32 / 45
国立タインザード高等学園。
しおりを挟む
見事、国立タインザード高等学園に首席合格を果たしたヒューブは、入試試験結果で、S、A、B、C、Dクラスに分けられた中で勿論成績優秀者のみで構成されるSクラスの教室の後ろの席に座っていた。
入学式の学園長挨拶が長ったらしくてついつい居眠りしそうになるのを、次の入学祝いのスピーチをするために壇上にあがった来賓を見た瞬間に眠気など一瞬で消え去った。その来賓は何と国王陛下だったからだ。
陛下のスピーチは短く、それでいて新入生のやる気を否が応でも爆上げするものだった。そのスピーチとは、
「諸君、入学おめでとう。私のスピーチはたった一言だけだ。この学園生活は諸君の将来を左右する事になるだろう。だから、気合い入れて競い合え!!」
というもので、ただでさえ国王陛下直々のスピーチで緊張していた新入生達はまさか激励のお言葉まで賜るとは思ってもいなかったので、講堂がビリビリと震えるような大歓声があがった。
「さすがは陛下だ。上手いものだな」
陛下のスピーチを思い出して呟くと、声をかけられたので振り向くと、見覚えのある女子生徒だった。
「貴方、首席合格者のクライストくんよね。私は次席合格者のマリア・フォン・ブラッツよ。宜しくね」
「これはご丁寧に。俺はゲーゲンヒューバー・フォン・クライスト・ジェネルドだ。こちろこそ宜しく」
「ジェネルド?貴族家当主なの!?」
「一応ね。爵位は男爵。ミルフィナンド伯爵家の寄り子だけどね」
「ミルフィナンド伯爵家の」
「そうだよ。君の実家のブラッツ子爵領とは馬車で三日の所だよ」
まさか自分の事、それも実家のブラッツ子爵家の爵位まで知っているとは思ってもみなかったのだろう。驚いた顔をしている。
「調べたの?」
「まあね。級友になる生徒、高位貴族家の子息、令嬢の名前と実家の爵位は知っていたほうがトラブルにならずに済むからね」
「それはそうね。私も頑張らなきゃね」
「うん。それがいいと思うよ」
初めましての挨拶をして和やかなムードでおしゃべりしていたら、一人の男子生徒が怒鳴ってきた。
「テメェ!ちょっと勉強ができるからって調子に乗ってんじゃねえぞっ!!」
「ん?君は確かシルバニック伯爵家の…バルザックくんだっけ?何か用かな?」
「たかが男爵風情が調子に乗るなって言ってんだよ!!」
「調子に?何の事だ?」
全く身に覚えのない事で怒鳴られたヒューブは首を傾げた。
「たかが男爵風情が女子生徒と仲良くおしゃべりだなんて生意気なんだよ!!」
「あ~…成る程ね」
ヒューブは一瞬で理解した。
このバルザックはマリア嬢の事が好きなんだろう。だからマリア嬢と仲良くおしゃべりしているヒューブが面白くないのだろう。
でもねぇ…。
「バルザックくん、あの「様を付けろ、様を!」」
ヒューブは溜め息をつき、
「黙れ、無礼者!俺は男爵家当主だ!貴様の実家が伯爵家だろうと何だろうと関係ない。伯爵家の子息であっても、身分的には俺のほうが格上だ!貴族に生まれた者として、これ以上の醜態を晒すようなら陛下に言上して処罰していただく他はない!どうする!縛り首か斬首刑か好きなほうを選べ!!」
実家の爵位が上であっても、跡を継いでいない子息令嬢は準貴族として扱われており、例え下位爵位であろうとも本人が当主なら身分は上。よって、無礼な振る舞いをしたりすれば不敬罪が適用されるというのは常識である事は、冒険者上がりのヒューブも一年半も貴族家当主として暮らしているので、それくらいの常識は身についている。
「さあ!どうする!」
貴族社会の常識を突き付けられたバルザックは顔面蒼白でカタカタと震えている。
バルザックはこれまで実家の爵位をチラつかせ、横柄で乱暴に振る舞っていたのだろう。そこへきて、実家よりも下位の爵位ではあるが、当主に喧嘩を売ってしまった。そうなると当然ながら不敬罪が適用されるのは貴族社会の常識だ。
バルザックは、ギギギと音を立てるように土下座して、命乞いをする。
「申し訳ありませんでした。どうか不敬罪だけはお許しください」
「態度を改め、貴族として恥ずかしくない振る舞いをすると約束すれば許すよ」
「き、肝に銘じて。必ず」
「ん。なら許すよ。さあ、立って。これからはクラスメイトなんだから、俺としては仲良くできると嬉しいよ」
手を差し伸べて立ち上がらせる。
その時、
「俺と友達になればマリア嬢とも会話する機会も増えるし、仲良くできるかもよ?」
ボソッとアドバイスすると、バルザックは顔を真っ赤に染めて頷いた。
握手を交わしたヒューブは、バルザックという生涯の友を得たのだがそれはまだ先の話し。
入学式の学園長挨拶が長ったらしくてついつい居眠りしそうになるのを、次の入学祝いのスピーチをするために壇上にあがった来賓を見た瞬間に眠気など一瞬で消え去った。その来賓は何と国王陛下だったからだ。
陛下のスピーチは短く、それでいて新入生のやる気を否が応でも爆上げするものだった。そのスピーチとは、
