バスタオル1枚から始める異世界生活 ー世界を包む最強へー

maibo

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第2話 タオル一枚と出会い。

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青々とした森を、鳥のさえずりが満たしていた。
 俺、巻神カイは、腰に巻いた一枚のタオル「布丸ぬのまる」とともに歩いていた。

「はぁ……服、どこかに落ちてねぇかな……」

 異世界転生初日に全裸で狼とバトル。
 命は助かったが、服は未実装のまま。
 今の俺の装備は──バスタオル一枚。
「旅立ち」というより「変態逃走劇」である。

 そんなことを考えていた矢先だった。

「きゃっ──!」

 鋭い悲鳴が、森の奥から聞こえた。
 反射的に駆け出す。
 木々をかき分けた先で、俺の目に飛び込んできたのは─

 倒れた少女と、その前で唸る巨大な猪のような魔獣。

「うわっ、デカい!」

 少女は腰まである淡い金髪。
 革の胸当て、そして……下は、木の葉を編んだ簡素なスカート。

(……なんか、原始的だな)

 そして彼女の視線は、俺を見た瞬間、完全に凍りついた。

「は? ……え、なにその格好!?」

「ち、違う! これは事故だ!! 服がないんだって!」

「近づくな変態っ!!」

 ──ぐはっ。
 この異世界、出会いのハードル高すぎだろ!

 しかし、そんなやりとりの間に、魔獣が再び牙をむく。
「後で説明する!今は下がれ!」

 俺は咄嗟にタオルを握る。
「布丸、頼むぞ……!」

 タオルが空気を震わせるように、ふわりと形を変えた。
 まるで刃を象るような細長い布の剣。
 だが──

「おりゃあああっ!!」

 ぶにょんっ。
 剣の形をしてても、感触はタオル。
 まるで殴られた方が気の毒なレベルで柔らかい。

「……やっぱり布だよな!知ってたけどな!!」

「なにやってんの!? それで戦うの!?」

「俺だって聞きたい!!」

 魔獣の突進。
 木がなぎ倒される勢い。
 避けるだけで精一杯。
 タオルで受けても、衝撃が直に来る。

「おいおい、今度は本気で死ぬぞ……!」

 必死に後退した俺の足元に、冷たい感触。
 小川だ。
 倒れこむように膝をついた瞬間、布丸が水を吸い、ずっしりと重くなった。

「……あ?」

 タオルの表面が光を反射する。
 濡れた繊維がきらりと輝き、まるで鋼糸のように張りつめた。

「まさか、水で……!」

 魔獣が再び突っ込んでくる。
 カイはとっさに、タオルを巻き上げるように振り抜いた。

 バチィィンッ!!

 乾いた破裂音。
 水しぶきとともに、タオルの一撃が魔獣の顎を打ち抜く。
 重みとしなりが一体となり、まるで鞭と鉄鎖の中間のような衝撃。
 魔獣の身体がぐらりと揺れ、木に激突した。

「……倒れた、か?」

 ゆっくりと崩れ落ちる巨体。
 少女が呆然と立ち尽くす。

「な、なにそれ……ただの布じゃないの?」

「ただの布……だったんだけどな。どうやら、水を吸うと“強化”されるらしい」

 俺はタオルを握りしめ、心の中で呟く。
(……布丸、お前、ほんと何者なんだ)

 そして気づく。
 目の前の少女の視線が、まだ俺の下半身あたりに釘付けなことに。

「……って、今も俺、全裸じゃん!!」

「ひゃっ!? 見ないで!!」

「いや、俺が見られてるんだけど!?」

 最悪の誤解コンボである。

 それでも彼女は、少しだけ顔をほころばせた。
「でも……助けてくれてありがとう。あなた、強いのね」

「いや、タオルが優秀なだけだよ。……あんたは?」

「私はエイラ。この先のリーヴ村に住んでるの。
 助けてもらったお礼がしたい。村まで来て」

「服、あるなら行く」

「……変態っぽいけど、悪い人じゃなさそうね」

 これが俺とエイラの奇妙な出会いだった。
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