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序
始まりはいつも唐突ではない
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俺は白い空間にいるようだ。
ようだ、というのもこの状態を俺自身よく把握していないからであり、そもそもこれを「白」と表現していいのか確証がなかったからだ。
おそらく、客観的に見ればこの表現であっている。しかし、主観的に見たとき、俺にはどうしてもこれが「白」には感じられなかった。
さて、この状況を理解するためにこうなる前のことを思い出してみよう。
――確か、俺は街の大通りで信号を待っていた。そして信号が青に変わり横断歩道を渡っていた。そのとき、俺はトラックに引かれそうになったんだった。……いや、まて。流石におかしいだろう。俺はあのときちゃんと避けたはずだ。……あれ? 反対車線からもきてなかったか? 車。…………来てたな。
てことは俺はそこで跳ねられたってことか。だとするとここは天国か、いやないな、地獄か。とすると地獄は明るいことになる。知らなかったな。
とはいえ、このあと俺はどうすればいいんだろう。体は動かないし出る手だても思い付かない。
「聞こえるかの? 儂の声が」
……誰だ?
「……もう少し別の反応をせんか」
そう言われてもな、興味がない。
「そうか、其方は難儀な性格をしとったな」
「これは生まれつきだ。仕方ないだろう」
あ。声、出せたんだ。
「では興味を持つようなことを言ってやろう」
そう言って、そいつは俺の方を指差す。
「まずは東西南北 錬磨(よもひろ れんま)。其方は死んだ」
うん。そんな気がしてた。
「そして人生をやり直すチャンスを得た」
「…………は?」
今こいつ、何て言った?人生をやり直す?
「左様。どうじゃ? 少しは興味を持ったか?」
「……あぁ、バッチリだ」
そんなこと言われれば誰でも興味を持つだろう。
そんなわけでまずは目の前にいるこの爺さんから見ていこう。
まず、年の頃は70~80歳くらい。背はあまり高くはなく、150半ばだろう。白髪を後ろで結っており、その顔には皺が刻まれている典型的なおじいちゃんだ。
「どうやら興味は持ってくれたようじゃな。では詳しくはなしていこう」
そのあと言われた内容を要約すると、
1 もとの世界に生き返るわけではなく、別の世界への転生であること。
2 そこはオルテインという所謂剣と魔法の世界であること。
3 その際、身体能力の底上げに加えて、1つだけ好きな魔法を与えてくれる。
とのことだった。最初に剣と魔法の世界と言われたときには少し驚いたが、今までの世界で2度目を生きるよりも別の世界に行った方が面白そうではあるため、素直に嬉しかった。
そして大切なのは3つ目だ。これはどういった風の神の吹きまわしなのだろうかというくらいの条件である。
「1ついいか?」
「なんじゃ?」
「ここまでしてくれる理由を聞きたい。何故俺にここまでしてくれるんだ? それとも死んだ者には皆このようなことがあるのか?」
聞くと、少し間を置き、答え始めた。
「まず2つ目から答えるが、今回は特例じゃ。1つ目の方は、まぁ其方だからだ、としか言いようがない」
「どういうことだ?」
「詳しくは語れん。此方にも都合があってな」
「そうか。ならさっさと準備をさせてくれ。何か好きな魔法をくれるんだろう?」
「そうじゃな。此方も時間は惜しい」
そう言うと、俺の前に透明のパネルが現れ、そこに選択可能な魔法が写し出される。
ふむ。基本のエレメントは全てあるみたいだな。あとは「聖」だとか「召」といったものがあるようだ。その中で俺が選んだのは―――
「この、付与ってやつにしてくれ」
「ほう。して、それを選んだ理由はなんじゃ?」
「答える必要があるのか微妙だが、簡単に言えば第3者的な力を使ってみたかったからだ。殆どのことは1人でできたしな」
「そうか。ではそのようにしておくぞ。あとは何かあれば答えるが」