「諸君、入学おめでとう。私のスピーチはたった一言だけだ。この学園生活は諸君の将来を左右する事になるだろう。だから、気合い入れて競い合え!!」
というもので、ただでさえ国王陛下直々のスピーチで緊張していた新入生達はまさか激励のお言葉まで賜るとは思ってもいなかったので、講堂がビリビリと震えるような大歓声があがった。
「さすがは陛下だ。上手いものだな」
陛下のスピーチを思い出して呟くと、声をかけられたので振り向くと、見覚えのある女子生徒だった。
「貴方、首席合格者のクライストくんよね。私は次席合格者のマリア・フォン・ブラッツよ。宜しくね」
「これはご丁寧に。俺はゲーゲンヒューバー・フォン・クライスト・ジェネルドだ。こちろこそ宜しく」
「ジェネルド?貴族家当主なの!?」
「一応ね。爵位は男爵。ミルフィナンド伯爵家の寄り子だけどね」
「ミルフィナンド伯爵家の」
「そうだよ。君の実家のブラッツ子爵領とは馬車で三日の所だよ」
まさか自分の事、それも実家のブラッツ子爵家の爵位まで知っているとは思ってもみなかったのだろう。驚いた顔をしている。
「調べたの?」
「まあね。級友になる生徒、高位貴族家の子息、令嬢の名前と実家の爵位は知っていたほうがトラブルにならずに済むからね」
「それはそうね。私も頑張らなきゃね」
「うん。それがいいと思うよ」
初めましての挨拶をして和やかなムードでおしゃべりしていたら、一人の男子生徒が怒鳴ってきた。
「テメェ!ちょっと勉強ができるからって調子に乗ってんじゃねえぞっ!!」
「ん?君は確かシルバニック伯爵家の…バルザックくんだっけ?何か用かな?」
「たかが男爵風情が調子に乗るなって言ってんだよ!!」
「調子に?何の事だ?」
全く身に覚えのない事で怒鳴られたヒューブは首を傾げた。
「たかが男爵風情が女子生徒と仲良くおしゃべりだなんて生意気なんだよ!!」
「あ~…成る程ね」
ヒューブは一瞬で理解した。
このバルザックはマリア嬢の事が好きなんだろう。だからマリア嬢と仲良くおしゃべりしているヒューブが面白くないのだろう。
でもねぇ…。
「バルザックくん、あの「様を付けろ、様を!」」
ヒューブは溜め息をつき、
「黙れ、無礼者!俺は男爵家当主だ!貴様の実家が伯爵家だろうと何だろうと関係ない。伯爵家の子息であっても、身分的には俺のほうが格上だ!貴族に生まれた者として、これ以上の醜態を晒すようなら陛下に言上して処罰していただく他はない!どうする!縛り首か斬首刑か好きなほうを選べ!!」
実家の爵位が上であっても、跡を継いでいない子息令嬢は準貴族として扱われており、例え下位爵位であろうとも本人が当主なら身分は上。よって、無礼な振る舞いをしたりすれば不敬罪が適用されるというのは常識である事は、冒険者上がりのヒューブも一年半も貴族家当主として暮らしているので、それくらいの常識は身についている。
「さあ!どうする!」
貴族社会の常識を突き付けられたバルザックは顔面蒼白でカタカタと震えている。
バルザックはこれまで実家の爵位をチラつかせ、横柄で乱暴に振る舞っていたのだろう。そこへきて、実家よりも下位の爵位ではあるが、当主に喧嘩を売ってしまった。そうなると当然ながら不敬罪が適用されるのは貴族社会の常識だ。
バルザックは、ギギギと音を立てるように土下座して、命乞いをする。
「申し訳ありませんでした。どうか不敬罪だけはお許しください」
「態度を改め、貴族として恥ずかしくない振る舞いをすると約束すれば許すよ」
「き、肝に銘じて。必ず」
「ん。なら許すよ。さあ、立って。これからはクラスメイトなんだから、俺としては仲良くできると嬉しいよ」
手を差し伸べて立ち上がらせる。
その時、
「俺と友達になればマリア嬢とも会話する機会も増えるし、仲良くできるかもよ?」
ボソッとアドバイスすると、バルザックは顔を真っ赤に染めて頷いた。
握手を交わしたヒューブは、バルザックという生涯の友を得たのだがそれはまだ先の話し。
56
あなたにおすすめの小説
神様を育てることになりました
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
死後の世界で転生待ちをしていた。誘導にしたがって進んでいたが、俺だけ神使に別の場所に案内された。そこには5人の男女がいた。俺が5人の側に行くと、俺達の前にいた神様から「これから君達にはこの神の卵を渡す。この卵を孵し立派な神に育てよ」と言われた。こうしてオレは神様を育てることになった。
異世界転移したら、神の力と無敵の天使軍団を授かったんだが。
猫正宗
ファンタジー
白羽明星は気付けば異世界転移しており、背に純白の六翼を生やした熾天使となっていた。
もともと現世に未練などなかった明星は、大喜びで異世界の大空を飛び回る。
すると遥か空の彼方、誰も到達できないほどの高度に存在する、巨大な空獣に守られた天空城にたどり着く。
主人不在らしきその城に入ると頭の中にダイレクトに声が流れてきた。
