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エピローグ
第33話
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ふたり並んで、しばらく景色をながめていると、美月はちらりとあたしを見て、
「そのチョーカー、いつもつけてくれてるね。うれしいわ」
って言った。
「うん……」
だけど、あたしは素っ気ない返事しかできない。
「……ヒナタ、どうしたの? 何か怒ってる?」
「怒ってないよ。ただ……なかなか美月とふたりで会えないからさ……」
美月は首をかしげた。
「……? 今度の土曜日、お父さんに空間ボール借りて、海で泳ぐ約束してるじゃない?」
「そうなんだけどさ~、そうなんだけど……学校でも少しくらい、ふたりきりになりたいの! 美月は、いっつもだれかに囲まれてるんだもん。無理やりにでも連れだすしかないじゃん」
美月はほほ笑んで。
「ありがとう。ヤキモチ妬いてくれたの? ヒナタかわいい」
あたしは、ため息をついた。
「そんないいものじゃないよ。ただの嫉妬かも。ダンスクラブでも、みんな美月、美月だしさ……。あたしなんて、もはや空気……」
「そうかな? わたしが見たところ、みんなヒナタを頼りにしてるよ? 一番ダンス上手いし、ヒナタがそこにいるだけで場が明るくなるもん。言ったでしょ、ヒナタは太陽なんだから」
美月の柔らかな笑顔を見ていたら、自然と心がほぐれていく。
「美月はやさしいね。あたしなんて無駄に声が大きいだけだし、自己中だし、そのくせこわがりだし。おまけに嫉妬深いしさ……」
「そういうところも含めて、ヒナタの魅力でしょ」
はずかしくなって目をそらす。
「美月は、全然あたしを否定しないね。うれしいけどさ……」
「だって、わたしの瞳にうつるヒナタは、すてきな女の子だもの」
ハッとして美月に向きなおると、美月の左目は青く光っていた。
自分の素直な感情が言葉になって、口からあふれ出る。
「――――好き」
「え?」
聞き返した美月に、あらためて告げる。
「あたし、美月が好きだよ」
「ええっ!」
美月の顔がみるみる赤くなっていく。
「ど、ど、ど、どうしたの急に!?」
耳まで真っ赤になった美月を見ていたら、あたしまで照れてきた。
「美月が言わせたんでしょ! あたしの嫉妬を、【水】の魔眼で浄化しちゃったんだから!」
「そんなこと言われても……」
あたしの右目から、美月の感情が流れこんでくる。
「美月、あたしが今言った『好き』は、友だちとしての『好き』か、それともそれ以上なのか……って思ってるでしょ?」
いたずらっぽい笑みを浮かべたあたしに、珍しく美月はうろたえた。
「もうっ! 【洞察】の魔眼、使ったでしょ!? ダークピースがいないときは、魔眼の使用禁止だからね!」
美月にだけは言われたくない。
「――この町を出るの?」
あたしがたずねると、美月は遠くを見つめながらうなずいた。
「そうだね。『執念の魔女』は倒したし、夏祭りが終わったら、次の場所に移ると思う」
予想していた答えに、ちくっと胸が痛む。
すると、美月がハッとしたように、あたりをきょろきょろと見回した。
「――っ!」
全身に鳥肌が立つような感覚に、あたしも思わず身構える。
美月は眉根を寄せた。
「一つ……二つ……三つ! ダークピースの匂いだわ!」
「うん! あたしも感じるよ!」
「わたしたちの魔眼に引きよせられて、この町に来たみたいね」
「だったら、引っ越しは延期だよね?」
美月はニコッとして。
「延期どころか、ずっと住めるかもよ。ダークピースたちをおびき寄せることができるなら……」
あたしたちは、ぎゅっと手を握りあった。
「この町には、あたしたちがいるもん。やってくるダークピースはすべて倒す!」
「うん。わたしたちは最強コンビだもの」
今こそ――。
魔眼よ、ひらけ!
