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小助くんと夏のどうぶつたち

子グマたちとこわいおばけ

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 ま夜中になると、森の中はぶきみなほどのしずけさがただよっています。どうぶつたちでにぎわう昼間とはちがって、夜はコオロギやスズムシがいっせいに音をひびかせています。 

 こん虫たちの音色は、ぐっすりとねむっている子どもたちの耳元にとどいています。お母さんのそばですやすやとねている子グマたちにも、ちびっこオオカミたちにも虫のやさしい音につつまれています。 

 そして、山おくにある小さな家の中では小助がお母さんのとなりですやすやとねむっています。そんな小助は、元気なゆめを見ているたびにかけぶとんをけとばしてしまいます。 

 かけぶとんがめくれても、小助はいつもかわいい顔を見せながらゆめの中であそんでいます。 

 そんな夜中に、青い火の玉といっしょにおばけが空中をすすみながらやってきました。おばけがここへやってきたのは、自分のすがたを見せて子どもたちをこわがらせるためです。 

「さあ、今日もたっぷりとこわがらせてやるぞ」 

 おばけは、子どもたちがこわくてなきさけぶようすを思いうかべながらわらっています。やがて、おばけは森のおくにあるほらあなを見つけました。 

「さいしょは、子グマたちをこわがらせようかな」 

 ほらあなへ入ると、お母さんグマのそばでねむっているクマの子どもたちが見ているゆめの中をのぞいています。すると、おばけはいつの間にか子グマたちのゆめの中へ入っています。 

 そこは、ゆめの中へ入る前と同じく夜のくらやみにおおわれています。おばけと青い火の玉にとって、くらやみにつつまれている時がもっともぴったりです。 

 どうくつのほうを見回すと、子グマたちがモジモジしながら出てくるのを目にしました。どうやら、おしっこがしたくなったので外へ出てきたようです。 

「お、おしっこ……」 

 これを耳にしたおばけは、すぐさまクマの子どもたちの前へあらわれました。そのすがたは、青い火の玉にてらされてぶきみな顔立ちに見えます。 

「ぼうやたち、これからどこへ行くのかな~?」 

 子グマたちは、目の前にいるおばけがこわくて何も言い出すことができません。おばけは、ささやくような声でおびえる子グマたちのそばへきました。 

「もしかして、これから……」 
「ううん、何でもない!」 

 クマの子どもたちは、おばけからにげるようにほらあなへもどりました。このようすに、おばけはわらいが止まりません。 

「わっはっは! 今日もさっそくこわがらせることができたぞ」 

 子グマたとのゆめからもどってきたおばけは、子どもたちをさらにこわがらせようとはりきっています。くらやみの空が広がる中、おばけは青い火の玉とともにうかびながらすすんでいます。 
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