフィアとエレナはその場から去ろうとする。
 しかし、公園の入口にその当事者であろう人達がいた。

 ソフィアと同い年ぐらいの少女と、一人の男だった。
 先程の悲鳴はその少女のものなのだろう。
「おい、お前!こっちに来い」

 そんな怒号が飛ぶ。
「嫌!辞めてください」

「うるせぇ、さっさとこっち来い!」
 男は彼女の手を強引に引っ張った。

「キャッ」

 そんな悲鳴と共に少女の体は宙を舞った。そして、そのまま地面へと落下する。

 ソフィアはそんな光景を目の当たりにして、その身体が自然と動いた。

「エレナちゃん!私ちょっと行ってくるね」

 そう言ってエレナを置いて少女の元へと地を駆けた。

「ちょっと、何やってるんですか!」

 そんな声をソフィアはあげる。

「あ?なんだお前」

 男はソフィアの方を向く。

「その女の子嫌がってるじゃないですか!」

「うるせぇ、このガキが」

 男はソフィアを殴ろうとする。

 だか、ソフィアはそれを避ける。

「クソガキが」
 しかし、それでその男は怒ったようで、更に追撃を仕掛けて来る。
 ソフィアはそんな攻撃を全て避けた。

 しかし、男が魔法を使おうとしていることにソフィアは気付けなかった。

拘束バーイベ
 彼が発動するとエレナの近くに表れた魔法陣の中から縄が生きているかの如く動き出し、エレナに絡み付いた。

「きゃっ。なにこれ」

「くそ、手こずらせやがって。動くんじゃねぇぞ。」

 ソフィアにはエレナに気を向けていなかった。はなれていたし、そもそも自分は魔王の力があるからと、油断していたのだ。

「おい、クソガキ。友達がどうなってもいいのか?」

「この、卑怯もの!」

 ソフィアは感情のまま叫ぶ。しかし、彼女には何もできない。エレナに届く前に結界の縄に拘束されてしまうだろう。

「うるせぇ。ほらお前も来い」

 男はソフィアと同い年程度の子供を無理矢理に引っ張ると、何処かに消えていった。

「くそ、くそくそくそ」
 ソフィアは悔やんだ。エレナが連れていかれてしまったことに。こんな顛末を引き起こしてしまった自分の弱さを。
 そしてソフィアは決意するのだった。もう魔王の力を出し惜しみしないと。


 ***

「ほらここに入れ」

 ソフィア達達を連れ去った男は町外れの小屋にいた。
 その中には元々男が一人先に来ていた。

「ほんとにこんなガキが高く売れるのか?」

「馬鹿か、お前はこいつをよく見ろ」
 そう言って元からいた男はソフィアが助けようとした、女の子の髪をかきあげた。エルフだ。

「こういうのは物好きに高く売れるんだよ」

「へぇー。そうなんだ。私にも売ってくれるよな?」

「なっ」

 扉の開く音などしなかった。しかし、振り向くとそこには身体から禍々しいまでの魔力を放っているソフィアがいた。

「私の友達に手を出してどうなるかわかってるよな?」

「なんだ?調子に乗りやがって」

 男は剣を抜き戦闘態勢に入る。

 男はソフィアに飛び掛る。しかしソフィアはそれを指で挟んで止めた。

「な、なにぃ」
 そんな超人的なこと男達は考えられず、思わずにそんな声が漏れる。

 ソフィアはその刃の部分を手で掴み、思いっきり引っ張る。手からは血が滴っているが気にしない。引き寄せられた男の溝内に蹴りを入れる。

 そして更に追撃として顔面を思いっきり掴む。そしてなんとも火炎バリをその顔面に叩きつける。辺りが炎に包まれ、その男の顔は肌が焼け、皮がめくれている。髪が少し燃えている。

