無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定

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ランクアップとギルマスの心配。

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 翌日。
 宿でぐっすりと眠ったヒューブは、いつもよりスッキリとした気分で目が覚めた。
 もしかしてと思ってステータスを見たら、Lvが最大値の99を超えた100になっていて、称号に『限界突破者』というのが追記してあった。

「…じいちゃんに並んだか」

 ヒューブの祖父マーグウェルも限界突破者だったので、憧れの祖父と同じ称号を手に入れる事ができてとても嬉しかった。
 ウキウキした気分でギルドに入ったヒューブを見た冒険者達から、

「昨夜はごちそうさん!」
「お前って本当に凄い奴だっんだな!」
「たまには模擬戦しようぜ!」

 などと感謝と称賛の言葉が投げかけられた。
 それに返事をしながら受付に行くと、

「ギルマスがお待ちです。カードの更新をしますのでお預かりします」

 と言うので冒険者カードを預けて二階にあるギルマスの執務室に向かう。
 ノックして入ると、ギルマスがニコニコしながらソファーに座っていた。

「おう。昨夜はごちそうさん。まあ、座れ」

 言われるがままにソファーに座ると、

「コレが報酬だ」

 テーブルの上に布袋が音を立てて置かれた。

「白金貨一枚じゃなかったっけ?」
「馬鹿言ってんな。白金貨なんて常備してあるわけないだろ。白金貨の代わりに大金貨百枚だ」
「大金貨百枚…白金貨一枚のほうが楽なんじゃないか?」
「ふん。白金貨なんてのは貴族様がたの専用貨幣みたいなもんだからな。確かに面倒っちゃ面倒なんだが、冒険者、特に平民にとっちゃ、コッチのほうが使い勝手が良いからな」
「そりゃそうか。じゃあ、十枚だけ受け取って、後は…そうだな。五十枚を教会兼孤児院に寄付するから、残りの四十枚はギルド口座に預金しておいてくれ」

 ギルマスは頷いて布袋から大金貨六十枚を取り出して、別の布袋に入れた。

「寄付するのは良いが、大金貨なんて使い勝手が不便だぞ?」
「そっか。じゃあ、金貨五百枚にしたほうが良いな。後で商業ギルドに行くよ」
「商業ギルドのギルマスのレリックとは顔馴染みだから、手数料を無料にするように手紙を書いてやる」

 テーブルの上にあった、紙にサラサラサラッと書いた手紙を受け取ると、

「ああ、そう言えば。ヒューブ。お前、明日の午後からのスケジュールは全部空けておけよ?」
「ん?なんかあるの?」
「叙爵だよ、叙爵」
「叙爵?って、アレってマジだったのかよ!?」
「おう。使い番が来てな、名誉騎士爵に叙爵するそうだ。って、何て顔してやがる。もっと喜べよ」

 あからさまに嫌そうな顔をしているのでギルマスが苦笑いした。

「まあ、確かに面倒事になるかもしれんがな。それでも所詮は名誉爵位だからな。そこまで嫌な顔をしなくても大丈夫だ」
「本当だろうね。ギルマス?」
「ああ、本と…いや、待てよ。そう言えば一人だけ面倒な奴がいたな」
「誰よ?」
「ヴェランザって男爵だ。ミルフィナンド伯爵家の古参寄り子貴族でな。コイツは家柄だけが自慢の嫌な奴でな。大した功績もないくせに、伯爵様の政治にあれこれ口出しばっかりしやがってな。正直言って伯爵様もうんざりしてらっしゃるんだが、何しろ先先代様からの寄り子だから無下にも扱えなくてな…って、おい、コラ。殺人鬼みたいな顔してんじゃねえよ」
「人聞きの悪い事言わないでくれ。俺はただムカついただけさ。大した力もないくせにイキがってる奴をたくさん見てきたからな。どうしてもイライラするんだよ。下手にウザ絡みしてきやがったらブン殴るくらいはしても良いだろう?」
「良いわけないだろ。殴りたかったら、せめて決闘に持ち込んでからにしろ。そうすりゃ合法的且つ正当に殴れ…いや、お前の場合は半殺しくらにはしかねんな。いいか、絶対に殺すなよ?これはフリじゃないからな?」

 ギルマスが心配するのも当たり前で、ヒューブならデコピン一発で殺してしまいかねないだけの攻撃力を持っているからだ。本人からしたら、ちょっと撫でただけでも半殺しになるかもしれない。そうなったらヴェランザ男爵家とヒューブとの戦争になっ…てしまう事はないな。圧倒的な戦闘能力を目の当たりにすれば、男爵家の領兵隊は全力をあげて降参するだろうし、ヴェランザ男爵の首を喜んで差し出すかもしれない。
 もしも、そうなったら…。
 考えただけでもゾッとしてしまった。

「と、とにかく変な考えはするなよ?」

 そう言って注意する事しかできないギルマスは、

(伯爵様に手紙を書かなければいけない)

 と、額の汗を拭きながら心の中で声を大にして叫んだ。
    
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