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第一章
告白と結成
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アロイスは元はサイモン・アーノルドという名前の人間だった。彼はレイウッド大陸にあるトルプの村の生まれで、その村の領主の跡取り息子であったが、幸か不幸か、父が彼には無関心だったため、幼少期はかなり自由に行動できたと言う。
そんなある日、アロイスが九歳のとき、魔女だった祖母が魔物との戦いで命を落とし、その弔い合戦に行ったところ、残念ながら魔物に敗れてしまった。
大怪我を負ったアロイスだったが、たまたま居合わせた何者かに救われた。しかしその何者かと言うのが……。
「死霊族? そんな種族は今まで聞いたことがないぜ」
「私もないわね。名前からしてちょっといいイメージはないけど」
「死んだ生物を憑代に生きる魂のみの存在です。実は私も……その死霊族なんです。一度死んだ人間を呼び戻す方法はそれしか無かったそうで」
そこでザルムとマデリエネは固まった。色々と疑問が浮かぶが混乱と動揺で整理しきれないようだ。
しばらく間をおいてからザルムが恐る恐る口を開く。
「アロイスはスケルトンとかゾンビみたいな魔物だってことになるのか?」
「スケルトンやゾンビといった魔物とは少々異なりますね。彼らは怨念によって蘇っているため自我が崩壊していて、その怨念を晴らすことが出来れば完全に消滅するのです。それに対して私のような死霊とは魔法などをきっかけにして、魂を肉体に頼らずに維持する術を得たもののことを言います」
「頭の働きが必要ないから死んだ体でも動ける訳ね。その点は魔物と同じだけど、魂を維持する方法が違うってことでいいのかしら?」
「そうですね。そういうことになります」
マデリエネは衝撃を受けながらも理解しようとしている。ザルムはと言うと、魔物とは違うと聞いて少し安心したようで、さらなる疑問を口にしていた。
「じゃあその体は死んでいるのか?」
「生きていますよ。死んだまま動かすことも出来ますが、そうすると徐々に腐ってしまいますからね」
「そ、そうか。まあそこは普通の人間と同じようなものだな……」
不意に訪れる沈黙。それを破ったのはマデリエネだ。
「とにかく、話してもらえて良かったわ。死霊だって誰かに知られれば、最悪の場合には実験動物みたいに扱われて監禁されることになるでしょうし。まあその憑依とかお得意の魔法とかで、やろうと思えば簡単に逃げ出せるでしょうけど」
「そうとは言え面倒事は是非ご勘弁願いたいですね。それとすべての魔法系統に適性があるということも、しばらくは知られたくないので内密にお願いします。目を付けられたくありませんから」
マデリエネは瞬時に振り向く。
「すべての魔法に適性があるって言った?確か古代には数人いたけど、今はもう存在しないと言われていたはずよ?」
「よくご存知ですね。死霊になって良かったことの一つではあります。人間だった頃にも魔法の適性はいくつかあったので、それも相まってさらに魔法が上手く扱えるようになったのでしょう」
「やっぱりアロイスは凄かったんだな。あまりにもいろいろ魔法を使うからおかしいと思ったんだ」
「おかしいどころじゃないわよ。一つの系統を極めただけでも兵器と言われるほどなの。すべて極めたらとんでもないことになるわ。普通は極めるなんて並みの努力じゃ到底不可能だけど、彼は不死身とも言える種族な訳だし……」
ザルムはまた驚愕して言葉を失った。それと同時に恥ずかしくもあった。自分の秘密はもっと低俗なものだろう。彼が打ち明けたこの機会にあやかって言ってしまおうという安直な考えが、はたして良いものなのか疑問だ。
しかしここで言わなければもう言えないかもしれないと思ったら、突然その気になった。一度タイミングが来たならば躊躇わない方が良い。
「実は俺も話しておくべきことがある」
今さら何を聞いても驚かないとでも言いたそうなマデリエネと、盤石を期して聞こうとするアロイスが一斉にザルムの方を向く。その彼は大したことではないんだがと前置きしてこう告げた。
