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春の山おくはにぎやか

小助くんはカッパずもうのよこづな(その1)

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 小助とワン太は、どうくつの中を子グマたちやちびっこオオカミたちといっしょにすすんでいます。おくのほうへたどりつくと、小助たちをまっているかのようにカッパたちが池の中から出てきました。 

「わあ~っ! カッパくん! カッパくん!」 
「小助くん、ひさしぶりだね」 

 カッパは、小さな小助のすがたを見てとてもうれしそうです。小助のほうも、カッパたちが見える前でピョンピョンとびはねながら大よろこびしています。 

「これからカッパ池のそこへつれて行ってあげるからね」 

 小助はいきおいよく池の中へとびこむと、カッパのいるところへ向かっておよいでいます。ほかのどうぶつたちも、池のそばへやってきたカッパたちのせなかにまたがるようにのろうとしています。 

 そんな中、はじめてカッパ池へやってきたワン太は水中へもぐることをこわがっているようです。 

「大じょうぶかなあ……」 
「大じょうぶだって! このカッパいけでは、水中に入ってもいきをすったりはいたりすることができるぞ!」 

 カッパの声を聞いて、ワン太もほかの子どもたちといっしょに行くことにしました。 

「それじゃあ、ぼくのせなかをしっかりもってね!」 
「うん!」 

 小助はカッパにまたがると、池の中のふかいところへ向かってもぐっていきます。やがて、いけのそこへやってくるとカッパたちがならんでいるすがたが見えてきました。 

「カッパずもうのよこづながやってきたぞ!」 

 カッパたちは、なかまがつれてきた小助を見ながら手をふっています。小助のほうも、自分をまってくれているカッパたちにかわいいえがおを見せています。 

 すると、白いひげを生やしたおじいさんカッパが小助をやさしくむかえてくれました。 

「小助くん、ひさびさにここへやってきたんだね」 
「おちゅもう(おすもう)! おちゅもう!」 
「はっはっは! 小助くんはおすもうをするのが大すきだものね」 
「うん! 大ちゅき(大すき)!」 

 土ひょうのほうでは、カッパどうしがおすもうしているのが見えます。小助は、このようすをじっと見ながら早くおすもうがしたいと思っています。 

「カッパのすけのかち!」 

 カッパたちがおすもうでもり上がる中、小助はすぐに土ひょうの中へ入ることにしました。このすがたに、カッパたちも大きなはく手をおくっています。 

「かわいいぼうやがよこづなとしてお出ましだぞ!」 
「元気いっぱいのおすもうをしてくれよ!」 

 小助は、みんなからのおうえんをうけながら土ひょうであいてを見合いながらかまえています。あいては、おとなカッパのカッパまるです。 

「小さい子であろうと、よこづなをあいてにまけてたまるか!」 
「おちゅもう! おちゅもう!」 

 いよいよ、はらがけ1まいの小さな人間の男の子と、カッパずもうで強さを見せるカッパまるによるおすもうがはじまります。 

「はっけよい! のこった、のこった!」 

 ぎょうじのかけ声と同時に、小助とカッパまるはおたがいにぶつかり合いながらあいての体をつかみにいこうとしています。 

 カッパまるは小助を土ひょうの外へ出そうとしますが、あいての力強さになかなかうまくいきません。すると、小助はカッパまるをすさまじい力で前へおしつづけています。 

「うんしょ! うんしょ! う~んしょ!」 
「うわっ、うわわわっ……」 

 小助は、よこづなとしてのみごとなすもうでカッパまるを土ひょうの外へおし出しました。さすがのカッパまるも、小助のすさまじい力強さの前にはかないません。 

「こ、これがよこづなというものか……」 

 カッパまるがくやしがっていると、小助はかわいいえがおで右手をさし出しました。 

「お友だち! お友だち!」 
「ぼうや、おれとお友だちになりたいのか?」 
「うん!」 

 こうして、小さなよこづなの小助はカッパまるとあくしゅしてお友だちになりました。 
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