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小助くんと雪の中のぼうけん

小助くんとフブキちゃんの大ぼうけん(その1)

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 小助とワン太は、はげしい雪と風でふぶきになっている中でも元気いっぱいに森の中であそんでいます。しかし、どんなに走っても前からふきつける風ですすむことができません。 

「こちゅけくん(小助くん)、大じょうぶ?」 
「大じょうぶ! 大じょうぶ!」 

 雪がはげしくふっても、すさまじい風がふいても、小助たちは前のほうへ行こうといっしょうけんめいになっています。 

 そんな時、きものをみにつけたようせいの女の子・フブキが空中にあらわれました。フブキが目の前にいるのを見て、小助とワン太はえがおで大よろこびしています。 

「フブキちゃん、いっちょにあちょぼう(いっしょにあそぼう)!」 
「それじゃあ、小助くんたちをわたしの家へつれて行ってあげるよ!」 

 フブキは、キラキラと白くかがやくものをりょう手で小助たちに向かってふりかけました。すると、小助とワン太はみるみるうちにフブキと同じくらいまで小さくなりました。 

「わあ~っ! フブキちゃん、でっかい! フブキちゃん、でっかい!」 
「わたしがでっかくなったわけではなくて、小助くんたちが小さくなったんだよ」 
「ちっちゃいの?」 
「小さくなっただけじゃなくて、わたしみたいに空中をとぶことができるよ。小助くんもワン太くんも、上のほうへとんでみてね」 

 小助たちは、フブキの言う通りに空中に向かってとび上がりました。そうしたら、すさまじい雪や風の中でも空中にういたままでいることができます。 

「わ~い! ういてる! ういてる!」 
「さあ、わたしについてきて」 

 フブキがすさまじい風と雪の中をとんでいくのを見て、小助とワン太はおいていかれないように後ろからついて行きます。 

 しばらくとんでいると、山のとちゅうに雪におおわれた家が見えてきました。フブキがくらしているその家は、やねもかべも白い雪でつくられています。 

「フブキちゃん、ここなの? ここなの?」 
「ここがわたしの家なの。お父さんもお母さんもここにいるよ」 

 フブキは、さっそく雪の引き戸をあけることにしました。家の中を見回すと、そこにはやさしそうなお父さんとお母さんのすがたがあります。 

「とうちゃ! かあちゃ!」 

 小助とワン太は、ようせいのお父さんとお母さんをかわいい顔でじっと見ています。よく見ると、小助の家にあるようないろりがどこにも見当たりません。 

 こんなにつめたい雪の家ですが、フブキのかぞくはさむがらずにいっしょにくらしています。ようせいのお父さんとお母さんは、はじめて見る人間や犬の子どもにやさしい声をかけています。 

「ぼうやたち、こっちへおいで」 

 小助はワン太といっしょにフブキのとなりへすわると、ようせいのお母さんのほうをじっと見つめています。 

「どうしたの?」 

 お母さんは、自分のほうに目を向ける小助のようすが気になっているようです。そんな小助は、ようせいのお母さんにいつものおねだりをしようと元気な声を上げました。 

「かあちゃ! おっぱい! おっぱい!」 
「ふふふ、ぼうやはおっぱいをのむのが大すきなのかな?」 
「うん!」 

 こうして、小助はようせいのお母さんにだかれながらおっぱいをのみはじめました。フブキは、かわいい顔でおっぱいをのみつづける小助のすがたに目をほそめています。 

「いっぱいのんで大きくなるといいね」 

 フブキは、外のようすを見ようと雪の引き戸をそっとあけました。外のほうは、あいかわらずはげしい雪がふりつづくとともに強い風がすさまじくふきつけています。 

「小助くん、おっぱいをのんだら外であそぼうよ」 
「うん! おちょとで(お外で)雪あちょび(あそび)! おちょとで雪あちょび!」 

 小助とワン太は、フブキといっしょにものすごい風がふきつづける中でふたたび雪の中であそぶために外で出ることにしました。
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