 その時、もう一人の男が「うらぁぁ」と震えた声を出しながら斬りかかってくる。ソフィアは振り返りもせず、それを避けるとその剣は男の焼け焦げた顔に刺さる。

「な、なんで」
 男からそんな声が漏れる。

「なんでってなんだよ。自業自得だろ」
 ソフィアは回復レイの魔法でその男の怪我を治す。当分は起きなそうだ。

「さぁ、どうする?痛い目見たくないなら情報を話せ」

 ソフィアはそう言って笑いかける。その微笑みは見るもの全てに恐怖を覚えさせた。

「あ、話す!話すからやめて」
 彼は床に座り込むとボロボロと泣き、そして話し始める。その笑顔に全てを見透かされている。そんな気までしてきた。

「俺たちは闇ギルドから依頼されたんだ」

「闇ギルド?」

「そうだ」

 ソフィアはそれを知らなかった。

「それで、なんで彼女を攫ったんだ?」

「それは、あのガキのエルフの耳が目的だったんだ。闇ギルドはエルフが高値で売れると踏んでるらしい。」

「そんな理由で……」

「おい、喋っただろ?もう助けてくれるよな?」

 ソフィアはそんな言葉が聞こえていないのか、すぐに魔法を発動した。それは拘束バーイベ

「うわぁ」

 そんな声が男から漏れると、その体は縄で縛り上げられた。
「おい、この縄を解いてくれ」

 男はそう懇願する。

「黙れ」
 ソフィアその一言にその男は体の自由が一切効かなくなる。ソフィアはその男にゆっくりと近づくと、その顔を思いっきり蹴り飛ばした。男はそのまま数メートル吹き飛び気を失った。