「時間が惜しいのだろう? なら向こうに着いたときにでも本かなんかにまとめて近くに落としといてくれ。勝手に読ませてもらうからな」
「そのようにしておこう。では儂からはこのくらいじゃ。準備が良ければ飛ばすぞい」
「あぁ。頼むよ。それなりに感謝しとくよ」
そう言ったのを最後に、その爺さんとの会話は終わり、俺の意識はそこで途切れた。
――――――――――――――――
「なんとか送り出せたか。ヒヤヒヤしたわい」
まったく、彼奴がこういったことに興味を持つタイプでよかったわい。彼奴にはあの世界には合わん。何故あの世界に生まれたのか未だに理解できん。
そう、始まりは彼奴が4歳のころじゃった。確か今が15歳、今年で16になるはずじゃから、だいたい10年くらい前のことじゃったか。儂が初めて彼奴を知ったきっかけは本当にただの気まぐれじゃった。いつも通り、「神」としての仕事をしているとき、ふと目に留まったんじゃ。彼奴が遊んでいるところが。
いや、本人からすれば遊んどったんじゃろう。じゃが、その遊び方がおかしかった。公園内を駆け回っていたのじゃ。もちろんそれだけなら何もおかしなことはない。遊具同士を飛んで渡っていることが無ければ。遊具と遊具の間は近くても5~6メートルは開いている。その幅を小さな子供が飛んで渡れるはずがない。
それだけではない。小学校のころ、ふざけていた女子児童が校舎の3階の教室の窓から落ちたとき、たまたま近くにいたため少女を受け止めたのだかが、なんのこともなくふわりと受け止めてしまった。普通その高さから落ちれば受け止める者に掛かる衝撃もかなり強いはずだが、そんな気は一切なかった。
さらに極めつけは、強盗事件の現場にいあわせたときに、犯人の持っていた拳銃から放たれた弾を素手で掴んでしまったのだ。
これらのことを鑑みた結果、儂は彼奴を別の、彼奴に合った世界に飛ばすことを思い付いた。なんとかそちらの神に連絡して承諾を得て、今回のことに繋げることができた。
正直悪かったと思っている。じゃが、あのままこの世界で生きられては堪ったものではない。故に、悪いが彼奴にはあの世界で生きてもらうことにした。
じゃが、彼奴はこの世界よりもあちらの世界の方が幸せになれると儂は思っている。もちろん困難もあるとは思うが。
一言でいってしまえば、
彼奴には、付与魔法を使って、幸福で不幸な人生にエンチャントをして良き生を味わってもらいたいものだ。
ようだ、というのもこの状態を俺自身よく把握していないからであり、そもそもこれを「白」と表現していいのか確証がなかったからだ。
おそらく、客観的に見ればこの表現であっている。しかし、主観的に見たとき、俺にはどうしてもこれが「白」には感じられなかった。
さて、この状況を理解するためにこうなる前のことを思い出してみよう。
――確か、俺は街の大通りで信号を待っていた。そして信号が青に変わり横断歩道を渡っていた。そのとき、俺はトラックに引かれそうになったんだった。……いや、まて。流石におかしいだろう。俺はあのときちゃんと避けたはずだ。……あれ? 反対車線からもきてなかったか? 車。…………来てたな。
てことは俺はそこで跳ねられたってことか。だとするとここは天国か、いやないな、地獄か。とすると地獄は明るいことになる。知らなかったな。
とはいえ、このあと俺はどうすればいいんだろう。体は動かないし出る手だても思い付かない。
「聞こえるかの? 儂の声が」
……誰だ?
「……もう少し別の反応をせんか」
そう言われてもな、興味がない。
「そうか、其方は難儀な性格をしとったな」
「これは生まれつきだ。仕方ないだろう」
あ。声、出せたんだ。
「では興味を持つようなことを言ってやろう」
そう言って、そいつは俺の方を指差す。
「まずは東西南北 錬磨(よもひろ れんま)。其方は死んだ」
うん。そんな気がしてた。
「そして人生をやり直すチャンスを得た」
「…………は?」
今こいつ、何て言った?人生をやり直す?