――霊子力パターン、熾天使《セラフ》と認識。天界の座マスター登録します。……ああ、お帰りなさいルシフェル様。お戻りをお待ち申し上げておりました――
風景が目まぐるしく移り変わる。
天空城に封じられていた七つの天国が解放されていく。
移り変わる景色こそは、
第一天 ヴィロン。
第二天 ラキア。
第三天 シャハクィム。
第四天 ゼブル。
第五天 マオン。
第六天 マコン。
それらはかつて天界を構成していた七つの天国を再現したものだ。
気付けば明星は、玉座に座っていた。
そこは天の最高位。
第七天 アラボト。
そして玉座の前には、明星に絶対の忠誠を誓う超常なる存在《七元徳の守護天使たち》が膝をついていたのだった。
――これは異世界で神なる権能と無敵の天使軍団を手にした明星が、調子に乗ったエセ強者を相手に無双したり、のんびりスローライフを満喫したりする物語。
ガチャで大当たりしたのに、チートなしで異世界転生?
浅野明
ファンタジー
ある日突然天使に拉致された篠宮蓮、38歳。ラノベは好きだが、異世界を夢見るお年頃でもない。だというのに、「勇者召喚」とやらで天使(自称)に拉致られた。周りは中学生ばっかりで、おばちゃん泣いちゃうよ?
しかもチートがもらえるかどうかはガチャの結果次第らしい。しかし、なんとも幸運なことに何万年に一度の大当たり!なのにチートがない?もらえたのは「幸運のアイテム袋」というアイテム一つだけ。
これは、理不尽に異世界転生させられた女性が好き勝手に生きる物語。
『ゴミ掃除』が役立たずと追放されたが、実は『存在抹消』級のチートだった。勇者一行がゴミで溺れているが、俺は辺境で美少女と温泉宿を経営中なので
eringi
ファンタジー
「悪いが、お前のスキル『ゴミ掃除』は魔王討伐の役には立たない。クビだ」
勇者パーティの雑用係だったアレクは、戦闘の役に立たないという理由で、ダンジョンの最深部手前で追放されてしまう。
しかし、勇者たちは気づいていなかった。
彼らの装備が常に新品同様だったのも、野営地が快適だったのも、襲い来る高レベルモンスターの死体が跡形もなく消えていたのも、すべてアレクが『掃除』していたからだということに。
アレクのスキルは単なる掃除ではない。対象を空間ごと削り取る『存在抹消』レベルの規格外チートだったのだ。
一人になったアレクは、気ままに生こうと辺境の廃村にたどり着く。
そこでボロボロになっていた伝説のフェンリル(美少女化)を『洗浄』して懐かれたり、呪われたエルフの姫君を『シミ抜き』して救ったりしているうちに、いつの間にかそこは世界最高峰の温泉宿になっていて……?
一方、アレクを失った勇者パーティは、武器は錆びつき、悪臭にまみれ、雑魚モンスターの処理すら追いつかず破滅の一途をたどっていた。
「今さら戻ってきてくれと言われても、俺はお客さん(美少女)の背中を流すのに忙しいんで」
これは、掃除屋の少年が無自覚に最強の座に君臨し、幸せなスローライフを送る物語。
~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます
無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。
別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが
まっど↑きみはる
ファンタジー
「我が宿敵!! あなたに、私の夫となる権利をあげるわ!!」
そう、王国騎士『マルクエン・クライス』は、敵対していた魔剣士の女『ラミッタ・ピラ』にプロポーズを受けのだ。
ラストダンジョンをクリアしたら異世界転移! バグもそのままのゲームの世界は僕に優しいようだ
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はランカ。
女の子と言われてしまう程可愛い少年。
アルステードオンラインというVRゲームにはまってラストダンジョンをクリア。
仲間たちはみんな現実世界に帰るけれど、僕は嫌いな現実には帰りたくなかった。
そんな時、アルステードオンラインの神、アルステードが僕の前に現れた
願っても叶わない異世界転移をすることになるとは思わなかったな~
赤ん坊なのに【試練】がいっぱい! 僕は【試練】で大きくなれました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はジーニアス
優しい両親のもとで生まれた僕は小さな村で暮らすこととなりました
お父さんは村の村長みたいな立場みたい
お母さんは病弱で家から出れないほど
二人を助けるとともに僕は異世界を楽しんでいきます
ーーーーー
この作品は大変楽しく書けていましたが
49話で終わりとすることにいたしました
完結はさせようと思いましたが次をすぐに書きたい
そんな欲求に屈してしまいましたすみません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる