バスタオル1枚から始める異世界生活 ー世界を包む最強へー

maibo

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第3話 風呂と黒き獣

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 リーヴ村の木門をくぐった瞬間、静かな視線が一斉に突き刺さった。
 小さな農村のはずなのに、まるで戦場に迷い込んだような緊張感だ。
 原因は――たぶん、俺の服装だ。

「……あの、ねえ。服、どこに置いてきたの?」
 エイラが困り顔で振り返る。

「置いてきたっていうか、最初から無いというか。葉っぱと木の皮でなんとか……」

「変態か!」
 周囲の村人たちから一斉にざわめきが起こる。
 そりゃそうだ。裸男が女の子連れで村に入ってきたら、通報レベルである。

「ち、違う! 誤解だ! この子を助けただけで、決してそういう……!」

「助けてくれたのは本当よ!」
 エイラが慌てて弁護する。
 その声で、ようやく村人たちの視線が少しやわらぐ。

「……ふむ、助け人か」
 現れたのは、白髪を長く伸ばした老人――村長のラーゼ。
 穏やかな目つきだが、その奥に何かを見通すような光がある。

「服はあとでなんとかしてやろう。まずは話を聞かせてもらおうか」

 ⸻

 焚き火を囲みながら、エイラが採集していた森で起きた出来事を説明した。
 いつもの森の奥で薬草を摘んでいただけ――なのに突然、あの巨大なモンスターが現れたという。


「……闇の神器、という言葉を聞いたことがある」
 村長がぽつりとつぶやく。

「神器? 聖なるものか?」

「いや、むしろその逆だ。かつて“神器”を穢した者たちがいてな。
 どうやってそんな物を作ったかは知らんが、穢れに虐まれると、禍々しい神器に姿を変え、闇を宿し、他に影響を与えると古文書には書かれておる。
 だが、真偽はわからん。わしらの村にそのようなものはない」

「その闇の神器が影響していると?」俺は聞く、

「いや、ただの憶測じゃ。とにかく、今日は休んでいけ」
 そう言われ、村長の家に泊めてもらうことになった。

「服はこれで我慢してくれ」
 村長から渡されたのは、古いシャツ。丈が短くて、ほぼワンピース。
 まあ、ないよりはマシだ。

「風呂もあるからな」

 風呂――それは、この世界に来てから最も聞きたかった単語だ。

 湯気が立ちこめる木の浴槽に身を沈めた瞬間、体中がとろけそうになる。

「……ああ、これが文明の力……!」

 疲れが溶けて、まぶたがゆるむ。
 そのとき――

「グルルルル……」

 耳の奥を裂くような唸り声。
 外から地鳴りのような足音。

「……え、まさか。また風呂のタイミングで?」

 木の壁が一瞬で吹き飛ぶ。
 現れたのは――獅子のようなモンスター。
 だが、その全身を黒い靄が覆い、瞳は血のように赤黒く光っていた。

「おいおいおいおい……また全裸で戦うパターンか!?」
 湯から飛び出した俺は、せめてもと思い、パンツだけは履きながらも、慌てて布丸を手に取る。

 何度かモンスターは見てきた。
 しかし今回は、なぜか心がざわつく。
 この“黒い靄”には、あの時とは違う、何か決定的な“悪意”を感じた。

「……こいつ、ただの魔物じゃない」

 エイラが外から叫ぶ。
「見たことない! あんなモンスター、この辺りにはいない!」

 湯気が漂う中、布丸を構える。
 そして、目の前の黒き獣が頭上を仰ぎながら低く咆哮した。

 ーーその瞬間、俺たちは見た…………

 モンスターの胸に刻まれた、
 どす黒く光る紋章を。

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