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春の山おくはにぎやか

どうくつたんけんとばけものムカデ

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 小助とワン太は、森の中をおくのほうへに向かって走っています。後ろのほうからは、子グマたちとちびっこオオカミたちがいっしょについて行きます。 

 少し先へすすむと、大きなどうくつが小助たちの目に入ってきました。このどうくつのいちばんおくにはカッパ池という大きな池があります。 

 ひさしぶりのどうくつたんけんとあって、小助は今からカッパたちと会うのがとても楽しみです。でも、ワン太はこのどうくつへ入ったことはないし、カッパたちのすがたを見たこともありません。 

「こちゅけくん(小助くん)……」 
「大じょうぶ! 大じょうぶ!」 

 小助は、どうくつを前にしておびえるワン太をえがおではげましています。どうぶつたちもあつまったところで、いよいよどうくつの中へ足を入れようとしています。 

「どうくつ、どうくつ、たのちいなあ(楽しいなあ)!」 

 カッパたちとのおすもうを楽しみにしながら、小助は元気いっぱいにすすんでいます。さっきまでくらかったどうくつの中は、いつの間にかほのかに明るくなってきました。 

 そこへあらわれたのは、かわいいおばけと火の玉のすがたです。これを見たワン太は、おびえるように小助の足にしがみついています。 

「こ、こわいよう……」 
「ワン太くん、こわくないよ」 

 ワン太は、小助からかわいい声でのよびかけを聞くとかわいいおばけの顔をもういちど見ています。 

「こわくなくてよかった……」 
「おばけさん! いっちょに(いっしょに)行こう! いっちょに行こう!」 

 かわいいおばけは、小助たちをどうくつのおくへつれていこうとあんないしています。そんなとき、おくのほうからじめんをすすむばけものムカデが目に入ってきました。 

 すると、小助はそのばけものムカデに木のほそいえだをもって近づきました。ムカデの顔につんつんさせながら、小助はキャッキャッとわらい声を上げています。 

「このチビめ、よくもバカにしやがって!」 
「わっ!」 

 おこったばけものムカデは、目の前にいる小助におそいかかってきました。小助は、ムカデのこうげきにすぐさまとびこえるようにかわしました。 

「こしゃくなチビめ、ここからにげようたってそうはいかないぜ」 

 ムカデは、向きをかえると後ろすがたの小助にふたたびこうげきしようと近づいてきました。そんな時、小助はしゃがみこむと同時に元気いっぱいの音を鳴りひびかせました。 

「プウッ! プウッ! ププウウウウウウウウウウウウ~ッ! 
「うっ! お、おならがくさくてたまらない……」 

 小助のでっかいおならは、ばけものムカデへみごとにめいちゅうさせました。ばけものムカデは、すさまじいおならのにおいにたまらないようすです。 

 そんなムカデに、小助は元気いっぱいのおならをもういちど食らわせています。 

「プウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ~ッ」 
「か、かんべんしてくれよ……」 
「またあちょぼう(あそぼう)! またあちょぼう!」 

 ばけものムカデは、これいじょうのおならこうげきにたえられなくなっておくのほうへにげていきました。小助は、ムカデがさっていくすがたを見ながらえがおで手をふっています。 
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