21 / 21
帰還。
しおりを挟む
畏れ多くも国王陛下直々に下賜された屋敷は名誉騎士爵には勿体無いくらいに大きかった。何しろ元はなんとか子爵の屋敷だったのだが、数々の違法行為で爵位剥奪、主犯格だった当主と夫人、嫡男は斬首刑に処されてその他の者達は強制労働所生きとなったらしい。
そして王都に屋敷を賜った貴族はその屋敷のお披露目をしなければいけないとい義務があるらしく、それはミルフィナンド伯爵の寄り子貴族の名誉騎士爵でも変わりはないらしい。
面倒な事は全てミルフィナンド伯爵様に丸投げして無事にお披露目を済ませたヒューブは五日をかけてルッテンローグ領領都デオランツに帰還した。
王都の防壁を見たヒューブからしたら領都の防壁は見劣りしてしまうが、やはり地元が一番だと思った。
入出領のチェックをしていた衛兵は貴族門に並んでいるヒューブの馬車を初めて見るのだろう。チラチラと視線を送っている。
「次の方どうぞ」
貴族門に並んでいたのはヒューブの他に二組しかいなかったので直ぐに順番が回ってきた。
「失礼ですが、証明書はお持ちですか?」
「ああ。これで良いかな?」
その証明書はミルフィナンド伯爵家の寄り子貴族クライスト名誉騎士爵の家紋入りの証明書で、序でに寄り子になった時に渡された短剣も見せた。
その衛兵は証明書と短剣を何度も見比べて、他の衛兵を手招きして「審議官を呼んでくれ」と言った。
どうやらこの衛兵はヒューブが偽貴族ではないかと疑っているようだが、そんな事をして無事でいられるとでも思っているのだろうか?これは既に「不敬罪」を抵触する行為であり、ヒューブは名誉爵位とは言え騎士爵家当主なのだから、例えミルフィナンド伯爵家の衛兵であっても斬首刑は免れないのだが…こいつら正気か?
衛兵隊の上官が慌てて飛んで来るまでに随分と待たされた。
「ク、クライスト名誉騎士爵様!この度は私の部下が大変な無礼を働きまして誠に申し訳ございませんでした!何卒、不敬罪だけはご容赦くだされたく、このとおりお詫び申し上げます!」
「申し訳ございませんでした!!」
衛兵隊の上官がヒューブの対応をした衛兵の頭を掴んで土下座させた。
こんなに目立つ場所で土下座とは、この上官は頭が回る奴だと感心した。この場で不敬罪を言い渡せばヒューブの器量が疑われ、ミルフィナンド伯爵家の衛兵が土下座までして謝罪したのにそれを許さなかった冷血漢という汚名が広まるだろうから、それを見越しての対応に舌を巻いた。
「分かった。そこまでして謝罪されては許さない訳にはいかないな」
「で、ではお許しいただけますので?」
「貴官は頭が良いな。しかし、部下の教育がなっていない。しっかりと言い聞かせておかないと、いつか不敬罪で本当に斬首刑になるぞ」
「そのお言葉、肝に銘じまして。二度とこのような不祥事を起こさないようにしっかりと教育をしておきます」
「うん。それが良いだろう。では入るぞ」
「はい。どうぞお通りください」
防壁での一悶着を終えたヒューブは久しぶりにデオランツの街に帰還した。
馬車はミルフィナンド伯爵家に預けるとして、今夜の宿は…可愛くてちっこいお嫁さんのノンちゃんが待ってくれているはずの『涼しげな微風亭』に決まっている。
名誉爵位とは言え一応は騎士爵なのだから、領都にも屋敷を構えないといけないらしいのだが、そんなのは普通の一軒家で充分だろう。貯蓄は白金貨三枚と少しはあるので、普通より少し大きな家でも現金一括で即購入できるだろう。
まあ、それもミルフィナンド伯爵様が帰還なされてから考えれば良い。帰還なされるまでは後一週間はかかると仰っておられたので、それまではノンちゃんの宿でのんびりしていよう。
『涼しげな微風亭』のドアを開けると、
「いらっしゃいま…ヒューブお兄ちゃん!帰ってきてくれたの!?」
「勿論さ。ちゃんと帰ってくるって約束したからね。それはさて置き。ノンちゃん、ただいま!」
「おかえりなさいヒューブお兄ちゃん!」
ノンちゃんがギュ––っと抱きついてくるのを抱きしめ返したヒューブは、やっと帰ってこれたとホッと息をついた。
そして王都に屋敷を賜った貴族はその屋敷のお披露目をしなければいけないとい義務があるらしく、それはミルフィナンド伯爵の寄り子貴族の名誉騎士爵でも変わりはないらしい。
面倒な事は全てミルフィナンド伯爵様に丸投げして無事にお披露目を済ませたヒューブは五日をかけてルッテンローグ領領都デオランツに帰還した。
王都の防壁を見たヒューブからしたら領都の防壁は見劣りしてしまうが、やはり地元が一番だと思った。
入出領のチェックをしていた衛兵は貴族門に並んでいるヒューブの馬車を初めて見るのだろう。チラチラと視線を送っている。
「次の方どうぞ」
貴族門に並んでいたのはヒューブの他に二組しかいなかったので直ぐに順番が回ってきた。
「失礼ですが、証明書はお持ちですか?」
「ああ。これで良いかな?」
その証明書はミルフィナンド伯爵家の寄り子貴族クライスト名誉騎士爵の家紋入りの証明書で、序でに寄り子になった時に渡された短剣も見せた。
その衛兵は証明書と短剣を何度も見比べて、他の衛兵を手招きして「審議官を呼んでくれ」と言った。
どうやらこの衛兵はヒューブが偽貴族ではないかと疑っているようだが、そんな事をして無事でいられるとでも思っているのだろうか?これは既に「不敬罪」を抵触する行為であり、ヒューブは名誉爵位とは言え騎士爵家当主なのだから、例えミルフィナンド伯爵家の衛兵であっても斬首刑は免れないのだが…こいつら正気か?
