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第一章
信頼
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それから数日後、ラウノは無事に衛兵隊に引き渡されて、裁きを待つ身となった。彼が所有していた倉庫には、貴族や商人から盗まれたと思われる物品がいくつも見受けられたらしく、それなりの金額のお金と感謝の手紙が衛兵隊から冒険者ギルドに贈られていた。
ちなみに、マデリエネと衛兵隊の相性は最悪らしく、彼女は途中で別れて行ったようだ。
ボーレンには報告を済ませて、もっと手ごわいのを片付けたことで少し多めに報酬を受け取ったが、追加で新たな依頼を頼まれた。遺跡の掃除と修復である。
それを聞いたアロイスは、遺跡を多少傷つけたことを自分たちから言わなくて済んだので内心ホッとしたようである。
遺跡にやってきたきっかけの一つである魔晶石は、加工されてペンダントになった。
カテジナはアロイスとザルムに礼を言った後、緑色の宝石がはまった指輪を手渡してくれた。危険から身を守ることに役立つとされるものとのことだ。
そうしてやるべきことをすべて終え、ギルドの空いているテーブルで戦利品の確認と今後について話し合っていたときのことだ。
「報酬金と奪った武器の売却金などもろもろ合わせて5440ナッシュですね。一人当たり2720ナッシュです」
「カテジナさんからもらった指輪はどうするんだ? 魔法が刻まれた貴重な指輪なんだろ?」
「ザルムさんが持っていて構いませんよ。もう少しで自分でかけられるようになりますから」
「意識的に発動しなくても常に効果があるところが強いと思うが……そう言うならお言葉に甘えて――」
言い切る前にザルムが後ろを振り返った。そこにはマデリエネの姿がある。
「やはり強力な指輪のようですね。四レベル魔法のプリモニションの効果です」
「なんだ、そういうことね。竜族さんの能力がそんなに急激に上がる訳ないわよね」
ザルムの顔がたちまち曇天のように曇る。
「それで、私たちに何か御用ですか? マデリエネさん」
新調したオレンジ色のスカーフが目立っているマデリエネは、彼らと目を合わせないようにして窓を見る。彼女なりの照れ隠しだ。
「一応遺跡ではお世話になったから礼を言いに来たのよ。その……助かったわ。ありがとう」
「まさかそれを言うだけのために来たのか? 全く盗賊の割に殊勝な心がけだな」
ザルムが呆れたように言うと、マデリエネは窓から目線を外して、グイッとテーブルに顔を突き出した。
「まさかそんな訳ないじゃない。あなた達のパーティに入れて欲しいの。技術系の役割担当もいないし丁度いいでしょ?」
「なっ……!」
「なるほど。盗賊業は廃業ですか?」
「元々盗みなんて趣味じゃないのよね。スリルは好きだったけど、いい加減足を洗いたいと思っていたのよ」
マデリエネに色々聞き出そうとするアロイスにザルムが待ったをかける。
「盗人をパーティに入れるのか? そもそも俺たちも正式にパーティを組んでいるわけじゃないし……そ、それに出てった母親はともかく、人質になってた父親は放っておいていいのかよ」
「父は独りで元気にやるそうよ。こんな手紙をわざわざ寄越してきたの。ちっとも顔を見せずにね」
マデリエネが差し出した羊皮紙にはこう書かれている。
“親愛なる我が愛娘 マデリエネへ
独りであんな遺跡まで助けに来てくれたのは嬉しかったぞ。だが、この通り俺は自分で何でも対処できるさ。これまでもこれからもな。だから巡り会えたいい仲間たちと一緒に冒険でもしてみたらどうだ? お前を薄汚い世界に巻き込んでしまって本当にすまないと思っているんだ。だからこれからは自分の自由な人生を楽しんでくれることを願っているぞ。
千里眼の盗賊より”
「そういうわけだから父は心配いらないの。正式にパーティを組んでいないのならやっぱり丁度いいじゃない」
「そういうことじゃねえ!」
ザルムが声を張り上げると、受付の職員たちがチラッとこちらを伺って来る。気まずそうにするザルムに、アロイスが真面目な調子で確認した。
「わざわざ私たちを騙す理由も考え付きませんし、マデリエネさんは本当に足を洗いたいと思っているのでしょう。ただザルムさんは私とパーティを組みたいと思っていますか?」
「もちろんだ」
即答するザルムにアロイスはたじろぐ。自分がどんな人間かもわからないのに……と言いたくもなったが、信頼してくれているのに野暮だなと素直に思い直した。
「そ、そうですか……なら丁度いいのかもしれませんね……」
「そうよね。それじゃよろしく」
椅子に座ろうとするマデリエネと座らせまいと椅子を取り上げるザルムのくだらない攻防を見ながらアロイスは意を決した。
「話しておきたいことがあります」
神妙な様子を感じ取ったザルムは、渋々マデリエネに椅子を渡して居住まいを正した。
「何だ? もしかして過去のことか?」
「そうです」
「俺はお前が悪人だとは思えないし、無理して話さなくてもいいんだぞ?」
ザルムはしっかり目を見てそう言った。ところがアロイスはそんなことを言われるとは露ほどにも思っていなかったらしく、相当分かりやすく面食らう。
だが変に気を使って聞かないよりも、大事なのであればハッキリさせるべきだ。そう思ったマデリエネはこう主張した。
「話したくなくても話すべきだと思ったのよね。ザルムの言いたいことも分かるけど、ここは素直に聞くべきじゃない?」
「そう……だな……」