「俺は俗にいう戦闘狂なんだ。魔物を狩り尽くすことが何よりの喜びと言うか……何というか……」
「へえ。そうなの。あなたの秘密も相当衝撃的なんでしょうけど、流石にこれは彼の圧勝ね」
アロイスが気まずそうに笑う。
だが、奇妙なことを暴露した割には雰囲気が悪くならなくて安心した側面もあった。何より、やっぱりパーティを組むのをやめると言われなくて本当にありがたいと思ったアロイスは、二人には紛れもなく感謝していた。
ところがそれは彼だけではなく、ザルムもそしてマデリエネも同じだった。
事情は違えど、竜族で戦闘狂でも、他人の物を盗んでいた女でも、拒絶することなく迎えてくれたことに、お互いに感謝しあっていたことはそれとなく伝わっていたのかもしれない。
マデリエネがバックリーンと言う姓だったことが明らかになったところで、三人がギルドの受付まで行って、パーティとして申請するための用紙を受け取りに行った。
そこまではよかったが、用紙の記入欄にパーティ名というものがあって、彼らは揃いもそろって考えあぐねた。もちろん英雄でもなければ勇者でもない。さっきまでしていた話を考えれば、どう考えても所謂“おかしな人たち”であることは間違いなかった。
話し合った末、彼らパーティの名前は……。
「ストレンジでよろしいのですね?」
念のため確認する受付の女性に、三人は深く頷いた。もちろん、最初は否定的な意味の名前を付ける気はなかったのだが、一度その名前を聞くと、パズルのピースがはまったような感覚があったのだ。三人とも。
そうして結成されたストレンジには、拠点となる冒険者の店が指定された。
ギルドを探すときに何度か見かけたその店は、手続き以外の面では殆ど本部と同等の役割を担っている。依頼の受付、紹介、報酬の受け取り場所としての役割だ。それに加えて店の方には冒険者の宿屋としての機能もある。
アロイスとザルムは、初めこそ大都市ドメラクを拠点にするつもりだったが、カルムの方が依頼の数よりも冒険者の数の方が少ないそうで、冒険者同士で競合し難いという話だ。
出来るだけ目立ちたくないという思いもあって、彼らは一旦このカルムの街を拠点にすることに決めた。
「拠点となる冒険者の店は豪傑の虎亭という店になります。居住地区の中心部にありますよ」
受付の女性はそう案内してくれる。とりあえず店主に挨拶に行くことに決めて、三人は政治地区にあるギルドを後にした。
そんなある日、アロイスが九歳のとき、魔女だった祖母が魔物との戦いで命を落とし、その弔い合戦に行ったところ、残念ながら魔物に敗れてしまった。
大怪我を負ったアロイスだったが、たまたま居合わせた何者かに救われた。しかしその何者かと言うのが……。
「死霊族? そんな種族は今まで聞いたことがないぜ」
「私もないわね。名前からしてちょっといいイメージはないけど」
「死んだ生物を憑代に生きる魂のみの存在です。実は私も……その死霊族なんです。一度死んだ人間を呼び戻す方法はそれしか無かったそうで」
そこでザルムとマデリエネは固まった。色々と疑問が浮かぶが混乱と動揺で整理しきれないようだ。
しばらく間をおいてからザルムが恐る恐る口を開く。
「アロイスはスケルトンとかゾンビみたいな魔物だってことになるのか?」
「スケルトンやゾンビといった魔物とは少々異なりますね。彼らは怨念によって蘇っているため自我が崩壊していて、その怨念を晴らすことが出来れば完全に消滅するのです。それに対して私のような死霊とは魔法などをきっかけにして、魂を肉体に頼らずに維持する術を得たもののことを言います」
「頭の働きが必要ないから死んだ体でも動ける訳ね。その点は魔物と同じだけど、魂を維持する方法が違うってことでいいのかしら?」
「そうですね。そういうことになります」
マデリエネは衝撃を受けながらも理解しようとしている。ザルムはと言うと、魔物とは違うと聞いて少し安心したようで、さらなる疑問を口にしていた。
「じゃあその体は死んでいるのか?」
「生きていますよ。死んだまま動かすことも出来ますが、そうすると徐々に腐ってしまいますからね」
「そ、そうか。まあそこは普通の人間と同じようなものだな……」