衛兵隊の上官が慌てて飛んで来るまでに随分と待たされた。
「ク、クライスト名誉騎士爵様!この度は私の部下が大変な無礼を働きまして誠に申し訳ございませんでした!何卒、不敬罪だけはご容赦くだされたく、このとおりお詫び申し上げます!」
「申し訳ございませんでした!!」
衛兵隊の上官がヒューブの対応をした衛兵の頭を掴んで土下座させた。
こんなに目立つ場所で土下座とは、この上官は頭が回る奴だと感心した。この場で不敬罪を言い渡せばヒューブの器量が疑われ、ミルフィナンド伯爵家の衛兵が土下座までして謝罪したのにそれを許さなかった冷血漢という汚名が広まるだろうから、それを見越しての対応に舌を巻いた。
「分かった。そこまでして謝罪されては許さない訳にはいかないな」
「で、ではお許しいただけますので?」
「貴官は頭が良いな。しかし、部下の教育がなっていない。しっかりと言い聞かせておかないと、いつか不敬罪で本当に斬首刑になるぞ」
「そのお言葉、肝に銘じまして。二度とこのような不祥事を起こさないようにしっかりと教育をしておきます」
「うん。それが良いだろう。では入るぞ」
「はい。どうぞお通りください」
防壁での一悶着を終えたヒューブは久しぶりにデオランツの街に帰還した。
馬車はミルフィナンド伯爵家に預けるとして、今夜の宿は…可愛くてちっこいお嫁さんのノンちゃんが待ってくれているはずの『涼しげな微風亭』に決まっている。
名誉爵位とは言え一応は騎士爵なのだから、領都にも屋敷を構えないといけないらしいのだが、そんなのは普通の一軒家で充分だろう。貯蓄は白金貨三枚と少しはあるので、普通より少し大きな家でも現金一括で即購入できるだろう。
まあ、それもミルフィナンド伯爵様が帰還なされてから考えれば良い。帰還なされるまでは後一週間はかかると仰っておられたので、それまではノンちゃんの宿でのんびりしていよう。
『涼しげな微風亭』のドアを開けると、
「いらっしゃいま…ヒューブお兄ちゃん!帰ってきてくれたの!?」
「勿論さ。ちゃんと帰ってくるって約束したからね。それはさて置き。ノンちゃん、ただいま!」
「おかえりなさいヒューブお兄ちゃん!」
ノンちゃんがギュ––っと抱きついてくるのを抱きしめ返したヒューブは、やっと帰ってこれたとホッと息をついた。
23
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
ラストダンジョンで勇者パーティーに捨てられたから、あたしお家に帰りたいです。
黒巻雷鳴
ファンタジー
天上界と地上界、そして魔界を大崩壊から救うため、勇者マルス一行は長き冒険の末に異次元空間エレロイダへと続く《禁忌の扉》をひらいた。
だがここにきて、運命の歯車がふたたび動きだす。
大邪神ダ=ズールとの最終決戦を間近にして新しく仲間になった暗黒騎士ヴァインの加入により、黒魔導師の少女ロアがパーティーから外されてしまったのだ。
闇の力が蔓延るラストダンジョンで、たったひとりぼっち──絶望と悲しみのなか、果たしてロアは、最凶クラスの魔物たちの巣窟から無傷で生還できるのだろうか?
※無断転載禁止
スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う
シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。
当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。
そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。
その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。
事故に遭いました~俺って全身不随?でも異世界では元気ハツラツ?
