無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定

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厄介な指名依頼。

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 ルッテンローグ領領都デオランツに戻ってきてから二ヶ月が過ぎた。
 ヒューブはCランクやBランク、偶にAランクの依頼を受けて冒険していた。
 ヒューブが冒険者になってから四ヶ月が過ぎ、この間に受けた依頼達成率は何と驚きの百%。過去類を見ない程の達成率にギルマスのコリントスを筆頭にギルド職員や冒険者達も驚きを隠せないでいた。そこで始まったのがスカウトだ。自分のパーティーに引き込もうとしたり、ペアを組もうと誘ってきたりと正直言って面倒な事この上ない状態になってしまい、ギルドに顔を出すのもうんざりするくらいだ。しかしそうすると困るのはギルマスや領民達だ。名誉爵位とは言えヒューブはミルフィナンド伯爵家の寄り子貴族であり騎士爵でもあるので、ルッテンローグ領領民の平穏を守る義務があるのだ。
 どうしたものかと悩んでいたら、ある事に気が付いた。

「そうだよ。俺は貴族家当主じゃないか」

 と。
 そうなのだ。
 ヒューブは名誉爵位とは言え騎士爵家当主。つまりは貴族様なのだから、強引なスカウトをしてくる奴らには「不敬罪」を盾に使えば問題はなくなるはず。それでも来る奴は本当に不敬罪で首を刎ねればいいだけの話しだ。そう思うと一気に力が抜けた。
 翌日。
 ギルドに行くとスカウトしようと何人かの冒険者パーティーリーダーが駆け寄ってきたのだが、彼(彼女)らはピタリと足を止めた。
 それどころか信じられない物を見るような目でヒューブのマントに目が釘付けになっていた。
 そう。今日のヒューブはクライスト名誉騎士爵家の三日月に三つ星の家紋入りのマントを着てきていたからだ。
 そこでスカウトしようとしていた連中はハッとした。ヒューブが貴族家当主である事を思い出したのだ。瞬間、顔から血の気が失せた。顔面蒼白とはこの事だろう。自分達がしてきた事、しようとしていた事が「不敬罪」に相当する行為だと震え上がった。下手をすれば問答無用で斬首刑に処されてしまう。
 彼らはパッと後退り、仲間の元に駆け戻っていった。
 ヒューブと友好的で無理なスカウトをしてこなかった冒険者達はクスクスと笑っている。受付嬢達も笑っている。

「おはようございます。『ルッテンローグの殲滅王』様」

 『ルッテンローグの殲滅王』

 その二つ名を聞いた連中はカタカタと震え出した。

「カタリナさん。俺、その二つ名はあんまり好きじゃないんだけど…はぁ、まあ良いか。で?何かありますか?」

 ここのところ、ヒューブはギルドからの指名依頼ばかりを受け続けていたのでクエストボードに貼ってある依頼書には目もくれていなかったので、今日も指名依頼があるかと聞いたのだ。
 すると、受付嬢のカタリナはニッコリ笑って頷いた。

「今日の指名依頼は森の調査ですね」
「森の調査?」
「はい。森の調査です」

 ですって言われても、そんな依頼はEランクかDランク冒険者向けの物だ。それがまた何でBランク冒険者の自分に依頼するんだ?

「…何か異変でも?」
「はい。実はヒューブさんもご存知とは思いますが、ここのところ森の浅い場所にまで高ランク討伐指定モンスターの出現が続いていまして、それの原因究明の調査をお願いしたいのです」
「ああ、成る程。確かに最近そんなのに良く出会しますね」

 最近はゴブリンやオーク種の上位種のホブ、ナイト、アーチャー、メイジなどが目撃され、低ランク冒険者などがかなり負傷する事態が続出しているのだ。
 冒険者達の間では「集落がある」とか「森の主を怒らせた」とか色々な憶測が飛び交っている。
 何れにせよ、これはギルドとしては放置するわけにはいかない事態だ。だからヒューブに指名依頼を出したのだろう。

「分かりました。この依頼を受けます」
「ありがとうございます!!」

 依頼料は大金貨一枚だが、今は安い、高いを言ってる場合じゃない。

「これは本格的に腰を据えてかからないといけないな」

 力強く呟いたヒューブは森を目指して歩きだした。
 ヒューブは領都デオランツ唯一のBランク冒険者であら、最高戦力でもあるので、こういう指名依頼が来るのは当たり前と言えば当たり前なのだ。
 
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