おわり
「そのチョーカー、いつもつけてくれてるね。うれしいわ」
って言った。
「うん……」
だけど、あたしは素っ気ない返事しかできない。
「……ヒナタ、どうしたの? 何か怒ってる?」
「怒ってないよ。ただ……なかなか美月とふたりで会えないからさ……」
美月は首をかしげた。
「……? 今度の土曜日、お父さんに空間ボール借りて、海で泳ぐ約束してるじゃない?」
「そうなんだけどさ~、そうなんだけど……学校でも少しくらい、ふたりきりになりたいの! 美月は、いっつもだれかに囲まれてるんだもん。無理やりにでも連れだすしかないじゃん」
美月はほほ笑んで。
「ありがとう。ヤキモチ妬いてくれたの? ヒナタかわいい」
あたしは、ため息をついた。
「そんないいものじゃないよ。ただの嫉妬かも。ダンスクラブでも、みんな美月、美月だしさ……。あたしなんて、もはや空気……」
「そうかな? わたしが見たところ、みんなヒナタを頼りにしてるよ? 一番ダンス上手いし、ヒナタがそこにいるだけで場が明るくなるもん。言ったでしょ、ヒナタは太陽なんだから」
美月の柔らかな笑顔を見ていたら、自然と心がほぐれていく。
「美月はやさしいね。あたしなんて無駄に声が大きいだけだし、自己中だし、そのくせこわがりだし。おまけに嫉妬深いしさ……」
「そういうところも含めて、ヒナタの魅力でしょ」
はずかしくなって目をそらす。
「美月は、全然あたしを否定しないね。うれしいけどさ……」
「だって、わたしの瞳にうつるヒナタは、すてきな女の子だもの」
ハッとして美月に向きなおると、美月の左目は青く光っていた。
自分の素直な感情が言葉になって、口からあふれ出る。
「――――好き」
「え?」
聞き返した美月に、あらためて告げる。
「あたし、美月が好きだよ」
「ええっ!」
美月の顔がみるみる赤くなっていく。
「ど、ど、ど、どうしたの急に!?」
耳まで真っ赤になった美月を見ていたら、あたしまで照れてきた。
「美月が言わせたんでしょ! あたしの嫉妬を、【水】の魔眼で浄化しちゃったんだから!」
「そんなこと言われても……」
あたしの右目から、美月の感情が流れこんでくる。
「美月、あたしが今言った『好き』は、友だちとしての『好き』か、それともそれ以上なのか……って思ってるでしょ?」
いたずらっぽい笑みを浮かべたあたしに、珍しく美月はうろたえた。
「もうっ! 【洞察】の魔眼、使ったでしょ!? ダークピースがいないときは、魔眼の使用禁止だからね!」
美月にだけは言われたくない。
「――この町を出るの?」
あたしがたずねると、美月は遠くを見つめながらうなずいた。
「そうだね。『執念の魔女』は倒したし、夏祭りが終わったら、次の場所に移ると思う」
予想していた答えに、ちくっと胸が痛む。
すると、美月がハッとしたように、あたりをきょろきょろと見回した。
「――っ!」
全身に鳥肌が立つような感覚に、あたしも思わず身構える。
美月は眉根を寄せた。
「一つ……二つ……三つ! ダークピースの匂いだわ!」
「うん! あたしも感じるよ!」
「わたしたちの魔眼に引きよせられて、この町に来たみたいね」
「だったら、引っ越しは延期だよね?」
美月はニコッとして。
「延期どころか、ずっと住めるかもよ。ダークピースたちをおびき寄せることができるなら……」
あたしたちは、ぎゅっと手を握りあった。
「この町には、あたしたちがいるもん。やってくるダークピースはすべて倒す!」
「うん。わたしたちは最強コンビだもの」
今こそ――。
魔眼よ、ひらけ!
おわり
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