そこまでザルムに言わせると、彼女は受付に行って密談できそうな個室を手配してもらった。三人で防音加工がされた部屋に入ると、職員が部屋から離れたのを確認してからアロイスが話し始めた。
ちなみに、マデリエネと衛兵隊の相性は最悪らしく、彼女は途中で別れて行ったようだ。
ボーレンには報告を済ませて、もっと手ごわいのを片付けたことで少し多めに報酬を受け取ったが、追加で新たな依頼を頼まれた。遺跡の掃除と修復である。
それを聞いたアロイスは、遺跡を多少傷つけたことを自分たちから言わなくて済んだので内心ホッとしたようである。
遺跡にやってきたきっかけの一つである魔晶石は、加工されてペンダントになった。
カテジナはアロイスとザルムに礼を言った後、緑色の宝石がはまった指輪を手渡してくれた。危険から身を守ることに役立つとされるものとのことだ。
そうしてやるべきことをすべて終え、ギルドの空いているテーブルで戦利品の確認と今後について話し合っていたときのことだ。
「報酬金と奪った武器の売却金などもろもろ合わせて5440ナッシュですね。一人当たり2720ナッシュです」
「カテジナさんからもらった指輪はどうするんだ? 魔法が刻まれた貴重な指輪なんだろ?」
「ザルムさんが持っていて構いませんよ。もう少しで自分でかけられるようになりますから」
「意識的に発動しなくても常に効果があるところが強いと思うが……そう言うならお言葉に甘えて――」
言い切る前にザルムが後ろを振り返った。そこにはマデリエネの姿がある。
「やはり強力な指輪のようですね。四レベル魔法のプリモニションの効果です」
「なんだ、そういうことね。竜族さんの能力がそんなに急激に上がる訳ないわよね」
ザルムの顔がたちまち曇天のように曇る。
「それで、私たちに何か御用ですか? マデリエネさん」
新調したオレンジ色のスカーフが目立っているマデリエネは、彼らと目を合わせないようにして窓を見る。彼女なりの照れ隠しだ。
「一応遺跡ではお世話になったから礼を言いに来たのよ。その……助かったわ。ありがとう」
「まさかそれを言うだけのために来たのか? 全く盗賊の割に殊勝な心がけだな」
ザルムが呆れたように言うと、マデリエネは窓から目線を外して、グイッとテーブルに顔を突き出した。
「まさかそんな訳ないじゃない。あなた達のパーティに入れて欲しいの。技術系の役割担当もいないし丁度いいでしょ?」
「なっ……!」
「なるほど。盗賊業は廃業ですか?」
「元々盗みなんて趣味じゃないのよね。スリルは好きだったけど、いい加減足を洗いたいと思っていたのよ」
マデリエネに色々聞き出そうとするアロイスにザルムが待ったをかける。
「盗人をパーティに入れるのか? そもそも俺たちも正式にパーティを組んでいるわけじゃないし……そ、それに出てった母親はともかく、人質になってた父親は放っておいていいのかよ」
「父は独りで元気にやるそうよ。こんな手紙をわざわざ寄越してきたの。ちっとも顔を見せずにね」
マデリエネが差し出した羊皮紙にはこう書かれている。
“親愛なる我が愛娘 マデリエネへ
独りであんな遺跡まで助けに来てくれたのは嬉しかったぞ。だが、この通り俺は自分で何でも対処できるさ。これまでもこれからもな。だから巡り会えたいい仲間たちと一緒に冒険でもしてみたらどうだ? お前を薄汚い世界に巻き込んでしまって本当にすまないと思っているんだ。だからこれからは自分の自由な人生を楽しんでくれることを願っているぞ。
千里眼の盗賊より”
「そういうわけだから父は心配いらないの。正式にパーティを組んでいないのならやっぱり丁度いいじゃない」
「そういうことじゃねえ!」
ザルムが声を張り上げると、受付の職員たちがチラッとこちらを伺って来る。気まずそうにするザルムに、アロイスが真面目な調子で確認した。
「わざわざ私たちを騙す理由も考え付きませんし、マデリエネさんは本当に足を洗いたいと思っているのでしょう。ただザルムさんは私とパーティを組みたいと思っていますか?」
「もちろんだ」
即答するザルムにアロイスはたじろぐ。自分がどんな人間かもわからないのに……と言いたくもなったが、信頼してくれているのに野暮だなと素直に思い直した。
「そ、そうですか……なら丁度いいのかもしれませんね……」
「そうよね。それじゃよろしく」
椅子に座ろうとするマデリエネと座らせまいと椅子を取り上げるザルムのくだらない攻防を見ながらアロイスは意を決した。
「話しておきたいことがあります」
神妙な様子を感じ取ったザルムは、渋々マデリエネに椅子を渡して居住まいを正した。
「何だ? もしかして過去のことか?」
「そうです」
「俺はお前が悪人だとは思えないし、無理して話さなくてもいいんだぞ?」
ザルムはしっかり目を見てそう言った。ところがアロイスはそんなことを言われるとは露ほどにも思っていなかったらしく、相当分かりやすく面食らう。
だが変に気を使って聞かないよりも、大事なのであればハッキリさせるべきだ。そう思ったマデリエネはこう主張した。
「話したくなくても話すべきだと思ったのよね。ザルムの言いたいことも分かるけど、ここは素直に聞くべきじゃない?」
「そう……だな……」
そこまでザルムに言わせると、彼女は受付に行って密談できそうな個室を手配してもらった。三人で防音加工がされた部屋に入ると、職員が部屋から離れたのを確認してからアロイスが話し始めた。
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