「左様。どうじゃ? 少しは興味を持ったか?」
「……あぁ、バッチリだ」
そんなこと言われれば誰でも興味を持つだろう。
そんなわけでまずは目の前にいるこの爺さんから見ていこう。
まず、年の頃は70~80歳くらい。背はあまり高くはなく、150半ばだろう。白髪を後ろで結っており、その顔には皺が刻まれている典型的なおじいちゃんだ。
「どうやら興味は持ってくれたようじゃな。では詳しくはなしていこう」
そのあと言われた内容を要約すると、
1 もとの世界に生き返るわけではなく、別の世界への転生であること。
2 そこはオルテインという所謂剣と魔法の世界であること。
3 その際、身体能力の底上げに加えて、1つだけ好きな魔法を与えてくれる。
とのことだった。最初に剣と魔法の世界と言われたときには少し驚いたが、今までの世界で2度目を生きるよりも別の世界に行った方が面白そうではあるため、素直に嬉しかった。
そして大切なのは3つ目だ。これはどういった風の神の吹きまわしなのだろうかというくらいの条件である。
「1ついいか?」
「なんじゃ?」
「ここまでしてくれる理由を聞きたい。何故俺にここまでしてくれるんだ? それとも死んだ者には皆このようなことがあるのか?」
聞くと、少し間を置き、答え始めた。
「まず2つ目から答えるが、今回は特例じゃ。1つ目の方は、まぁ其方だからだ、としか言いようがない」
「どういうことだ?」
「詳しくは語れん。此方にも都合があってな」
「そうか。ならさっさと準備をさせてくれ。何か好きな魔法をくれるんだろう?」
「そうじゃな。此方も時間は惜しい」
そう言うと、俺の前に透明のパネルが現れ、そこに選択可能な魔法が写し出される。
ふむ。基本のエレメントは全てあるみたいだな。あとは「聖」だとか「召」といったものがあるようだ。その中で俺が選んだのは―――
「この、付与ってやつにしてくれ」
「ほう。して、それを選んだ理由はなんじゃ?」
「答える必要があるのか微妙だが、簡単に言えば第3者的な力を使ってみたかったからだ。殆どのことは1人でできたしな」
「そうか。ではそのようにしておくぞ。あとは何かあれば答えるが」
「時間が惜しいのだろう? なら向こうに着いたときにでも本かなんかにまとめて近くに落としといてくれ。勝手に読ませてもらうからな」
「そのようにしておこう。では儂からはこのくらいじゃ。準備が良ければ飛ばすぞい」
「あぁ。頼むよ。それなりに感謝しとくよ」
そう言ったのを最後に、その爺さんとの会話は終わり、俺の意識はそこで途切れた。
――――――――――――――――
「なんとか送り出せたか。ヒヤヒヤしたわい」
まったく、彼奴がこういったことに興味を持つタイプでよかったわい。彼奴にはあの世界には合わん。何故あの世界に生まれたのか未だに理解できん。
そう、始まりは彼奴が4歳のころじゃった。確か今が15歳、今年で16になるはずじゃから、だいたい10年くらい前のことじゃったか。儂が初めて彼奴を知ったきっかけは本当にただの気まぐれじゃった。いつも通り、「神」としての仕事をしているとき、ふと目に留まったんじゃ。彼奴が遊んでいるところが。
いや、本人からすれば遊んどったんじゃろう。じゃが、その遊び方がおかしかった。公園内を駆け回っていたのじゃ。もちろんそれだけなら何もおかしなことはない。遊具同士を飛んで渡っていることが無ければ。遊具と遊具の間は近くても5~6メートルは開いている。その幅を小さな子供が飛んで渡れるはずがない。
それだけではない。小学校のころ、ふざけていた女子児童が校舎の3階の教室の窓から落ちたとき、たまたま近くにいたため少女を受け止めたのだかが、なんのこともなくふわりと受け止めてしまった。普通その高さから落ちれば受け止める者に掛かる衝撃もかなり強いはずだが、そんな気は一切なかった。
さらに極めつけは、強盗事件の現場にいあわせたときに、犯人の持っていた拳銃から放たれた弾を素手で掴んでしまったのだ。
これらのことを鑑みた結果、儂は彼奴を別の、彼奴に合った世界に飛ばすことを思い付いた。なんとかそちらの神に連絡して承諾を得て、今回のことに繋げることができた。
正直悪かったと思っている。じゃが、あのままこの世界で生きられては堪ったものではない。故に、悪いが彼奴にはあの世界で生きてもらうことにした。
じゃが、彼奴はこの世界よりもあちらの世界の方が幸せになれると儂は思っている。もちろん困難もあるとは思うが。
一言でいってしまえば、
彼奴には、付与魔法を使って、幸福で不幸な人生にエンチャントをして良き生を味わってもらいたいものだ。
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