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第一章
盗賊団の災難
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遺跡の最奥、一人の女性が盗んだブレスレットを持って進んでいく。それを待ち受けるは六人の盗賊だ。その中のリーダー格、ショートソードを二本背中に携えた男がドスの利いた声で嘲る。
「お前がブツを盗みやがった女か。随分と可愛らしいじゃねえか。なあ? お前ら」
遺跡の広間に下卑た笑い声が響く。だが、女性はそれを気にもしない様子で艶めかしくほほ笑んだ。
「ねえ、セクシーな首領さん。人質は一体どこにいるのかしら?」
「人のことを心配してる場合か? ここがお前の墓場になるんだ。何か言い残すことはねえのか? 可愛いらしく命乞いでもしてみろよ」
そう言いながら、首領のラウノは二本のショートソードを引き抜く。それにならって武器を抜く男たちの下品な笑いをよそに、マデリエネは愉快そうに笑ってみせた。
「交渉もせずに襲ってくるなんて、それはつまり大事な人質をうっかり取り逃がしたってことよね? あれほど恐れられていた盗賊団が人質の一人もロクにおもてなし出来ないだなんて、とんだ喜劇だわ!」
マデリエネがダガーを抜いたその瞬間、広間の陰が妖しく光り、突如として灰色の煙幕が一面に舞い上がった。
突然視界を奪われて戸惑うラウノに手下の断末魔が響く。そして素早い斬撃が彼に襲い掛からんとするが、煙の微妙な流れを察知した彼は寸でのところで攻撃を弾いた。
何者かがそこから引いた後、やがて煙が薄くなってきたとき、何か赤いものが視界に入った。咄嗟に柱の陰まで身を投げるラウノにパリンという音が聞こえる。
その瞬間、轟音とともに大きな爆発が巻き起こった。盗賊団は既に壊滅寸前。逃げ遅れた手下はとっくに気絶していて、事が収まってから立っているのはもはや三人だけだった。ラウノの対面から笑い声が聞こえる。
「ふふ、これは楽しいショーね」
「高価なランタンを使った甲斐がありましたね」
「俺のランタンが……」
挑発的な態度に完全に怒り狂ったラウノは素早く距離を詰めてマデリエネを叩ききらんと二本の剣を振り下ろす。しかしマデリエネは大きく後ろへ身を躱し、次の攻撃を見切ろうと身構えている。
そこへザルムが乱入してマデリエネの前に立ちはだかると、隙を見せないように防御寄りの構えを取った。
マデリエネはそれを見てすぐさま残りの二人の盗賊へと向かう。走り抜けるその横をかすめて、風の刃が槍を持った手下の体を切りつけた。アロイスは続けて風の刃を繰り出すが、残念ながら二度目三度目は避けられて少しずつ接近されていく。
マデリエネも向かっていた盗賊にダガーでじわじわ攻撃するが、相手も二本のナイフで攻撃をいなしており膠着状態だ。ところがそれもすぐに終わる。
マデリエネが突然、持っていたダガーを相手に投げつけたのだ。
頭を狙って投げられたダガーは右手のナイフで弾かれたが、そのとき僅かに隙が出来た。気が付けば隠されていたブーツナイフが盗賊の喉元に来ており、彼はそのまま切り裂かれて無残に倒れた。
手下に接近されたアロイスも負けてはいない。槍が届くギリギリのタイミングを敢えて狙い、衝撃波で攻撃を逸らしたかと思うと、すぐさま同じ魔法を発動して相手を吹き飛ばした。
完全に体制を崩した手下は派手に頭を壁にぶつけて泡を吹いて気絶した。明らかに戦闘不能である。
ところがその横では激しい剣撃の音が重なり合っている。ザルムとラウノはお互いに攻撃を受け流しながら反撃している。ザルムがブロードソードで切りかかると、ラウノはそれを左手のショートソードで受けて右手で攻撃。それをザルムは盾で受けるが、すかさずラウノは盾を蹴飛ばし体勢を崩しにかかる。
互角に見える戦いだが、ザルムの方が明らかに消耗している。
おまけにザルムの鎧は傷を受けているが、ラウノは今のところ剣による斬撃は受けていないようだ。
「その程度かよ! 力自慢の竜族が聞いて呆れるぜ!」
そんな煽りにザルムが反論するよりも早く、凄まじいスピードのナイフが一本飛んできた。それはラウノの太ももに見事に突き刺さり鋭い痛みを想像させる。
「そっちこそ、盗賊の割に警戒が足りてないわね?」
マデリエネを睨みつけたラウノだったが、ついにザルムから必殺の攻撃を受けた。
暴走竜と呼ばれたその剣技は竜族に伝えられる秘技の一つ。
