無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定

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国立タインザード高等学園。

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 見事、国立タインザード高等学園に首席合格を果たしたヒューブは、入試試験結果で、S、A、B、C、Dクラスに分けられた中で勿論成績優秀者のみで構成されるSクラスの教室の後ろの席に座っていた。
 入学式の学園長挨拶が長ったらしくてついつい居眠りしそうになるのを、次の入学祝いのスピーチをするために壇上にあがった来賓を見た瞬間に眠気など一瞬で消え去った。その来賓は何と国王陛下だったからだ。
 陛下のスピーチは短く、それでいて新入生のやる気を否が応でも爆上げするものだった。そのスピーチとは、

「諸君、入学おめでとう。私のスピーチはたった一言だけだ。この学園生活は諸君の将来を左右する事になるだろう。だから、気合い入れて競い合え!!」

 というもので、ただでさえ国王陛下直々のスピーチで緊張していた新入生達はまさか激励のお言葉まで賜るとは思ってもいなかったので、講堂がビリビリと震えるような大歓声があがった。

「さすがは陛下だ。上手いものだな」

 陛下のスピーチを思い出して呟くと、声をかけられたので振り向くと、見覚えのある女子生徒だった。

「貴方、首席合格者のクライストくんよね。私は次席合格者のマリア・フォン・ブラッツよ。宜しくね」
「これはご丁寧に。俺はゲーゲンヒューバー・フォン・クライスト・ジェネルドだ。こちろこそ宜しく」
「ジェネルド?貴族家当主なの!?」
「一応ね。爵位は男爵。ミルフィナンド伯爵家の寄り子だけどね」
「ミルフィナンド伯爵家の」
「そうだよ。君の実家のブラッツ子爵領とは馬車で三日の所だよ」

 まさか自分の事、それも実家のブラッツ子爵家の爵位まで知っているとは思ってもみなかったのだろう。驚いた顔をしている。

「調べたの?」
「まあね。級友になる生徒、高位貴族家の子息、令嬢の名前と実家の爵位は知っていたほうがトラブルにならずに済むからね」
「それはそうね。私も頑張らなきゃね」
「うん。それがいいと思うよ」

 初めましての挨拶をして和やかなムードでおしゃべりしていたら、一人の男子生徒が怒鳴ってきた。

「テメェ!ちょっと勉強ができるからって調子に乗ってんじゃねえぞっ!!」
「ん?君は確かシルバニック伯爵家の…バルザックくんだっけ?何か用かな?」
「たかが男爵風情が調子に乗るなって言ってんだよ!!」
「調子に?何の事だ?」

 全く身に覚えのない事で怒鳴られたヒューブは首を傾げた。

「たかが男爵風情が女子生徒と仲良くおしゃべりだなんて生意気なんだよ!!」
「あ~…成る程ね」

 ヒューブは一瞬で理解した。
 このバルザックはマリア嬢の事が好きなんだろう。だからマリア嬢と仲良くおしゃべりしているヒューブが面白くないのだろう。
 でもねぇ…。

「バルザックくん、あの「様を付けろ、様を!」」

 ヒューブは溜め息をつき、

「黙れ、無礼者!俺は男爵家当主だ!貴様の実家が伯爵家だろうと何だろうと関係ない。伯爵家の子息であっても、身分的には俺のほうが格上だ!貴族に生まれた者として、これ以上の醜態を晒すようなら陛下に言上して処罰していただく他はない!どうする!縛り首か斬首刑か好きなほうを選べ!!」

 実家の爵位が上であっても、跡を継いでいない子息令嬢は準貴族として扱われており、例え下位爵位であろうとも本人が当主なら身分は上。よって、無礼な振る舞いをしたりすれば不敬罪が適用されるというのは常識である事は、冒険者上がりのヒューブも一年半も貴族家当主として暮らしているので、それくらいの常識は身についている。

「さあ!どうする!」

 貴族社会の常識を突き付けられたバルザックは顔面蒼白でカタカタと震えている。
 バルザックはこれまで実家の爵位をチラつかせ、横柄で乱暴に振る舞っていたのだろう。そこへきて、実家よりも下位の爵位ではあるが、当主に喧嘩を売ってしまった。そうなると当然ながら不敬罪が適用されるのは貴族社会の常識だ。
 バルザックは、ギギギと音を立てるように土下座して、命乞いをする。

「申し訳ありませんでした。どうか不敬罪だけはお許しください」
「態度を改め、貴族として恥ずかしくない振る舞いをすると約束すれば許すよ」
「き、肝に銘じて。必ず」
「ん。なら許すよ。さあ、立って。これからはクラスメイトなんだから、俺としては仲良くできると嬉しいよ」

 手を差し伸べて立ち上がらせる。
 その時、

「俺と友達になればマリア嬢とも会話する機会も増えるし、仲良くできるかもよ?」

 ボソッとアドバイスすると、バルザックは顔を真っ赤に染めて頷いた。
 握手を交わしたヒューブは、バルザックという生涯の友を得たのだがそれはまだ先の話し。
 
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