「エレナ」

 彼女は名前を呼ぶとエレナの縄を直ぐに解いた。

「エレナ。ごめん。私のせいで……」
 ソフィアの瞳からは大粒の涙が零れ落ちる。エレナはその涙を必死に拭く。そして言うのだった。

「私は大丈夫だよ。ソフィアちゃんが助けに来てくれるって信じてたから」

「またそんな嘘ついて。目の下真っ赤だよ」

「あのー。私も助けてくれると嬉しいんだけど」

 そう申し訳なさそうに言ったのはエレナと共に攫われていたエルフの少女だ。

「あ、ごめん。忘れてた」
 ソフィアはそう答える。

「えーと、私はエルフのハミルっていうの」
「うん。よろしく」
 そう言ってソフィアはハミルの縄を解く。

「おい大丈夫か?」
 いきなり小屋の扉が開き、武装した兵が数人とエルフが一人入ってきた。

「お父さん!」
 ハミルは彼に抱きつく。

「どうしてここが?」

 ソフィアは兵に聞く。

「なあに、たまたま俺たちが人攫いを追う側だっただけさ」

 この通りだ、と彼は笑顔を見せた。

「それで嬢ちゃん誰に助けられたんだ?」

 兵の一人がソフィアに聞く。

「えっと」

 ソフィアが答え困っていると。

「この子が助けてくれたの」

 ハミルはそうしてソフィアに指をさす。

「本当に?」
 兵の一人が困惑の声を漏らす。そらそうだろう。彼女はまだ子供だ。そんな子供が一人で人攫いを退治出来るはずがない。

「だから言ってるじゃんー」

 ハミルは困ったように言う。

 兵達は混乱した様子で唸っている。

 そんな状況にハミルは困っている。

「ああ、そのエルフの嬢ちゃんが言ってることが本当だったら連れてこいって言ってるんだ」

 するとハミルはそっとソフィアを押すと。

「この人が助けてくれたよ」

 兵達にそう言った。

「娘がこう言ってるんだが本当なのかい?」
 ハミルの父はソフィアに問い掛ける。

 その言葉に反応しソフィアに期待が集まる。

「うん。そうだよ」

 もう隠し通す事は出来ないと悟ったのかソフィアは遂に打ち明けた。

「そうか、じゃあお礼を言いたいからお家まで案内してくれるかな?」
 ソフィアが頷き家を案内する。

 家は攫われた公園からそう遠くないところにあった。

「ただいまー」
 ソフィアは、家の鍵を開け中へはいると母親にそう言った。
「はーい。おかえりなさい」

「ちょっとお母さんいいですか?」

 家にまで着いてきた兵が家の中へそう問いかけた。

「はい。どうかしましたか?」

「この度はありがとうございました」
 と頭を下げた。
 しかし、その言葉にソフィアの母親は驚きを隠せない。

「えっ?」

「だから、この子が人攫いをやっつけたんですよ」

 そんな兵の言葉にさらに困惑した。

「この子が?」

 母親は兵に尋ねると。

「はい」と肯定した。

 母親は慌ててソフィアに詰め寄る。

「ねぇ、ソフィア本当なの?」

 そんな勢いに気圧されながらもソフィアは答える。

「うん」

「無茶なことしたらダメよ」
 ソフィアは母親に怒られてしまう。

「うん。ごめんなさい」

「それで人攫いの事なんですけど彼らはギルドで賞金が懸かっていまして」

 兵の言葉に母親が反応する。

「あら、それなら頂きますけど」

 そんな反応を返してしまう。

「それではギルドまで来て頂けますか?」

「分かりました」

 サラは玄関の魔法陣へ魔力を込める。
 すると家中の戸締りが完了した。

「ではいきましょうか」
 兵はギルドへソフィアたちを案内し始めた。

「ねえ。ソフィア、お願いだからこれからは危ない事に巻き込まれないでね?」

 ソフィアは母からのその忠告に「はい」、と凹みながら言うしかなかった。

「分かればそれでいいのよ」
 サラはソフィアの手を握る。ソフィアもそれを力強く握り返した。

「着きました。ここです」

 ギルドの中へ入り、更に奥へと進むと兵は扉をノックする。

「はい。どうぞ」

 中から男性の声が聞こえた。
 扉はゆっくりと開いた。兵は自分の持ち場に戻ったのか、何処か別のところへ行ってしまった。そして二人はその部屋へと入って行く。

「おかけになってください」 
 部屋の中に居たギルド内でも位の高そうな男はサラ達にそう言った。

「それで人攫いの件なんですけど」
 男は直ぐに本題に入った。人攫いを連れて帰った兵士が、この男に話を通していたのだろう。

「それで証言が正しいか分からないので、彼女にそれだけの力があるのか確認させていただいてもよろしいでしょうか」

「確かめるって一体どの様にです?」
 サラは男に聞き返す。

「実技です。こちらの兵との模擬戦闘という形になるかと」

「断らせてもらいます」
 サラは娘に危険なことをさせる訳にはいかず、きっぱりと断るのだった。

「お母さん。私やってもいいよ?」

 ソフィアがそう口を挟む。

「ダメよ、危ないわ」

 そんなソフィアに母親は反対する。

「お願い。私は大丈夫だから」
 ソフィアが何故やりたがっているかと
 いうと、自分の魔王の力がどこまで通用するのか試してみたいからだ。

 そんなソフィアに母親は渋々了承する。

 戦う準備が整うと、ギルドの建物にある闘技場のような部屋へ通される。

 そこには、木剣と盾を持った兵が立っていた。

 ソフィアにも同じものが支給されている。

「では、始めましょうか」

「お願いします」

 ソフィアはそう言うとその木剣を構える。

「では行きますよ」

 そんな兵の言葉にソフィアは頷くのだった。

 その合図と共に男は一瞬でソフィアまで詰め、斬りかかる。
 しかしいとも簡単に木剣で受け止められてしまう。

 ソフィアはそれを下方斜め方向へと押さえ付ける。
 それは徐々に下へと下がっていき、それが下がりきった時、左手に持つ盾を投げ捨てた。

 それが目眩しとなり、ソフィアは相手の懐へ入り込む。そしてその腹に腹に思いっ切り拳を入れる。

「うぐっ」

 男はそんな声を漏らし、その場に倒れ込む。

「勝者ソフィア」

 そんな声がすると、兵達は拍手をするのだった。

 その後、ギルドの男に人攫いを捕まえた事と賞金の受け取りをお願いした。

「はい、確かに」

 男はその金の入った袋をサラに渡すとそう答える。

「それでは」

 サラはそう言うと二人で家路に着いたのだった。

 ***

「そうか~。ソフィアはそんな強いんだな」
 夕食どき、ソフィアは今日の出来事を仕事から帰ってきた父親に全て話した。

「ちょっとあなた。ちゃんと注意してよ。ソフィアが戦うことに興味を持っちゃったらどうするの?」

 母親はそんな父親に言う。

「いや、ソフィアは強いぞ」

 そんな呑気な事を言っている。

「もう知らない!」

「おい、ちょっとからかっただけだろ?」

「もう」
 サラは呆れたように呟いた。別に仲が悪い訳ではなさそうだ。

「ソフィア、もう夜も遅いし寝なさい」

「え、あ。はーい」

 そんな両親の様子を見てソフィアは部屋に向かった。

「ねぇ。本当に大丈夫なの?」

「大丈夫だよ」
 そう優しく語りかけるのだった。
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