死者と竜の交わる時

逸れの二時

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第五章

進展と離別

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すごく眩しい光だったわね。カイネちゃん、いつの間にそんな魔法を覚えたの?」

「ついさっき声が聞こえたです。我に従い無垢なるままに聖句を唱えよって」

「聖句ですか。邪悪を祓う御言葉が存在していたと古代の文献に書かれていた気がしますが……まさか天から授けられるとは思いもしませんでしたよ」

「神が実在するってことか?」

「それはわかりません。意識の奥に存在する普遍的無意識の言葉かもしれませんし」

「何にせよ、彼女は神聖な力を使えるということよね。頼もしいわ」

「だな。俺たちにはできないことだぜ」

「えへへ。照れるです」

嬉しそうなカイネと共に、隠しておいた鉱石を回収して火山で一泊。それから無事に豪傑の虎亭へと戻ると、すっかり元気を取り戻したイストが機嫌よく出迎えてくれた。

アリオクを倒したことで右腕の印は消え去って剣の腕も元通りになったそうだ。まだまだ稼がないとなと言いながら、彼は報酬金を渡してくれる。

だがそれよりも価値のあるものを彼は持っていた。

「ところでザルムくん。君は竜剣技を習得しているだろう?」

「まだ一種類しか使えませんけどね。それがどうしたんですか?」

「その竜剣技を習得するための場所があるらしいんだよ。竜穴仙の洞窟って場所なんだけど、ゴラドの村の付近にあるそうだ。剣技を磨きに行ってみたらどうだい?」

「まさかそんな場所があったとは。でも村の付近って言いましたけど、正確な位置はわからないんですか?」

「そうなんだ。噂程度の情報でね。だが竜族の剣士が魔術師と協力して作った洞窟だなんて話もあるからただの与太話ではないと思うんだよね」

「たまには行き当たりばったりの冒険もいいと思うです」

「それもそうね。ザルムの故郷に行けるのも面白そうだし」

「別に大したもんはないけどな。それでイストさんはこれからどうするんですか?」

「俺はドメラクに戻ってペトラっていう付き人を迎えに行くよ。実家に帰るつもりだったから途中で別れて来たんだ」

「まさかその人が前に俺に話してくれた貴族の娘さんですか?」

「そうだよ。僕のことを気に入ってくれたらしい」

「そうなんですか。まあイストさんにやることがあるなら俺たちは洞窟を目指すかな」

「私は出発前に知識ギルドに行ってきますよ。何かわかるかも知れませんし」

「ワタシも知識ギルドに行きたいです。聖句のことをもっと知りたいです」

「じゃあ私は斥候ギルドに行くとするわ」

「それなら俺はここで待ってるぜ。ファムさんが帰ってきたら話をつけとくよ」

「そういえば今日は留守だったわね」

「火氷風雷さんたちの用事だと言ってました」

奥に控えて店番をしていたミアが珍しく教えてくれた。

「そうなのか。それならすぐに帰って来るかもな」

そうしてザルムを除いた他の三人が各々ギルドへと向かっていった。


ザルムが残された豪傑の虎亭の店内に、しばらくしてファムが帰ってくる。

その後ろには火氷風雷の先輩たち。彼らは皆嬉しいやら悲しいやらよくわからない表情をしていた。

彼らはザルムを見つけると、他の三人はどうしたと聞いてくる。

それぞれ用があって出かけていると伝えると、ベリウスが彼らが座ったテーブルにザルムを招いた。

だがそれきり何を言うわけでもなくだんまりだ。それを見かねたファムは横からある事実を告げた。

「火氷風雷の彼らは首都ドメラクの店に行くことになったよ」

それを聞いてザルムの尻尾は動きを止めた。店番を代わっていたミアもそのことを知っていたようで目線を下げて奥に引っ込んでしまった。

何を言っていいかわからないザルムにベリウスが言う。

「そんなにショックだったか? 俺も寂しいがそうショボくれるなよザルム」

「パーティのみんなで相談したことなのよ。訳があって環境を変えることにしたの」

「突然いなくなると聞いて動揺してくださるのは慕ってくれていたということですわよね。それなら理由くらいは話しておきましょう?」

「そうだね。君の仲間を待つ間に、以前あったことを伝えておくよ」

先輩四人は互いに補いながら、冒険の話をし始めた。
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