不意に訪れる沈黙。それを破ったのはマデリエネだ。
「とにかく、話してもらえて良かったわ。死霊だって誰かに知られれば、最悪の場合には実験動物みたいに扱われて監禁されることになるでしょうし。まあその憑依とかお得意の魔法とかで、やろうと思えば簡単に逃げ出せるでしょうけど」
「そうとは言え面倒事は是非ご勘弁願いたいですね。それとすべての魔法系統に適性があるということも、しばらくは知られたくないので内密にお願いします。目を付けられたくありませんから」
マデリエネは瞬時に振り向く。
「すべての魔法に適性があるって言った?確か古代には数人いたけど、今はもう存在しないと言われていたはずよ?」
「よくご存知ですね。死霊になって良かったことの一つではあります。人間だった頃にも魔法の適性はいくつかあったので、それも相まってさらに魔法が上手く扱えるようになったのでしょう」
「やっぱりアロイスは凄かったんだな。あまりにもいろいろ魔法を使うからおかしいと思ったんだ」
「おかしいどころじゃないわよ。一つの系統を極めただけでも兵器と言われるほどなの。すべて極めたらとんでもないことになるわ。普通は極めるなんて並みの努力じゃ到底不可能だけど、彼は不死身とも言える種族な訳だし……」
ザルムはまた驚愕して言葉を失った。それと同時に恥ずかしくもあった。自分の秘密はもっと低俗なものだろう。彼が打ち明けたこの機会にあやかって言ってしまおうという安直な考えが、はたして良いものなのか疑問だ。
しかしここで言わなければもう言えないかもしれないと思ったら、突然その気になった。一度タイミングが来たならば躊躇わない方が良い。
「実は俺も話しておくべきことがある」
今さら何を聞いても驚かないとでも言いたそうなマデリエネと、盤石を期して聞こうとするアロイスが一斉にザルムの方を向く。その彼は大したことではないんだがと前置きしてこう告げた。
「俺は俗にいう戦闘狂なんだ。魔物を狩り尽くすことが何よりの喜びと言うか……何というか……」
「へえ。そうなの。あなたの秘密も相当衝撃的なんでしょうけど、流石にこれは彼の圧勝ね」
アロイスが気まずそうに笑う。
だが、奇妙なことを暴露した割には雰囲気が悪くならなくて安心した側面もあった。何より、やっぱりパーティを組むのをやめると言われなくて本当にありがたいと思ったアロイスは、二人には紛れもなく感謝していた。
ところがそれは彼だけではなく、ザルムもそしてマデリエネも同じだった。
事情は違えど、竜族で戦闘狂でも、他人の物を盗んでいた女でも、拒絶することなく迎えてくれたことに、お互いに感謝しあっていたことはそれとなく伝わっていたのかもしれない。
マデリエネがバックリーンと言う姓だったことが明らかになったところで、三人がギルドの受付まで行って、パーティとして申請するための用紙を受け取りに行った。
そこまではよかったが、用紙の記入欄にパーティ名というものがあって、彼らは揃いもそろって考えあぐねた。もちろん英雄でもなければ勇者でもない。さっきまでしていた話を考えれば、どう考えても所謂“おかしな人たち”であることは間違いなかった。
話し合った末、彼らパーティの名前は……。
「ストレンジでよろしいのですね?」
念のため確認する受付の女性に、三人は深く頷いた。もちろん、最初は否定的な意味の名前を付ける気はなかったのだが、一度その名前を聞くと、パズルのピースがはまったような感覚があったのだ。三人とも。
そうして結成されたストレンジには、拠点となる冒険者の店が指定された。
ギルドを探すときに何度か見かけたその店は、手続き以外の面では殆ど本部と同等の役割を担っている。依頼の受付、紹介、報酬の受け取り場所としての役割だ。それに加えて店の方には冒険者の宿屋としての機能もある。
アロイスとザルムは、初めこそ大都市ドメラクを拠点にするつもりだったが、カルムの方が依頼の数よりも冒険者の数の方が少ないそうで、冒険者同士で競合し難いという話だ。
出来るだけ目立ちたくないという思いもあって、彼らは一旦このカルムの街を拠点にすることに決めた。
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