サクラ近衛将監
ファンタジー
会社員の俺が交通事故に遭いました。二か月後、病院で目覚めた時、ほぼ全身不随。瞼と瞳が動かせるものの、手足も首も動かない。でも、病院で寝ると異世界の別人の身体で憑依し、五体満足で生活している。また、異世界で寝ると現代世界に目が覚めるが体の自由は利かない。
睡眠の度に異世界と現代世界を行ったり来たり、果たして、現代社会の俺は、元の身体に戻れる方法があるのだろうか?
そんな男の二重生活の冒険譚です。
毎週水曜日午後8時に投稿予定です。
異世界で目が覚めたら目の前で俺が死んでました。この世界でオリジナルの俺はとっくに死んでたみたいです
青山喜太
ファンタジー
主人公桜間トオル17歳は家族との旅行中、車の中ではなく突然なんの脈絡もなく遺跡の中で目が覚めてしまう。
混乱する桜間トオルの目の前にいたのは自分と瓜二つ、服装さえ一緒のもう一人の桜間トオルだった。
もう一人の桜間トオルは全身から出血し血を吐きながら、乞う。
「父さんと、母さん……妹をアカリを頼む……!!」
思わず、頷いた桜間トオルはもう一人の自分の最後を看取った。
その時、見知らぬ声が響く。
「私のことがわかるか? 13人の桜間トオル?」
これはただの高校生である桜間トオルが英雄たちとの戦争に巻き込まれていく物語
凡夫転生〜異世界行ったらあまりにも普通すぎた件〜
小林一咲
ファンタジー
「普通がいちばん」と教え込まれてきた佐藤啓二は、日本の平均寿命である81歳で平凡な一生を終えた。
死因は癌だった。
癌による全死亡者を占める割合は24.6パーセントと第一位である。
そんな彼にも唯一「普通では無いこと」が起きた。
死後の世界へ導かれ、女神の御前にやってくると突然異世界への転生を言い渡される。
それも生前の魂、記憶や未来の可能性すらも次の世界へと引き継ぐと言うのだ。
啓二は前世でもそれなりにアニメや漫画を嗜んでいたが、こんな展開には覚えがない。
挙げ句の果てには「質問は一切受け付けない」と言われる始末で、あれよあれよという間に異世界へと転生を果たしたのだった。
インヒター王国の外、漁業が盛んな街オームで平凡な家庭に産まれ落ちた啓二は『バルト・クラスト』という新しい名を受けた。
そうして、しばらく経った頃に自身の平凡すぎるステータスとおかしなスキルがある事に気がつく――。
これはある平凡すぎる男が異世界へ転生し、その普通で非凡な力で人生を謳歌する物語である。
社畜だった俺、最弱のダンジョンマスターに転生したので、冒険者を癒やす喫茶店ダンジョンを経営します
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
過労死した俺が目を覚ますと、そこは異世界のダンジョンコアの前だった。
どうやら俺は、ダンジョンマスターとして転生したらしい。
だが、与えられた俺のダンジョンは最低ランクのF級。魔力を生み出す力は弱く、生み出せる魔物もスライムやゴブリンといった最弱クラスばかり。これでは、冒険者を呼び込んで魔力を得るなんて夢のまた夢だ。
絶望する俺だったが、ダンジョンの創造機能を使えば、内装を自由にデザインできることに気づく。
「……そうだ、喫茶店を開こう」
前世で叶えられなかった夢。俺は戦闘を放棄し、ダンジョンの入り口に木造の喫茶店『やすらぎの隠れ家』を作り上げた。メニューは、前世の知識を活かしたコーヒーと手作りケーキだけ。
ところが、そのコーヒーには異常なまでの疲労回復効果が、ケーキには一時的な能力向上効果が付与されていることが判明。噂を聞きつけた訳ありの冒険者たちが、俺のダンジョンに癒やしを求めて集い始めるのだった。
動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョンを探索する 配信中にレッドドラゴンを手懐けたら大バズりしました!
海夏世もみじ
ファンタジー
旧題:動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョン配信中にレッドドラゴン手懐けたら大バズりしました
動物に好かれまくる体質を持つ主人公、藍堂咲太《あいどう・さくた》は、友人にダンジョンカメラというものをもらった。
そのカメラで暇つぶしにダンジョン配信をしようということでダンジョンに向かったのだが、イレギュラーのレッドドラゴンが現れてしまう。
しかし主人公に攻撃は一切せず、喉を鳴らして好意的な様子。その様子が全て配信されており、拡散され、大バズりしてしまった!
戦闘力ミジンコ主人公が魔物や幻獣を手懐けながらダンジョンを進む配信のスタート!
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる