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帰還。
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畏れ多くも国王陛下直々に下賜された屋敷は名誉騎士爵には勿体無いくらいに大きかった。何しろ元はなんとか子爵の屋敷だったのだが、数々の違法行為で爵位剥奪、主犯格だった当主と夫人、嫡男は斬首刑に処されてその他の者達は強制労働所生きとなったらしい。
そして王都に屋敷を賜った貴族はその屋敷のお披露目をしなければいけないとい義務があるらしく、それはミルフィナンド伯爵の寄り子貴族の名誉騎士爵でも変わりはないらしい。
面倒な事は全てミルフィナンド伯爵様に丸投げして無事にお披露目を済ませたヒューブは五日をかけてルッテンローグ領領都デオランツに帰還した。
王都の防壁を見たヒューブからしたら領都の防壁は見劣りしてしまうが、やはり地元が一番だと思った。
入出領のチェックをしていた衛兵は貴族門に並んでいるヒューブの馬車を初めて見るのだろう。チラチラと視線を送っている。
「次の方どうぞ」
貴族門に並んでいたのはヒューブの他に二組しかいなかったので直ぐに順番が回ってきた。
「失礼ですが、証明書はお持ちですか?」
「ああ。これで良いかな?」
その証明書はミルフィナンド伯爵家の寄り子貴族クライスト名誉騎士爵の家紋入りの証明書で、序でに寄り子になった時に渡された短剣も見せた。
その衛兵は証明書と短剣を何度も見比べて、他の衛兵を手招きして「審議官を呼んでくれ」と言った。
どうやらこの衛兵はヒューブが偽貴族ではないかと疑っているようだが、そんな事をして無事でいられるとでも思っているのだろうか?これは既に「不敬罪」を抵触する行為であり、ヒューブは名誉爵位とは言え騎士爵家当主なのだから、例えミルフィナンド伯爵家の衛兵であっても斬首刑は免れないのだが…こいつら正気か?
衛兵隊の上官が慌てて飛んで来るまでに随分と待たされた。
「ク、クライスト名誉騎士爵様!この度は私の部下が大変な無礼を働きまして誠に申し訳ございませんでした!何卒、不敬罪だけはご容赦くだされたく、このとおりお詫び申し上げます!」
「申し訳ございませんでした!!」
衛兵隊の上官がヒューブの対応をした衛兵の頭を掴んで土下座させた。
こんなに目立つ場所で土下座とは、この上官は頭が回る奴だと感心した。この場で不敬罪を言い渡せばヒューブの器量が疑われ、ミルフィナンド伯爵家の衛兵が土下座までして謝罪したのにそれを許さなかった冷血漢という汚名が広まるだろうから、それを見越しての対応に舌を巻いた。
「分かった。そこまでして謝罪されては許さない訳にはいかないな」
「で、ではお許しいただけますので?」
「貴官は頭が良いな。しかし、部下の教育がなっていない。しっかりと言い聞かせておかないと、いつか不敬罪で本当に斬首刑になるぞ」
「そのお言葉、肝に銘じまして。二度とこのような不祥事を起こさないようにしっかりと教育をしておきます」
「うん。それが良いだろう。では入るぞ」
「はい。どうぞお通りください」
防壁での一悶着を終えたヒューブは久しぶりにデオランツの街に帰還した。
馬車はミルフィナンド伯爵家に預けるとして、今夜の宿は…可愛くてちっこいお嫁さんのノンちゃんが待ってくれているはずの『涼しげな微風亭』に決まっている。
名誉爵位とは言え一応は騎士爵なのだから、領都にも屋敷を構えないといけないらしいのだが、そんなのは普通の一軒家で充分だろう。貯蓄は白金貨三枚と少しはあるので、普通より少し大きな家でも現金一括で即購入できるだろう。
まあ、それもミルフィナンド伯爵様が帰還なされてから考えれば良い。帰還なされるまでは後一週間はかかると仰っておられたので、それまではノンちゃんの宿でのんびりしていよう。
『涼しげな微風亭』のドアを開けると、
「いらっしゃいま…ヒューブお兄ちゃん!帰ってきてくれたの!?」
「勿論さ。ちゃんと帰ってくるって約束したからね。それはさて置き。ノンちゃん、ただいま!」
「おかえりなさいヒューブお兄ちゃん!」
ノンちゃんがギュ––っと抱きついてくるのを抱きしめ返したヒューブは、やっと帰ってこれたとホッと息をついた。
そして王都に屋敷を賜った貴族はその屋敷のお披露目をしなければいけないとい義務があるらしく、それはミルフィナンド伯爵の寄り子貴族の名誉騎士爵でも変わりはないらしい。
面倒な事は全てミルフィナンド伯爵様に丸投げして無事にお披露目を済ませたヒューブは五日をかけてルッテンローグ領領都デオランツに帰還した。
王都の防壁を見たヒューブからしたら領都の防壁は見劣りしてしまうが、やはり地元が一番だと思った。
入出領のチェックをしていた衛兵は貴族門に並んでいるヒューブの馬車を初めて見るのだろう。チラチラと視線を送っている。
「次の方どうぞ」
貴族門に並んでいたのはヒューブの他に二組しかいなかったので直ぐに順番が回ってきた。
「失礼ですが、証明書はお持ちですか?」
「ああ。これで良いかな?」
その証明書はミルフィナンド伯爵家の寄り子貴族クライスト名誉騎士爵の家紋入りの証明書で、序でに寄り子になった時に渡された短剣も見せた。
その衛兵は証明書と短剣を何度も見比べて、他の衛兵を手招きして「審議官を呼んでくれ」と言った。
どうやらこの衛兵はヒューブが偽貴族ではないかと疑っているようだが、そんな事をして無事でいられるとでも思っているのだろうか?これは既に「不敬罪」を抵触する行為であり、ヒューブは名誉爵位とは言え騎士爵家当主なのだから、例えミルフィナンド伯爵家の衛兵であっても斬首刑は免れないのだが…こいつら正気か?
衛兵隊の上官が慌てて飛んで来るまでに随分と待たされた。
「ク、クライスト名誉騎士爵様!この度は私の部下が大変な無礼を働きまして誠に申し訳ございませんでした!何卒、不敬罪だけはご容赦くだされたく、このとおりお詫び申し上げます!」
「申し訳ございませんでした!!」
衛兵隊の上官がヒューブの対応をした衛兵の頭を掴んで土下座させた。
こんなに目立つ場所で土下座とは、この上官は頭が回る奴だと感心した。この場で不敬罪を言い渡せばヒューブの器量が疑われ、ミルフィナンド伯爵家の衛兵が土下座までして謝罪したのにそれを許さなかった冷血漢という汚名が広まるだろうから、それを見越しての対応に舌を巻いた。
「分かった。そこまでして謝罪されては許さない訳にはいかないな」
「で、ではお許しいただけますので?」
「貴官は頭が良いな。しかし、部下の教育がなっていない。しっかりと言い聞かせておかないと、いつか不敬罪で本当に斬首刑になるぞ」
「そのお言葉、肝に銘じまして。二度とこのような不祥事を起こさないようにしっかりと教育をしておきます」
「うん。それが良いだろう。では入るぞ」
「はい。どうぞお通りください」
防壁での一悶着を終えたヒューブは久しぶりにデオランツの街に帰還した。
馬車はミルフィナンド伯爵家に預けるとして、今夜の宿は…可愛くてちっこいお嫁さんのノンちゃんが待ってくれているはずの『涼しげな微風亭』に決まっている。
名誉爵位とは言え一応は騎士爵なのだから、領都にも屋敷を構えないといけないらしいのだが、そんなのは普通の一軒家で充分だろう。貯蓄は白金貨三枚と少しはあるので、普通より少し大きな家でも現金一括で即購入できるだろう。
まあ、それもミルフィナンド伯爵様が帰還なされてから考えれば良い。帰還なされるまでは後一週間はかかると仰っておられたので、それまではノンちゃんの宿でのんびりしていよう。
『涼しげな微風亭』のドアを開けると、
「いらっしゃいま…ヒューブお兄ちゃん!帰ってきてくれたの!?」
「勿論さ。ちゃんと帰ってくるって約束したからね。それはさて置き。ノンちゃん、ただいま!」
「おかえりなさいヒューブお兄ちゃん!」
ノンちゃんがギュ––っと抱きついてくるのを抱きしめ返したヒューブは、やっと帰ってこれたとホッと息をついた。
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