盾と剣を右下にした構えから繰り出される五連続の斬撃と打撃のコンビネーションは、ラウノの鎧ごと、肉を切り裂き骨を砕いた。
ザルムが攻撃するその姿はまさしく荒れ狂う竜の如き様相だ。それを防ぐ術もなく身に受けたラウノは、最後に右へ振りぬかれた刃に切り捨てられて豪快に地に伏した――。
「お前がブツを盗みやがった女か。随分と可愛らしいじゃねえか。なあ? お前ら」
遺跡の広間に下卑た笑い声が響く。だが、女性はそれを気にもしない様子で艶めかしくほほ笑んだ。
「ねえ、セクシーな首領さん。人質は一体どこにいるのかしら?」
「人のことを心配してる場合か? ここがお前の墓場になるんだ。何か言い残すことはねえのか? 可愛いらしく命乞いでもしてみろよ」
そう言いながら、首領のラウノは二本のショートソードを引き抜く。それにならって武器を抜く男たちの下品な笑いをよそに、マデリエネは愉快そうに笑ってみせた。
「交渉もせずに襲ってくるなんて、それはつまり大事な人質をうっかり取り逃がしたってことよね? あれほど恐れられていた盗賊団が人質の一人もロクにおもてなし出来ないだなんて、とんだ喜劇だわ!」
マデリエネがダガーを抜いたその瞬間、広間の陰が妖しく光り、突如として灰色の煙幕が一面に舞い上がった。
突然視界を奪われて戸惑うラウノに手下の断末魔が響く。そして素早い斬撃が彼に襲い掛からんとするが、煙の微妙な流れを察知した彼は寸でのところで攻撃を弾いた。
何者かがそこから引いた後、やがて煙が薄くなってきたとき、何か赤いものが視界に入った。咄嗟に柱の陰まで身を投げるラウノにパリンという音が聞こえる。
その瞬間、轟音とともに大きな爆発が巻き起こった。盗賊団は既に壊滅寸前。逃げ遅れた手下はとっくに気絶していて、事が収まってから立っているのはもはや三人だけだった。ラウノの対面から笑い声が聞こえる。
「ふふ、これは楽しいショーね」
「高価なランタンを使った甲斐がありましたね」
「俺のランタンが……」
挑発的な態度に完全に怒り狂ったラウノは素早く距離を詰めてマデリエネを叩ききらんと二本の剣を振り下ろす。しかしマデリエネは大きく後ろへ身を躱し、次の攻撃を見切ろうと身構えている。
そこへザルムが乱入してマデリエネの前に立ちはだかると、隙を見せないように防御寄りの構えを取った。
マデリエネはそれを見てすぐさま残りの二人の盗賊へと向かう。走り抜けるその横をかすめて、風の刃が槍を持った手下の体を切りつけた。アロイスは続けて風の刃を繰り出すが、残念ながら二度目三度目は避けられて少しずつ接近されていく。
マデリエネも向かっていた盗賊にダガーでじわじわ攻撃するが、相手も二本のナイフで攻撃をいなしており膠着状態だ。ところがそれもすぐに終わる。
マデリエネが突然、持っていたダガーを相手に投げつけたのだ。
頭を狙って投げられたダガーは右手のナイフで弾かれたが、そのとき僅かに隙が出来た。気が付けば隠されていたブーツナイフが盗賊の喉元に来ており、彼はそのまま切り裂かれて無残に倒れた。
手下に接近されたアロイスも負けてはいない。槍が届くギリギリのタイミングを敢えて狙い、衝撃波で攻撃を逸らしたかと思うと、すぐさま同じ魔法を発動して相手を吹き飛ばした。
完全に体制を崩した手下は派手に頭を壁にぶつけて泡を吹いて気絶した。明らかに戦闘不能である。
ところがその横では激しい剣撃の音が重なり合っている。ザルムとラウノはお互いに攻撃を受け流しながら反撃している。ザルムがブロードソードで切りかかると、ラウノはそれを左手のショートソードで受けて右手で攻撃。それをザルムは盾で受けるが、すかさずラウノは盾を蹴飛ばし体勢を崩しにかかる。
互角に見える戦いだが、ザルムの方が明らかに消耗している。
おまけにザルムの鎧は傷を受けているが、ラウノは今のところ剣による斬撃は受けていないようだ。
「その程度かよ! 力自慢の竜族が聞いて呆れるぜ!」
そんな煽りにザルムが反論するよりも早く、凄まじいスピードのナイフが一本飛んできた。それはラウノの太ももに見事に突き刺さり鋭い痛みを想像させる。
「そっちこそ、盗賊の割に警戒が足りてないわね?」
マデリエネを睨みつけたラウノだったが、ついにザルムから必殺の攻撃を受けた。
暴走竜と呼ばれたその剣技は竜族に伝えられる秘技の一つ。
盾と剣を右下にした構えから繰り出される五連続の斬撃と打撃のコンビネーションは、ラウノの鎧ごと、肉を切り裂き骨を砕いた。
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