バスタオル1枚から始める異世界生活 ー世界を包む最強へー

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第4話 黒き獣との戦い(前編) 

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「うわあああっ、来るぞーッ!!」

 村の外れから上がる悲鳴。
 煙と土埃の向こうから、雷のような唸りをあげて現れたのは――
 黒い霧をまとい、焦げたようにざらついた漆黒の毛並みをした、獅子のようなモンスター。
 その胸には、どす黒い紋章が脈打つように光っている。

「……なんなんだ、あれは……」
 思わず呟く俺――巻神カイ。
 ただし今の格好は、木の葉パンツと腰のバスタオル“布丸”だけ。

「ちょ、カイ! その格好なに!?」
 エイラが叫ぶ。
「風呂上がりだって! 他に着るもんがねえんだよ!」
「パンツとタオルで戦場に出るとか、どう考えても変態でしょ!?」
「いや、“聖なる布の戦士”って言ってくれ!」
「どこが聖なるなのよ!?」

 逃げ惑う村人の中には、俺から距離を取る者まで出てくる。
 まるでモンスターが二体いるみたいな騒ぎだった。

 その間に、数人の男たちが槍やたいまつを手に立ち向かう。
「俺たちがやる!」
「村を守るんだ!」

 だが、黒獅子が一声吠えた瞬間――
 爆風のような衝撃で、男たちはまとめて吹き飛んだ。

「なっ……なんて力だ……!」
「くそっ、歯が立たねぇ!」

「エイラ!」
「分かってる、あの胸の印……!」

 村長ラーゼが杖を握りしめ、息を呑んだ。
「なんだあの紋章は……まるで呪いのようだ……!」

 黒紋がドクンと脈打つたび、体の表面に紫の稲妻が走る。
 次の瞬間――

 バリィィッ!!

 空気を裂く音とともに、雷撃が地面を貫いた。

「っ――!?」
 地面が爆ぜ、焼け焦げた土の匂いが漂う。
 初めて見る、モンスターの“遠距離攻撃”。

「雷を……撃った……!?」
 エイラの顔から血の気が引く
「こんなの、見たたことない……!」

 村の柵が焼け、屋根が崩れる。
 泣き叫ぶ声がこだまする。
 ――もう迷ってる暇はなかった。

「行くぞ、布丸ッ!」

 俺は駆け出し、タオルを振る。
 まだ風呂上がりで、わずかに湿っている。
 そのせいか、タオルが腕の中でしなりながら、
 “重み”を帯びていた。

 猪のような魔獣を倒した時と同じ、いや――それ以上の打撃。

「うおおおっ!」

 一撃、二撃、三撃――
 湿った布の軌跡が風を裂き、黒獅子の身体を叩く。
 バチィンッ!と乾いた音が響き、毛並みに火花が散る。

「おおっ、ちょっとは効いてるか!?」
「すごい……!」
 エイラの目が一瞬輝く。

 だが――すぐに、黒獅子が反撃に転じた。
 雷を纏った爪が横薙ぎに振るわれる。

「ぐっ……!」

 辛うじて布で受け流すが、腕が痺れる。
 距離を取って再び叩き込む――だが、毛皮の奥までは届かない。

「……ダメだ、やっぱ布だと威力が足りねぇ!」
「最初から知ってたでしょ!?」
「うるせぇ、諦めたら試合終了なんだよ!」

 獣の尾が振り抜かれ、カイの体が吹き飛ぶ。
 地面を転がり、口の中に血の味。

 その時、黒紋が一際強く輝いた。

「カイ、気をつけて! あの黒い紋がまた光ってる!」

 黒獅子の胸の紋章が鼓動のように光り、雷の奔流を生む。

 カイが身を起こした次の瞬間………!!

「危ないッ!」

 エイラが体を投げ出し、カイを突き飛ばした。

 ――ズドォンッ!!


 雷撃が地を裂き、彼女の肩を焼く。
 エイラの体がふわりと宙に浮き、地面に崩れ落ちた。


「エイラっ!!」

 倒れた彼女を抱き起こすと、焦げた匂いとともに白い服に赤い染みが広がる。

「なんで……なんでこんな無茶を……」

 エイラは苦しげに息をつきながら、それでも笑った。
「なんでって......私が、庇わなきゃ……あなた、真っ黒コゲだったんだから……」
「あなた、あの雷を受けたら……きっと立てなくなるもの……」

 震える手が、俺の腕にそっと触れる。
 その目は、痛みよりも優しさに満ちていた。

 その時………「はっ!」と何かに気づいた彼女は、せいいっぱいの力を込めて、俺を押し退けた。

 頭上では黒獅子が雷を溜めながら、エイラの倒れている方向へ、足を振り下ろそうとしている。

「やめろぉぉぉッ!!」

 俺は布丸を握りしめ、全力で飛び出した。

 雷光の中、巨大な爪が振り下ろされる。



 ――第4話 後編へ続く。
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